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第三章 大切な想い 1

ここまででやっと半分ぐらいまで進んだ・・・のかな?

登場人物が多すぎて収拾がつかなくなりそうですが、殺して減らす訳にもいかないので

頑張って細部を拾い上げていこうと思ってます。

読んでくださっている皆さんと、サンドラのモデルになったAさんに感謝です。

最後、完結するまで書けるといいのですが・・・・^^;


 朝日が昇る直前の、東の空が白く輝くひと時。

ベッドで寝ていたシユケは窓ガラスが破られる音で飛び起きた。

「な、なんだこれ?・・・じ、自転車・・・・え?どゆこと?」

飛び込んできた自転車を見つめて完全に眠気が吹っ飛んだシユケの耳にギシギシと言う不気味な音が聞こえてきた。

自転車にロープが縛り付けられていて、誰かがそれを使ってよじ登って来ているのだ。

「シユケ、おはよー!遊ぼうぜ!!」

窓から顔を出したレントが笑いながら言った。

「お、おま・・・ここ5階だぞ。てか何で玄関から来ない?」

「いや、ノックしたんだけど出ないからロープ付けた手鉤を投げて登ってきた。」

「それ手鉤じゃないから自転車だから。」

「まぁまぁ、細かい事はいいじゃない。」

窓からヒョイっと中に飛び込みながらレントが言った。

「それにしても変わった家だね。円筒形で5階建てとか屋根が尖塔形じゃなかったら火の見櫓とか塔みたいじゃないか。」

「ん?ああ、これはまんま火の見用の塔だよ。一応ここは精霊の騎士の村だし、いつ襲撃があってもおかしくないからね。」

「その時は真っ先にここが狙われるよ。」

「違いねぇ。わはははは」

ひとしきり笑った後でシユケが切り出した。

「んで?こんな朝早くに遊ぼうでもないだろ。本題に入ろうや。」

正面から切り出されて口ごもりながらレントが話し出した。

「えーとね、実はサンドラの事なんだけど何か喜ぶ物をプレゼントしたくてさ、今まで女性にプレゼントとかした事無いもんで・・・・」

「レント、お前そんな事で朝っぱらからこんな真似しやがったのか!」

「そんな事って何だよ!この世の中で一番大事な事だろうが!」

言い返されたシユケが呆れた顔でレントを見つめた。

そして気を取り直したようにレントに聞いた。

「レント、立ち入った事を聞くようだが・・・・フェイ・ザルドスとはもう寝たのか?」

「え?え、ああ・・・、うん。もちろんだよ」

「本当か?」

「もちろんさ、・・・・もちろん・・・・まだだよ。」

「最初からそう答えろよ。やせ我慢しやがって!」

「えへへ」

「まぁいいや、とりあえず朝飯でも食いながら考えようぜ。俺の意見はあんまり参考にならんだろうがな。お前も食うだろ?」

シユケはそう言うと台所にぶら下がっているベーコンのカビを切り落として火にかけた。乾燥茶の葉を放り込んだポットに水を入れてテーブルに置く。

「あ、そうだ。レント、そういう事ならサリティに聞いた方がよっぽど参考になるんじゃないか?」

「いや、それも考えたんだけど電話はサンドラの家にしか無いし、そんな事誰かに盗み聞きされたくないからねぇ・・・」

「まぁそりゃそうだ。」

言いながらシユケがパンを厚切りにしてテーブルに置いた。

「レント、悪いけどそこの台をテーブルの横に持ってきてくれないか」

ベーコンの焼き加減を見ながら滲みでた脂で目玉焼きを作る。

サラダ用のボウルを棚から出しながら不審そうに振り返った。

レントは台を見つめたまま動かそうとしなかった。

「どうした?レント、どうかしたのか?」

「シユケ、これ・・・・」

「ん?ああ、傭兵先での分捕り品だよ。使い道は分からないけど値打ちがありそうだったんで持って来たんだ。」

「これ電話だよ。」

シユケが味見をしていたスープを吹き出した。

「マジか!」

「軍事用の電話で通信中継所まで直接電波で飛ばせるやつだよ。ここの横にある手動コイルで発電させて、通話はこのスピーカーが送受信を両方こなすから通常会話のように話が出来る。」

料理を皿に盛り付けながらシユケがピュウと口笛を吹いた。

「そりゃまた凄いお宝を分捕ってきたもんだな。」

「さっそくで悪いけどこれで今鉱山に電話をかけていいかな?」

「ああ、動くかどうかも知りたいしな。やってみなよ」

レントは手早く負荷が軽くなるまで手動コイルのハンドルを回し、パネルを開けてダイヤルを回した。

スピーカーから呼び出し音が流れる。

「大丈夫そうだな。時間は早いけど所長なら事務所に居るだろう。」

数回の呼び出し音のあとで受話器を取る音が聞こえた。

「はい、アルム鉱山事務所です。( ̄Д ̄) 」

聞き慣れない女性の声にレントが怪訝そうに言った。

「あの、えーと・・・どなたですか?」

「アンタねー、人に名前を聞くんならまず自分が名乗りなさいよ。」

「あ、すいません。休暇中の主任技師でレントって言います。」

「あー、アンタがレントね。私はアンタの代わりに臨時採用されたジムコ・ドーミンよ。事務子って呼んでもいいわよ。」

「は、はぁ・・・・」

「それにしてもアンタら本っ当に書類作成とか管理とか全然ダメね。大体必要経費の出納帳も無いし、机の上の空き缶を金庫替わりにして適当に出し入れするってどういう事よ!」

「え、え、え、・・・・えーと・・・それはそれで便利なので・・・・」

「そんなモン便利とは言わないわよ。単にだらしないだけじゃない!」

「す、すみません。」

「それとウメ、あいつをなんとかしなさいよ!」

「・・・ウメ?・・・・誰でしたっけ?」

「所長よ所長!ブーメン・ウメシュ、あのスケベオヤジよ!」

ブーメン所長は何をやらかしても不思議じゃない。

しかし何をやらかしたのか想像しただけでレントは気が重くなった。

何よりもまず、2年も一緒に仕事をして来て所長のフルネームを今まで知らなかったのは部下としてどうかと思った。

「部下として恥ずかしい限りです。あの、ところでサリティ居ますか?」

「ああ、さっきどっかの軍隊が来たんでウメと一緒に対応してたわよ。」

「軍隊?・・・どこの?」

「そんなの知らないわよ。採掘量とかの査察なんじゃない?」

「は、はぁ・・・・・」

「さぁ、私も忙しいから切るわよ。じゃあね。」

そう言うなり電話が乱暴に切られた。

シユケが電話の上に皿を置きながら呆れたようにつぶやく。

「なんだか有能だけど凄そうなのが来たみたいだな。」

「うーん、復職は結婚後の選択肢の一つだけど戻るのが怖いかも。それよりも軍隊ってのが気になるな。」

答えながらレントが脂の溢れるベーコンを頬張った。

レントを眺めながらシユケがしみじみと言う。

「レント、お前って結構人殺してるだろうによく堅気仕事出来るなぁ。」

「ん?どゆこと?」

「気に入らない同僚を始末したいとか、実際始末したりとか給料が安いとか我慢する事が多すぎて俺にはとても出来そうにないよ。」

「あー・・・まぁ、わかるよ。でも甘く見られて軽く扱われるってのも案外良いもんだよ。武力じゃなく人徳で人を従わせるとかさ、そりゃまぁ時々は殺意を覚える奴も居るけどね。」

「言いたくないけどお前・・・・人徳あるのか?」

「うっ!・・・・無い。」

「俺もだよ。あははははは」

「ははははは」

と、不意に笑っていたシユケが人差し指を口に当てた。

それに合わせてレントも周囲を探るように手を広げて肩をさげた。

「何か来る。」

そう言うとシユケは素早く天井から下がっているロープを引っ張ってハシゴを下ろす。駆け上がると同時に尖塔屋根を押し上げて据え付けの遠眼鏡を覗いた。レントもシユケの後ろにぴったりと付いた。

「こりゃヤベェな。軍隊がこっちに向かって来てる。2・・・いや、3万は居るぜ。」

そう言うと打ち鐘をガンガン鳴らした。

すかさずレントが遠眼鏡を覗く。騎馬兵、歩兵、そして上空には輸送飛行艇が5機飛んでいる。

「レント、どこの軍隊だ?旗が見えるか?」

「ちょっと待ってくれ、飛行艇に紋章が描かれている。あれは・・・あ!」

「あ!って何だよ、どこの軍隊だ?」

鐘を打ち鳴らしながらシユケがレントを急かす。

だがレントはショックを受けたように動かない。

シユケが肩を掴んで強引に揺すった。

「しっかりしろ!どうしたんだレント!」

「あ・・・あ・・・ダメだ。すまんシユケ、取り敢えず俺は逃げる。」

「はぁあ?お前・・・・負け戦になりそうだから逃げるのか?」

「違う!会いたくない知り合いの紋章が・・・・」

「くだらねえ言い訳すんなよ。だったら誰の紋章なんだよ」

「・・・れんげたんぽぽの・・・・リンダ・リンクスだ。」

その時急速に近づいて来る飛行艇のブリッジから一人の騎士が飛び降りた。

そのまま地上に激突するかと思われた騎士の耳の後ろから大きな翼が広がって空を舞う。

そしてそのまま一直線にレントに向かって飛んで来た。

「レンちゃあああああああああああああああああん!!」

そう叫んで騎士がレントに飛びついた。

勢い余って物見台が半壊した。レントを抱きしめたまま騎士は地上に降り立った。危うく避けて落ずに済んだシユケが青褪める。

柱にしがみついてうわ言のようにつぶやいた。

「ほ、ほほほ本物だ。本物のワルキューレだ・・・・・」

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