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第五章 人にあらざる者 5

 クロロの率いる蠍旅団が楔型陣形で敵陣を縦横無尽に駆け巡り、レントが巨人族獣人族を問わず巨大なハンマーで打ち殺して行く。そしてケルベロスが魔獣と召喚士を炎と牙で次々と屠って行く。

どちらが侵略者なのかわからない地獄絵図が展開された。

斬りかかる者が途絶えたのを見て取り、レントがハンマーを放り投げて幹部に向き直った。


「お前は顔が気に入らない」


 言うと同時に二路を双方引き抜いて一瞬で幹部の1人を小間切れにした。

血にまみれ、両手に二路を手にしたレントが残りの幹部たちに目をやった。


「お前らを全員殺してもいいが退却命令を出す奴が居ないと不便だな」


 10人ほどの幹部を睨めつけて問いただした。


「全軍退却の命令を出せる奴は手を上げろ」


 言った直後に2人を一瞬にして切り裂いた。生き残った者も顔面蒼白となって震えている。


「反応が遅いな。言われたらすぐに手を上げろよ。さて、もう一度言うぞ。全軍退却の命令を出せる奴は手を上げろ」


 すぐさま残った8人が手を挙げた。


「お前たちに一言言って置く。もしも退却せずに近くに留まるような事があれば躊躇いなく斬り殺す。お前たち全員の顔を覚えたからな」


 安堵の表情をした幹部の一人に念を押すように言った。


「約束を違えたらこの陣中に居る総ての鶏が違え鳴きをする。雌鶏もだ。その時はすぐ傍に俺が居ると思え」

「・・・そんな事出来っこねえじゃねぇか」


 小さく呟いた兵士の声をレントは聞き逃さなかった。

聞こえないほどの小さな声で東天紅を唱えると兵士に語りかけた。


「おい。耳を澄ませろ。聞こえるはずだぞ」


周囲の者全員が耳を澄ませた。そして・・・


コッ      コッコ  コケッ     コケコッコー     コケコッコー

  コッ      コッコ  コケッ     コケコッコー

 コケコッコー             コケコッコー     コケコッコー

  コッコ  コケッ            コッコ  コケッ

コッ      コッコ  コケッ     コケコッコー     コケコッコー

  コッ      コッコ  コケッ     コケコッコー

 コケコッコー  コケコッコー     コケコッコー   コッコ  コケッ

  コッコ  コケッ    コケコッコー     コケコッコー


 補給部隊の方から鶏のけたたましい鳴き声が聞こえてきた。


「わ、わかった。よおくわかった。我々は今すぐ本国へ退却する」

「夕方までには一兵残らず失せろ。二度とこの地には足を踏み入れるな」

「わかっ、・・・わかり・・・ました」


 レントはうなずくと右手をサッと上げた。

その合図に蠍旅団員とケルベロスが駆けつけてくる。

侵攻軍はズタズタに分断され、レントの周囲には巨人族や獣人族、軍幹部の屍が累々と横たわり、ケルベロスの周囲もまた魔獣や召喚士の無残に切り刻まれた骸が転がっていた。


「こいつらは今すぐ撤退するそうだ。俺たちも帰るぞ」

「え?団長、・・・そんなその場しのぎの嘘を信じるんですか?30万もの軍隊がそんな簡単に撤退なんかする訳ないじゃないですか」

「するさ。なぁお前たち、そうだろ?」


 レントがそう言うと秋の稲穂のように軍幹部たちが頭を下げた。

小さくうなずくとケルベロスに飛び乗った。

振り返りもせずに悠々と立ち去るレントとその仲間を眺めながら幹部の一人であるイルケルが呟いた。


「私は王を恐れているがそれ以上にアレが恐ろしい。・・・私は撤退する」

「ワシも撤退する。もう国には帰れんだろうが亡命先には心当たりがあるでな」

「俺は残るぞ。本隊と合流する。お前たちは勝手に撤退するなり逃亡するなりしろ」


 異を唱えた幹部を憐れむように見やるとイルケルが絞り出すように言った。






「私もあなたも所詮は人です。だがアレは違う・・・あれは人にあらざる者だ」


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