表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/310

48 乱戦 修


 翌朝、洞穴内の地面に穴を掘って冒険者たちの死体を埋葬したシルルンたちは洞穴から外に出る。


 木々はなぎ倒されて地面にはいたるところに巨大な水溜りができており、テントは一つもなく冒険者たちの姿もない。


「ありがとうございました。私たちはこれで……」


 女冒険者たちは深々と頭を下げて去って行く。


「……下層に下りるなら大丈夫だと思うけど気をつけてね」


(だけど、登ったらヤバそうなんだよね……)


 シルルンは不安そうな表情を浮かべている。


「こんな有様では待ち合わせの場所に行ってみても、待ち人はいないかもしれませんがどういたしますか?」


 ブラが複雑そうな表情でシルルンに尋ねた。


「うん。いてもいなくても中層には行くつもりだよ。嫌な予感はするけどね」


「はっ」


 シルルンたちは中間ポイントに移動する。


 中間ポイントには冒険者たちの姿は皆無で、魔物の死体が転がっているだけだった。


 シルルンたちは一番右端のルート前に移動すると、三組の冒険者たちが話し込んでいた。


 冒険者たちの姿を見て安堵したような表情を浮かべたブラが、冒険者たちの方に歩いていった。


「無事だったようですね」


 ブラは満足げに微笑んだ。


「ああ、そっちもな。俺たちは野営していた近くに洞穴があってそこに逃げ込んで助かったんだ」


 男は嬉しそうに言った。


「そうですか、私たちも似たようなものです」


「で、俺の名前はワーゼだ。確認するが連合を組んで中層を目指してくれるんだよな?」


「もちろんです。私の名前はブラです。よろしくお願いします」


「あぁ、こちらこそ、よろしく頼む。それで後ろにいるのが本隊だよな。ほとんど女で男は二人か……どっちも若く見えるが、黒ずくめのイケメンのほうがあんたらのリーダーなのか?」


「違います!! スライムを肩にのせているお方が私たちのマスターであり、リーダーです!!」


 ブラは眉を顰めて声を荒げた。


「そ、そうなのか……悪かった。とりあえず、挨拶をしときたいんだが……」 


 ワーゼは戸惑うような表情を浮かべている。


「不要です。マスターには話はしてありますし、基本的に私の隊とあなたの隊だけで中層を目指します。もちろん、窮地に陥れば本隊が動きますのでその点はご心配なく」


「……もう一度聞くが、本当に本隊はあんたたちより強いんだよな?」


 ワーゼは訝しげな眼差しをブラに向ける。


 彼は男二人と女八人は、力量はともかく冒険者だろうと思った。


 だが、ワーゼは残りの者たちは戦力外で魔物に乗った葉っぱを身にまとった少女は論外だろうと思わずにはいられなかったのだ。


「もちろん本当です。ですが信じられないのであれば連合の話は無かったことにしてもらっても構いません」


「いや、悪かった……」


 ワーゼは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「それでは、まず私たちが先頭を務めますのであなたたちはついてきて下さい」


「いや、ちょっと待ってくれ。ルートの話なんだがこのルートは嵐で道が崩れて進むのは困難なんだ」


「な、なんですって!?」


 ブラは驚きのあまりに血相を変える。


「五本あるルートを調べてみたが右から二番目のルートだけが通れそうだ。幸いこのルートは多種の魔物が出現するが難度的には右端のルートとそれほど変わらない」


「なるほど、そういうことですか。マスターにご報告してきますのでしばらく待っていて下さい」


「あぁ……分かった」


 ブラは踵を返して、シルルンたち方に歩き出した。


「マスター、ご報告いたします。このルートは嵐で道が崩れて進むのが困難だということです」


「えぇ~~~っ!? マジで!?」


「はい、五本のルートの内、右から二番目のルートだけが通れるそうです」


「えっ!? そうなの?」


「はっ、それでどういたしますか?」


「う~ん、戻るのめんどくさいし、その二番目のルートを登ろうよ」


「はっ」


 こうして、シルルンたちはワーゼ隊と連合を組んで右から二番目のルートに移動したのだった。



















 シルルンたちは右から二番目のルートを登り始める。


 ブラ隊が先頭を進んでおり、次にワーゼ隊、シルルンたちと続く。


 道幅は木や岩などがなければ五メートルほどで、シルルンは登るペースを元娼婦たちに合わせているので遅く、ワーゼ隊との距離がひらいていく。


 ビビィを乗せたタマたちは生えている草を食べながらシルルンたちを追いかけている。


 すると、魔物の死体が大量に転がっていた。


 そのほとんどがレッサー アントやレッサー フロッガーの死体だ。


 シルルンは『魔物解析』で魔物の死体を探る。


「う~ん……倒されて数時間ってとこだね」 


「それなら、かなり近い距離に冒険者がいるわね」


「うん、このまま距離を詰めずに登っていくと楽だよね」


 シルルンはペースを変えずにゆっくりと登っており、ワーゼ隊との距離はひらく一方だった。


 一方、先行するブラ隊にホーネット種の群れが空から襲い掛かる。


 数は通常種が三匹と下位種が五十匹ほどだ。


 空からレッサー ホーネットの群れが一斉に『毒針』を放ち、無数の針がブラたちに降り注いでブラたちは針を躱しながら武器で針を弾いているが、遠距離攻撃手段がなく防戦一方だ。


 ホーネットたちはブラたちの上空を飛行しながら『毒霧』を放つ。


 ブラたちの周辺に緑色の霧が広がり、ブラたちは慌てて回避するがホーネットたちはウインドの魔法を唱えて、風の刃がブラたちに襲い掛かる。


 重戦士たちが盾を前面に突き出して風の刃を防いだが、無数の針が降り注いで重戦士たちは苦痛に顔を歪めた。


「ちっ、数が多いな!!」


「ウインド!!」


「ウインド!!」


 そこにワーゼ隊が駆けつけて、魔法師たちがウインドの魔法を唱え、風の刃がレッサー ホーネットたちの羽を切り裂き、三匹のレッサー ホーネットが墜落して地面に衝突した。


 しかし、レッサー ホーネットの群れは向きをワーゼ隊の方に変えて『毒針』を放ち、無数の針がワーゼ隊に降り注いだ。


「シールド!!」


「シールド!!」


 司祭たちは慌ててシールドの魔法を唱えて、透明の盾を展開して無数の針を防ぐ。


 レッサー ホーネットの群れは針による攻撃を魔法師たちに集中させており、司祭たちは透明の盾で魔法師たちを守っている。


「ぐっ、数が多すぎる……」


 ワーゼは剣で針を弾きながら表情を強張らせる。


「……徹底して空から下りてこないです。このホーネットたちは賢いです」


 ブラは剣で針を弾きながら呟いた。


 ホーネットたちは空からの攻撃に終始していたが、そこにシルルンたちが到着した。


「えぇ~~~っ!? マジで!? ボコボコにされてるじゃん!!」


 呆れたシルルンはブラックに乗り、シルルンたちはレッサー ホーネットに目がけて突撃した。


「エクスプロージョンデス!」


「エクスプロージョンデシ!」


「アース!」


 プルたちは一斉に魔法を唱え、上空にいるレッサー ホーネットの群れは凄まじい爆発に巻き込まれて爆砕し、無数の石や岩が直撃して次々に墜落していく。


 シルルンはミスリルクロスボウで狙いを定めて矢を撃ちまくり、瞬く間に残ったレッサー ホーネットを全て撃ち落して、シルルンたちはワーゼ隊の横を駆け抜けていく。


「つ、強ぇ……」


 ワーゼは雷に打たれたように顔色を変える。


 シルルンたちはブラ隊を攻撃しているホーネットたちに向かって突っ込んでいく。 


「ファイアデス!!」


 プルはファイアの魔法を唱え、灼熱の炎がホーネットの体を包み込んで、一瞬で黒焦げになったホーネットは墜落して地面に落ちた。


「エクスプロージョンデシ!!」


 プニはエクスプロージョンの魔法を唱え、光り輝く球体がホーネットに直撃してホーネットは爆砕し、身体がバラバラになって地面に落ちた。


「アース!」


 ブラックはアースの魔法を唱え、無数の岩や石がホーネットに襲い掛かるが、ホーネットは空高く上昇して回避した。


 ホーネットは『毒針』を放ち、牙を剥き出しにしてシルルンに目掛けて突撃した。


 だが、ブラックもホーネットに目掛けて突撃しており、シルルンは魔法の袋からミスリルソードを取り出して、ミスリルソードで針を斬り落とし、突っ込んでくるホーネットをミスリルソードで真横に斬り裂いた。


 ホーネットの身体が横にズレ落ちて、ブラックは『溶解液』を吐き、液体を浴びたホーネットは身体が溶け落ちて即死したのだった。


 シルルンたちはブラたちの元に駆けつける。


「怪我はないかい?」


「……」


 ブラたちはシルルンたちのあまりの強さに放心状態に陥っていた。


「怪我を治してあげて」


「分かったデス!!」


「デシデシ!!」


 プルとプニはシルルンの肩からピョンと跳び下りて、ブラたちの傷を魔法で治していく。


「あ、ありがとうございます」


 体力が全快したブラたちは、地面に膝をついて頭を下げた。


 プルたちはピョンピョンと跳ねて移動しながら、ホーネット種たちの死体を次々に『捕食』する。


 再びブラ隊が先行し、ワーゼ隊が続いてシルルンたちは元娼婦たちに合わせてゆっくりと登っていく。


 だが、シルルンたちが二時間ほど登ったところでブラ隊とワーゼ隊が引き返してきた。


「この先で冒険者たちと魔物の群れとで大規模な乱戦になっています。いかがいたしますか?」


 ブラが跪いてシルルンに報告する。


「えぇ~~~っ!? マジで!? どっちが勝ちそう?」


「分かりませんが冒険者たちの数は百人ほどで、魔物の数はその倍以上はいました」


「う~ん……行ってみるしかないね……ヤバくなったら逃げるけど、とりあえず、ブラたちは先行して情報収集をお願い」 


「はっ」


 ブラ隊とワーゼ隊は進軍を開始し、シルルンたちはゆっくりと後を追う。


 ブラ隊は足早に進軍していたが、唐突に声を掛けられて足を止めた。


「おっ!? 姉ちゃんたち戻ってきたのかよ!? 逃げ出したと思ってたぜぇ」


 男は巨木に背中を預けて座っていた。


「逃げたわけではありません。本隊に報告するために引き返しただけです」


「げへへへ、それより姉ちゃんいい尻してんなぁ……触らせろよ?」


「下品な男ですね……私の身も心もマスターのものなので、触らせるわけにはいきません」


「……ゲボッ!!」


 唐突に男は口から大量吐血した。


「なっ!? い、いったい、どうしたのですか!?」


「最後に女と話せて良かったぜ……これがむさい男連中だったら目も当てられなかったぜ、あばよ……」 


 男は横に倒れて動かなくなった。


「そいつの背中に致命傷がある。おそらく、それを隠すために木を背にしてたんだろうな……」


 ワーゼは無愛想に淡々と言い捨てた。


「そ、そんな……仲間はどうしたんですか!?」


 ブラは切実な表情で訴えた。


「すでに死んだか、見捨てられたんだろうな……まぁ、そいつはそこを死に場所に決めたんだよ」


「……」


 ブラはなんともいえず悲しそうな顔をした。


「おい、何してる。本隊に追いつかれるぞ」


 はっとなったブラは頭を振って歩き出したのだった。






















 ブラ隊とワーゼ隊は戦場に到着し、後方から戦いを眺めていた。


 すでに戦場の三分の二ほどのスペースを魔物に奪われており、百人ほどの冒険者たちが防御陣を敷いて魔物の突撃を防いでいた。


 突破されると前後から挟撃されるので、彼らはさせまいと必死なのだ。


 魔物の多くはラット種、フロッガー種、スネーク種、アント種が占めているが、防御陣の中央に三匹のアリゲーターが突っ込み、三人が吹っ飛ばされて陣形が崩れそうになる。


 だが、状況を静観していたブラ隊の三人の重戦士が駆けつけて、防御陣を再構築した。


「早く下がって回復して下さい」


 ブラが地面に転がる三人に言い放つ。


「す、すまねぇ!!」


 三人は慌てて後方に下がり、アリゲーターたちは重戦士たちに目がけて突撃する。


 だが、重戦士たちはアリゲーターたちの突撃を盾で受け止めてから、斧でアリゲーターたちの頭部を攻撃し、アリゲーターたちは奇声を上げた。


 即座にブラ隊の剣豪三人が一匹のアリゲーターに肉薄して『斬撃』を放ち、斬り刻まれたアリゲーターは血飛沫を上げて即死した。


 怒りに顔を歪めたアリゲーターたちは剣豪たちに向かって突撃したが、剣豪たちの前に重戦士たちが庇うように立って、アリゲーターたちの突撃を受け止める。


 剣豪たちは一瞬でアリゲーターを囲んで『斬撃』を放ち、剣で切り刻まれたアリゲーターは肉片と化す。


 それと同時に、ブラ隊の三人の格闘家も飛び出しており、格闘家たちは『発勁』を放って打撃が直撃したアリゲーターは体の内部が爆発し、内蔵が飛び出して沈黙したのだった。


 そこに、シルルンたちが到着してシルルンがブラに声を掛ける。


「後方にいないと思ったら、こんなとこっていうか最前線じゃないのここ!?」


「申し訳ありません。ここが抜かれると全崩壊を招きそうだったので……」


「えっ!? 全崩壊?」


(……ていうか、早く逃げたほうがいいね)


 シルルンは嫌そうな顔をする。


 しかし……


「俺たちに魔物を殲滅せよとお命じ下さい!!」


 ゼフドとアキが跪いてシルルンの目を真っ直ぐ覗き込む。


「……じゃ、じゃあ、怪我しない程度に戦ってきなよ」


「はっ!!」


 ゼフドとアキは嬉々として魔物の群れに突撃した。


「マスター、私にもお命じ下さい」


 今度はラフィーネが跪いて返答を待つ。


「……わ、分かったよ。無茶したらダメだよ」


 シルルンはラフィーネの頭を撫でる。


「はっ!!」


 ラフィーネは嬉しそうに魔物の群れに突撃する。


「むふぅ、私も戦ってくるぅ」


 ヴァルラは勝手に魔物の群れに突撃した。


「シルルン、私も体を動かしてくるわ!!」


 リザまでもが魔物の群れに突っ込んでいく。


「行くデス!!」


 プルがシルルンの肩からピョンと跳び下り、ブラックの頭に乗った。


「フハハハ!! 皆殺しにしてくれるわ!!」


 プルとブラックも出撃したのだった。


「……皆行っちゃったよ……いったいどうなるんだろ?」


 シルルンは困惑したような表情を浮かべている。


 突撃した仲間たちの破壊力は凄まじく、魔物の群れが次々と倒されて周辺に魔物がいなくなった。


 シルルンは視線を先に続くルートに向ける。


「あれ? ルートが分岐してるね……」


 シルルンは怪訝な表情を浮かべている。


 ルートは一本道だったが、嵐のせいで他のルートと繋がったのだ。


「ひぃいいいぃ!? あ、あれは!?」


 シルルンの顔が驚愕に染まる。


 左の分岐ルートから出現したのはスネイルの群れで、数は六匹ほどだ。


「ひぃいいいいいいぃ!! デカイのが来たよ!!」


 さらに右の分岐ルートから、タートスの群れが現れるが、スネイル一匹が通れる道幅しかなく、スネイルの群れとタートスの群れは混乱していた。


「やべぇ!? 絶対撤退しかないよ!! 皆集合!!」


 シルルンが声を張り上げると仲間たちがシルルンの元に集まり、シルルンたちは戦場から離脱したのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


ホーネット レベル1 全長約2メートル

HP 350

MP 60

攻撃力 210

守備力 110

素早さ 130

魔法 ウインド

能力 統率 以心伝心 毒牙 毒針 毒霧


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。 リンクをクリックしてもらえるとやる気が出ます。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ