第三章 少女時代 1
今回久しぶりにサンドラが出てきたと思ったら
ゴルゴ13みたいになってしまいました^^;
テーブルの上で手を組んでいたネスカリカの神官長が重い口を開いた。
「精霊の騎士殿、どこで聞いたかは知りませんが殺人人形などと言う物は存在しません。お引き取りください。」
全身を鎧で覆い尽くし兜を被ったサンドラが無造作にテーブルの上へ機械仕掛けの腕を放り出した。
「こいつらは自己増殖するらしいな。この古びた都市に入る前に20ほど打ち壊したがネズミのように増えているそうじゃないか。」
投げ出された腕を見つめて神官長が震えだした。
「20?あなた様がお一人で?」
「動きがパターン化されてつまらなかったがな。」
「私どもは20人以上で戦ってやっと1体壊せるかどうかと言うのに・・・・」
「ふん、やっと存在を認めたか。これもやはり『来訪者の遺物』なのか?」
うろたえた神官長が椅子から立ち上がって後ずさる。被っていたフードが落ちて、老いた顔があらわになった。顔には大きな傷が走り、レンズの付いた機械を装着していた。
「そこまでご存知でしたか。精霊の騎士殿、隠し立てして申し訳ございません。」
そのまま床にひれ伏した。サンドラに対しての恐怖で体が小刻みに震えている。
「その顔はどうした。殺人人形にやられたのか?」
「お恥ずかしい限りでございます。幸いこのような機械が有った為、不自由な思いはしておりませぬ。」
「なるほど、我が村にも盲いた老人が居る。人形殲滅の依頼をするのなら余剰分を分けてもらうのもいいな。」
「・・・残念ながら長い発掘の歴史の中で現在までで唯一これだけしか見つかっておりません。余剰などございません。」
「ふむ、ならば珍しい武器などがあったらそれを報酬として受け取ろう。もちろん依頼するのなら、の話だがな。」
神官長はこの言葉を聞いて立ち上がるとサンドラの手を取って懇願した。
「精霊の騎士殿、どうか、どうかお願い致します。このままではネスカリカが廃墟になってしまいます。報酬ならばなんなりと差し上げます。」
「わかった、やってみよう。では詳しく話を聞こうか。」
神官長は部屋の壁に貼ってある図面を引き剥がしてテーブルに広げた。
「ここから南に進んだ採掘場で入口の閉ざされた正方形の建物が見つかりました。中には人型の機械人形が2体と棺桶のような金属製の箱、そして大きな昆虫のような機械が20ほどありました。」
「その2体の機械人形はこれと同じ形だったのか?」
「いいえ、こんなに小さくありません。普通の人と同じぐらい大きくて攻撃力も非常に高いです。」
「ふむ、続けてくれ。」
「その機械人形の胸の部分の蓋にスイッチがあって、切り替えた途端に発掘者たちは建物の外に放り出されました。禁忌埋蔵物指定として破壊しようとしたのですが討伐隊はことごとく撃退され、その時には2体目も動いていましたが、再び入口は今度は内部から固く閉ざされました。」
話を聞きながらサンドラは建物のある地点を指さした。
「この建物に地下室、つまり資材倉庫があると思うか」
「それは絶対にありません。真下に地下道が通っています。」
「ふむ・・・・」
「騎士殿が疑問に思った資材に関しては先ほどの昆虫のような機械が運んでいるものと思われます。」
「入口が塞がれてからどのぐらいで最初の人形が出てきた?」
「ほぼ3ヶ月後です。今から一年ほど前になります。」
「その後の人形の生産のペースはどうだ?」
「以前は一週間で2体ほどのペースでしたが最近は倍に増えました。昆虫のような機械も増えた気が致します。」
「それは間違いなく生産ラインを増設したな。建物の建て増しはしていないか?」
「それが・・・・更に3棟増設されて、私どもは近付く事も出来ません。」
「なるほどな・・・・で、その昆虫のような機械は24時間動いているのか?」
「昼間の太陽の出ている時間にしか動かないようです。・・・・あの、なぜ騎士殿はそんなに殺人人形にお詳しいのですか?」
「別に詳しいわけでは無いさ、対策を立てるための情報の組み立ての基本だ。そんなに感心する事でも難しい事でもない。」
サンドラはしばらく思案したあとで神官長に告げた。
「今夜中に建物の近くに炉を設置して炭を起こせ。私は配下と3名で明朝昆虫機械が出て来た所を捕獲、破壊して炉に投げ込む。妨害する殺人人形も同様にだ。」
「か、かしこまりました。」
「もしかしたら戦闘に特化した人形や昆虫も居るかも知れないから充分に気をつけるんだ。資材が完全に無くなるまでは持久戦になるだろうが、場合によっては強行突入するかもしれん。心の準備だけはしておけ。」
そう言うとサンドラは立ち上がって扉を開けた。
廊下にはサンドラと同じような鎧に身を固めた精霊の騎士が2名控えていた。漆黒に真紅の縁取りが施されたサンドラの鎧と違い、銀色の削り出しである。
「明朝、日の出と共に殺人人形と工場を破壊する。」
サンドラの言葉に供の2人が飛び上がった。
「若先生。ハンニバル先生にネスカリカに関わった事が知れたら少数遠征での傭兵業務を取り消されるかも知れませんぞ。」
「もとよりここは禁忌とされる場所。ファウンランドへの近道とは言え通るべきではありませんでした。まして仕事を引き受けるなどもってのほかです。」
サンドラは2人をじろりと睨みつけると冷たい声で言い放った。
「私は傭兵業務の他に父上より各地にて見聞を広め、風土を知るように言われている。お前たちはそう言うが今後何かの役に立たんとも限らんぞ。」
尚も不服そうにしている2人を後に自室へと向かった。
そして不意に立ち止まると振り返って言い放った。
「お前たち、不服なら2人だけでイリア村に帰ってもいいんだぞ。」
そう言って笑うとまた歩き出した。




