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第五章 人にあらざる者 1

 ファウンランド王城の中庭にある小さな教会。

薄晴れの空がどこまでも続く、そんな中で純白のウエディングドレスをまとったサンドラがレントに微笑みかけた。レントもまた照れながらサンドラを抱き寄せる。

誓いのキスをするのと同時に祝砲が撃ち鳴らされた。

互いに微笑み合い、再び抱き合ってキスをする。

誰もがお幸せにと声をかけてくる。

手を取り合いハネムーン用の飛空挺に向かって歩きだしたその時、地響きがした。

参列者がざわめきだした。


「どうした?祝砲じゃないのか?」

「実弾を撃ったのか?」

「敵襲?」

「敵襲だー!」



 目を見開いたレントがベッドから飛び起きた。窓に駆け寄り外を見ると数カ所煙を噴いている民家と逃げ惑う村人、対応する兵士たちが見えた。敵襲という声が大きく響く。

既にサンドラも目を覚ましていた。


「レント、これは一体?」

「わからない。とにかく僕は様子を見に行ってくる。サンドラはみんなを安全な所へ避難させてくれ」


 手早く服を着込み、二路を腰に差すと窓から飛び降りた。

夜明け前の薄明るい中で兵士たちが村人たちを避難させ、一方では飛空挺を解体して不燃布と瓦礫で簡易的な防御壁を作っていた。


「クソッ、一体どこが布告も無しにこんな村を・・・」


 走るレントの視界の先に、砲撃を受けて崩れるひときわ高い塔があった。物見櫓を兼ねたシユケの家だ。


「カルビーーー!」

「はぁい、ご主人様」


 視界の影から現れたカルビがレントに寄り添うように走りながら返事をした。


「あの物見櫓まで乗せてってくれ」

「お安いご用ですご主人様」


 レントが飛び乗ると同時に猛スピードで駆け出し、そのまま翼を広げて櫓へと飛んで行った。

空から見渡した先、北側の平原に無数の兵が隊列を組んでいるのが見えた。


「クソッ、あいつらの中に先に斬り込んで行きたいぜ!」

「やりますか?ご主人様」

「まずは櫓だ。あの連中は取り敢えずハイネルドの部隊に任せよう」


 櫓に降り立ったカルビから飛び降りるとレントが叫んだ。


「シユケー!どこだ?大丈夫か?」

「おー、来てくれたのかレント。取り敢えず死ぬほどやられてねぇから大丈夫だ」


 崩れた瓦礫の中からシユケが答えた。

急いで瓦礫を取り除いたレントが少しの沈黙のあとでシユケの身体に長衣を被せて搾り出すように言った。


「なぁシユケ、お前のソレの力を俺に見せてくれないか?」

「・・・それ?」

「とぼけるなよ。遺物はそのほとんどが兵器だ。お前のそれも直接目を通さずに見えるのは裸眼の保護か命中率アップか或いはその両方だろ?」

「はぁ~・・・気付いてたのか。誰にも知られてない最後の奥の手だったんだけどなぁ」


 レントが転がっていた単眼鏡で北の平原に目をやった。


「火砲は3門、かなりの距離があるがイケるか?」

「まぁやってみるさ。どっちにしろお前がそう言うんなら俺は助からない程の大怪我だって事だしな」


 そう言うとシユケが火砲の一つに向かって構えた。

レンズの上にある蓋が開き2本のむき出しの銅線が伸び、シユケの頭に刺さった。

カチカチと言う金属音と共にレンズが白く発光して行く。

刹那、まばゆい閃光が火砲に向かって放たれた。

光が通った直後、火柱を上げて火砲と周囲の兵が吹っ飛んだ。


「こりゃ凄いな。遺物の中でもこれほどの物は2つと無いだろう」

「そうだろうよ、恐ろしい程の威力と使用者を気絶させるほどの魔力消費量だからな」

「よし、あと2門だ。このままやっちまえ」

「レント、お前人の話を聞いてなかったのか?魔力を消費し過ぎて俺はもう死にそうなんだよ」

「ふーん・・・魔力ってのはこの銅線で吸い上げてるのか?」

「そうだが、それが?」

「よし、俺の魔力も吸い上げさせてやる。そうすりゃ使えるだろ」

「お前は魔法が使えないって聞いてるぞ。そんなの無理だろうが」

「ばっかだなぁシユケ、魔法が使えないのと魔力が無いのは別だ。いいから任せろ」


 そう言うとレントは頭に伸びた2本の動線を掴んだ。

「ん?お、おま・・・レント、ち、ちょっと待ておい!目盛が見た事のない数値と色になってるぞ!」

「撃てるか?」

「撃てる・・・が、どうなっても知らねぇぞ。どのぐらいの威力があるのか見当もつかねぇ」


 第1射とは違いレンズが紫色に発光して行った。

そして光の渦を伴った紫色の閃光が放たれた。・・・が、何も起きない。


「・・・あれ?シユケ、何も起きないぞ。これ壊れたんじゃないのか?」

「えー・・・変だなぁ。ちゃんと消費後のゼロ数値になって・・・」

話している途中で巨大な玉ねぎのような火柱が上がり、爆風で敵陣に向かっていた飛空挺が横に飛ばされた。

更に物見櫓の瓦礫が飛ばされる。

火砲のあった場所は完全に焦土と化し、生き残りの兵さえ見当たらなかった。


「シユケよ・・・お前やりすぎだよ。もうこれどこの国の軍か識別出来ねえかもな」

「俺じゃねえよ!」

「まぁいい。じゃあアイリスの所に行って手当してもらおうか」

「・・・は?・・・俺助からねぇんじゃないのか?」

「誰がそんなこと言ったんだ?ただの打撲だ。死ぬような怪我じゃない」




「て、てめえ!騙しやがったな!!」


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