113 蜘蛛VS火龍①
うーん。
マグマの湖地帯をようやく抜けて、ちゃんと陸地があるエリアに到達した。
それは良かったんだけど、あれから一切魔物を狩ってない。
おかげであんなにいっぱいあったSPがジリジリ減り始めた。
さすがに餓死するまで減りはしないだろうけど、今は節約のためにSP関連のスキルは使わないようにしてる。
あー、どうしよ。
マグマの中に引きこもるとかないわー。
あんなん手出し出来るわけないじゃん。
自分の有利なフィールドに引きこもって逃げ隠れるとか、なんて卑怯なんだ。
正々堂々と勝負できないのか、この恥知らずどもめ。
しかしホントに困った。
中層の魔物はほとんどがマグマの中に逃げ込める。
私の素早さなら、陸地にいれば逃げる前に仕留めることもできるけど、最初っからマグマの中にいられるとどうしようもない。
食いつなぐだけなら陸地にいる魔物を仕留めていけば良さそうだけど、それだと経験値的においしくない。
スキルポイント貯めたいのになー。
20レベルで進化できるから、それまでに邪眼を1個。
進化して、そのボーナスとそのあとのレベルアップで怠惰あたりを狙ってたのに、これじゃ、計画が狂う。
どうしよう。
上層に行けばマグマはないから逃げても別に追っかければ問題ないんだけどなー。
あー、どっかに逃げ出さない魔物いないかなー。
なーんて思ったけどさ、これはさすがに酷くない?
『火龍レンド LV20
ステータス
HP:3701/3701(緑)+1200(詳細)
MP:3122/3122(青)+1200(詳細)
SP:3698/3698(黄)(詳細)
:3665/3665(赤)+912(詳細)
平均攻撃能力:3281(詳細)
平均防御能力:3009(詳細)
平均魔法能力:2645(詳細)
平均抵抗能力:2601(詳細)
平均速度能力:3175(詳細)
スキル
「火龍LV1」「逆鱗LV8」「HP高速回復LV3」「MP回復速度LV6」「MP消費緩和LV6」「魔力感知LV5」「魔力操作LV4」「魔力撃LV4」「SP高速回復LV1」「SP消費大緩和LV1」「火炎攻撃LV9」「火炎強化LV7」「破壊強化LV6」「斬撃強化LV2」「貫通強化LV2」「打撃大強化LV2」「連携LV10」「指揮LV2」「立体機動LV4」「命中LV10」「回避LV10」「確率大補正LV5」「気配感知LV10」「危険感知LV10」「熱感知LV3」「飛翔LV7」「高速遊泳LV10」「飽食LV2」「火魔法LV4」「斬撃耐性LV1」「貫通耐性LV1」「打撃大耐性LV1」「炎熱無効」「状態異常耐性LV1」「身命LV5」「魔蔵LV4」「瞬身LV5」「耐久LV5」「剛力LV5」「堅牢LV5」「道士LV4」「護符LV3」「縮地LV5」
スキルポイント:30050
称号
「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「率いるもの」「龍」「覇者」』
始まりは唐突だった。
お互いの危険感知範囲に入ったのか、私とそいつが身構えるのは全く同時だった。
そいつは火龍。
火竜にさらに翼が生えたような形状の、龍らしい龍だ。
ステータスから見るに、ほぼ地龍カグナと同格と思える。
地龍カグナとなら戦えるかも、なんて考えてた矢先にこれとか。
お互いまだ距離がある。
けど、どうやら向こうはやる気みたいだ。
どうする?
[逃げるに1票]
{同じく}
だよねー。
ということで、全力疾走開始!
ダッシュで逃げる。
龍の相手なんかできるか!
と、火龍は後を追っかけてきた!
嘘でしょ!?
[やばいね。向こうのほうが速度が上だ!]
{追いつかれる!}
魔法担当、例の魔法で逃げるぞ!
{了解!}
魔法担当がとある魔法を発動させる。
影魔法レベル7の魔法、影沈。
この魔法は影の中にものを沈めるという魔法だ。
沈められるものの大きさは消費したMPによって変わってくるんだけど、影の大きさを超えるものは沈めることができない。
影の大きさを変更できる、影魔法レベル2の大影と合わせれば大きなものでも沈めることはできるけど。
この魔法、沈めた先がどうなっているのかというと、影空間という特殊な空間に繋がっているっぽい。
で、その空間、空気もないし、身動きもろくにできないし、入ったら死ぬしかないような危険空間だったりする。
ここに敵を沈めたら一発アウトになりそう。
なんだけど、ものが入ってる間は入口を閉じることができないので、割とあっさり出ることはできたりする。
それに、沈めるものが抵抗しようと思えば簡単に抜け出すことができる。
前に魔物相手に落とし穴がわりに使ってみたので実証済みだ。
使い道がなさそうな魔法なんだけど、私はこの魔法を影魔法レベル3、影を光の中でも発生させるという影表の魔法と組み合わせ、緊急脱出魔法として使うことを思いついた。
試してみるのは初だけど、このまま追いつかれるよりかはいい。
というわけで、火龍に追いつかれる直前に影の中にドボン。
同時に威圧などを切って、気配を殺す。
空気がないので呼吸ができないけど、探知で様子を探れば、目の前で獲物が消えた火龍は混乱して辺りを見回してる。
そのまま私に気づかないで去ってくれれば作戦成功だ。
けど、それまで私の息が続くか?
あ、ダメだこれ。
唐突に悟る。
火龍はひとしきりキョロキョロしたあと、足元をジッと見始めた。
私が潜む、足元に。
そうだった。
火龍のスキルの中に、厄介なものがあるのを忘れてた。
気配感知LV10。
袋の鼠ならぬ、影の蜘蛛状態だった。




