第四章 旅団長レント 1
地面に座り込んだレントが胸の消えた傷を指でなぞりながら繰り返して言った。
「俺を刺した奴と斬った奴、5人ぐらい居たな。こっちに来い。」
言われて渋々と7人の兵士達がレントの元に歩み寄った。
「なかなかいいぞ。お前たち7人は今日から俺の部下になれ。俺だけの命令に従い俺の手足となり剣となれ。不服な者は居るか?」
「ふ、不服もなにも我らはあなたを殺そうとしたのですぞ?」
「遠まわしに殺すおつもりでしたら今ここで殺していただきたい。」
「何よりも我らを信用などできますまい」
兵たちの言葉にレントはにやりと笑った。
「躊躇なく命令に従える、殺せるってのは出来そうでいてなかなか出来ないんだよ。そう言う意味でお前たちは信用できるんだ。な、俺と一緒に来い。」
「私はお断りしましょう。」
「俺もだ。俺が忠誠を誓ってるのはリンダ様おひとりだけだ。」
「あなたの申し出は嬉しいのですが・・・」
地面に座り込んでいたレントがゆっくりと立ち上がると全員の顔を見つめた。
「殺されても従えない・・・か?・・・どうだ?おい。」
「従えませぬ!」
「リンダ様の命令以外は聞けませぬ!」
「まぁそうだろうなぁ。立場が違えば俺もそう言うだろうからなぁ・・・」
このやりとりを見ていたハイネルドが慌てて割り込んだ。
「レント、なんでお前はいつもそうやって無茶なことを言うんだ。」
「4年前の囮り作戦で部下がほとんど死んじまったからな。忠実で勇敢な部下が欲しいんだよ。」
「クーデターの時のアレか。」
「ああ、みんな死んじまったよなぁ。クロロも生きていれば今頃は・・・」
「ん?クロロは生きてるぞ。今は親衛隊の副隊長だ。」
「はあああ?嘘だろおい。」
「嘘なもんか。ほら、飛行艇の所で手を振ってるじゃないか。」
そう言われて目を凝らしたレントが不意に笑い出した。
「はは、間違いねぇクロロだ、生きてやがった。」
「まぁあの時の生き残りはお前とクロロぐらいのもんだがな。」
「なあハイネルド、クロロをくれ。ついでに近隣で気に入らない国があったら教えてくれ。」
ハイネルドが嫌な予感に襲われて一歩身を引いた。
「レント、お前何を企んでる?」
「これから一緒になるサンドラの為に国を一つプレゼントしたいんだ。俺とクロロとこいつら7人が居れば小国なら領土と兵士を増やしながらひと月で攻め落とせる。」
「お、おま、、、」
「ああ、もちろん独立国じゃなくファウンランドの属国でいいよ。」
「恐ろしい事をサラッと言うなよお前!」
「え?なに?ファウンランドの国王たる者が気に入らない国の1つも無い訳?なっさけなー。」
「バカ言うな!嫌いな国ぐらいあるさ、ジキールにポツサムに・・・特にキュプ王国は好きになれんな。」
「キュプ?あんな小国簡単にひねり潰せるだろう。」
「お前が知ってる頃より国土は10倍にもなってるよ。テケシュ半島に城塞都市を作るぐらい大きくなってるし、海軍はどの国よりも強いだろう。」
テケシュ半島と聞いてレントが目を輝かせた。
「おおっ、プレゼントにはぴったりの大きさだ。キュプを攻め落としたらテケシュを俺にくれよ。」
「え?いやまぁいいけど・・・お、リンダが戻って来たぞ。」
さっきまでとは打って変わって上機嫌になったリンダがレント達のそばに来て言った。
「レンちゃん聞いたわよ。明日鉱山でお祭りをやるんですって?」
「ああ、その予定だよ。」
「だったらここで今から始めましょうよ。近隣の村の人たちも鉱山の人も私の飛行艇で運ぶからさ、ね?いいでしょ?レンちゃん。ハイネもいいわよね。」
「これだよまったく。」
ハイネルドがあきれ顔で肩をすくめた。
「オレは別に構わんしあそこに居る鉱山の連中も嫌とは言わんだろうが・・・レントもそれでいいか?」
「リンダは言い出したら聞かないからなぁ。いいよ、そうしよう。」
「えへへー、やったぁ!」
そう言うとリンダはすかさず自軍の兵士たちに大声で命令を下した。
「お前たち、近隣の村の者を残らずここに連れてくるのだ。斬ってはならんぞ、丁重にな!」
リンダの号令で2万の兵士達が大地が震えるほどの雄叫びを上げた。
「・・・ハイネルド、リンダが何だか強制徴用に出向く独裁者に見えるんだが?」
「お、おう・・・オレも今そう思ってたところだ。」
「あんたたち聞こえてるわよ!あ、そうだ。そこのお前たち」
「ふぇ?」
「お前たち7人は今からレンちゃんの部下として仕えなさい。粗相のないように忠信に励むんですよ。」
「え?いや、我々は・・・」
抗弁しながらリンダの顔を見た兵士たちはその表情の険しさにたじろいだ。
「我々はリンダ様をお慕いし・・・え・・・お、仰せのままにリンダ様」
ひざまずく兵士たちを見て憐れむようにハイネルドが呟いた。
「お前ら・・・かわいそうに・・・」
「気の毒だったなぁ。まぁそう言う事だからこれからよろしくな。それからハイネルド、申し訳ないがクロロも俺の部下に戻してくれ。」
「もちろんだ。あいつもお前の消息が分かったって聞いた途端に嘆願してきたよ」
「はははは、楽しくなってきたぞー。」
嬉しそうなレントの声に7人はがっくりと肩を落とした。




