第五章 金床神の地下王国 4
石造りの船を見上げてレントが恐る恐る聞いた。
「まさかとは思うけどこの船で溶岩流を行くのか?」
「飛べる訳無いんだから当然そうなるだろう」
「まぁ、そりゃそうか。よしみんな、荷物を積み込め」
そう言うとレント自らも服を脱いで荷物を担いだ。
それを見ていたドワーフの1人がレントを指差して叫んだ。
「お、おまえ、・・・いや、あなたのその胸に刻まれた日輪、・・・聖痕ではありませんか!」
「ん?ああ、これは転がって来たでっかい香炉を止めた時に出来た、ただのヤケドだよ」
「香炉ですと?それは神器に間違いありません。いまその香炉はどこに?」
「え?ええと・・・その時の騒ぎで壊れた」
レントとドワーフとの会話に団員達が割り込んだ。
「ち、ちょっと待って下さい団長!それって10年ほど前の士官学校香炉事件の事ではないですか?」
「香炉事件って、あの貴族階級の子息が大量虐殺されたってアレですか?」
「飛び級の子供に殴り殺されたって・・・」
「そう言えば団長、王やリンダ様と同期卒業だとすると通常だと5歳ほど年上なハズですが・・・」
「もしかして団長が?」
団員たちにまくし立てられて否定する事も出来ないレントが横を向いてボソッとつぶやいた。
「・・・あの程度で死ぬ方が悪い」
「団長、それ犯罪者のセリフですよ」
「犯人には身内を殺された貴族たちから未だに懸賞金がかけられてるって噂ですよ」
「だからってお前らは懸賞金目当てで俺を殺したりしないよ」
「団長、そりゃわからないですよ?」
「わかるさ」
「それは我々を信頼してるって事ですか?」
「いや、そうじゃない。その話がお前たちにはどう伝わってるのか知らないが・・・」
「知らないが・・・なんです?」
「お前たちの敬愛するリンダがそいつらの転がした香炉の下敷きになって死ぬ所だったんだぞ」
レントの言葉に団員たちが鬼の形相になった。
「・・・オレ、王都に帰ったら懸賞金をかけてる貴族を始末しに行く」
「おう、オレも行くぜ」
「ついでに生き残りも探して殺っちまおうぜ」
「こらこらこら!お前らは俺の部下なんだから勝手な事するな!!」
レントたちの会話を聞いていたドワーフの船頭が仲間たちにささやいた。
「いくら族長ペレの知り合いだと言ってもこんな物騒な奴らをイプイス様の所に連れて行くのか?」
「うーん、俺も心配になってきた」
「ペレの名誉とドワーフのハンマーにかけて案内するって言っちまったからなぁ」
「まぁイプイス様に任せるしかねぇだろう」
「仕方ねぇな。よおし、船を出すぞー」
ドワーフたちが係留ロープを外し、石の櫓で漕ぎ出すと赤黒く光るマグマの海の中をゆっくりと船が進んで行った。遠ざかる船を見つめながらルネアが感心したように言った。
「あなたが言ってたようにあの船で本当にアルム鉱石を採取してたかも知れないわね」
「まさか本当に石の船があるとは思いませんでした。それにしてもさすがに我々もあのせまい船では便乗出来ませんでしたね」
「それは私が見つからないように飛んで行くから問題無いわ」
「総帥、お役に立てずに申し訳ありません」
「だからその総帥ってのやめなさいってば。そんな事よりもあなたたちは安全な所に引き上げなさい」
「安全な場所?総帥らしくない事を言いますね」
「そうね。でもなんと言うかこう、イヤな予感と言うか悪い予感と言うかレント様が何かするととんでもない事ばかり起きるから用心に越したことはないわ」




