第二章 魔王の宴 3
本作に出てくるツインリーフのシカとナノには実はモデルがいます。
ディコット(dicot)と言うデュオのシノさんとカナさんです。
古いアニメで超GALS!寿蘭と言うのがありまして、その主題歌(ア★イ★ツ)を
歌っていたといえば思い当たる人も居るかと思います。
実はすごい好きな歌手なのでいつか登場人物として出したいと思っていました。
またいつか復活してくれないかなぁ・・・・
ひざに飛び乗ってきたカルビが喉をゴロゴロ鳴らして甘えてきた。
仕方ないなと思いながらレントはその頭を撫でてやる。
ベッドに腰掛け、サイドテーブルのワインを飲みながらいつしかレントは黙り込んだまま機械的にカルビの頭を撫でていた。
「ご主人様、決心はつきましたか?」
不意に頭を上げてカルビがそう話しかけてきた。
「え?決心って・・・・何の?」
「フェイさんの部屋に行って愛を交わす決心です。」
「え?な、な・・・・そんな事」
「思いっきり考えてましたよね。」
言われてレントは顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「ご主人様は殺気は無意識に消せるのに、何でそう言う性欲とかの気配は垂れ流しにしちゃうんですか。」
「えーと・・・そう言う気配が漏れてた?」
「ダダ漏れですよ。恐らくこの屋敷の中の全員がご主人様の気配に気付いてます。」
レントはますます赤くなって黙り込んだ。
「フェイさんもきっと今頃そわそわして困ってますよ。」
「いや、だって女の子を好きになったのって初めてだし・・・・こんな気持ちになったのも初めてだから気配の消し方なんてわかんないよ。」
カルビが呆れたように首を横に振った。
「だめだこりゃ」
「ダメとか言うなよカルビぃぃいいいいいいいい!!」
「いやもう呆れて言葉も無いですご主人様。」
「そこを何とかしてくれよ。この気配を無かった事にするとか・・・」
「無理です!!」
言い合ってるその時、ドアをノックする音がしてレントは飛び上がった。
「ど、どうぞ、開いてます。」
ドアが開くと同時にルネアが勢いよく入ってきた。
「愛しのお嬢様だと思った?残念ルネアちゃんでした。」
軽いショックにレントがへたりこんで苦笑いをした。
「あら?なにこれかわいいネコちゃん。」
そう言いながらルネアはレントの横に座ってカルビの頭を撫でた。
「にゃーご」
「・・・じゃないわね。ネコに臼歯なんて無いもの。あなた魔物ね?」
「あらら、即バレしましたご主人様。この人凄いです。」
レントが困った顔をしてカルビに言った。
「外殻が付いてる時点でお前は魔獣だよカルビ。」
「へぇ、カルビちゃんって言うんだ。あ、そうだ!口に合うかどうか分からないけど、はい、どうぞ。」
そう言ってルネアはエプロンのポケットからクッキーを出してカルビに差し出した。クンクンと匂いを嗅いでカルビがレントの方を向いた。
「あの・・・・食べてもいいですか?ご主人様。」
「ん?ああ、構わないよ。」
「私、物を食べるのって初めてだからワクワ・・・・」
カルビが言ってる途中でレントが慌てて頭を叩いた。
「余計な事は言わなくていいから食べろ。」
「レントさん、叩かなくたっていいじゃないですか。可哀想ですよ。」
「え・・・あと・・・はい。」
「どう?カルビちゃん、おいしい?」
そう言ってカルビの顔を覗き込んだルネアが息を飲んだ。
食べながらカルビがボロボロと涙を流していたのだ。
「どうしたの?カルビちゃん。大丈夫?」
「あんまりおいしいものだから。まるで愛に殉じたたまし・・・・むぐぐ」
慌ててまたレントが今度はカルビの口を塞いで、取り繕うようにルネアに話しかける。
「ところでルネアさん、こんな時間にどうしたんですか?もしかして・・・フェイが僕の事を呼んでるとか?」
ルネアは首を横に振ると立ち上がってエプロンを外した。
「夜伽に参りました。優しくかわいがって下さい。」
一瞬ポカンとしたレントがやっと状況を飲み込んだ。
「あーごめんルネアさん。そういうのは要らないから。気を使ってくれてありがとう。もう部屋に戻って下さい。」
「そんな、だってさっきはあんなに・・・・」
「いや、その渇望する気配を出してたのはカルビだから!な?カルビ?」
「えええ??え・・・・はい。」
「うん。そう言う事なんで、ね?フェイにも勘ぐられたくないしさ、」
レントの言葉にルネアが微笑んだ。
「お嬢様はこの事ご存じですよ。」
その一言でレントの顔から笑みが消えた。
「フェイは知っているのか。・・・そうか。」
レントは無言で立ち上がるとフェイの部屋へと向かった。
ルネアその他の侍女の静止を無視して、レントは階段を上がりフェイの部屋へと向かった。ドアの前に立つ侍女2人に取り次ぐように言う。
怒りに駆られているレントを見て2人は慌てて部屋に駆け込んだ。
少しの間を置いて扉が開かれる。
「どうぞレント様。お嬢様がお会いになります。」
レントは部屋に入るなり、テーブルに向かい書き物をしているフェイに向かって大股で歩み寄った。
「フェイ、ルネアを俺の夜伽に寄越したというのは本当か?」
フェイは書類から目を上げずに返事をした。
「別に命じた訳じゃないわ。」
「俺が迷惑に感じるとは思わなかったのか?少なくとも容認した訳だな?」
「男の人はそう言う待遇を喜ぶと思ったから・・・・」
フェイの言葉にレントが激怒した。
「俺をそんな下卑た小者と同じだと思ったのか!俺が欲しいのは君だけだ。他は一切要らん!そんな事も分からないのか!」
レントの怒声に肩を震わせながらもフェイは顔を上げようとはしなかった。
「返事をしろ。どうなんだフェイ!」
「・・・私は・・・・」
そう言ったきり、フェイは口をつぐんだ。
「俺はこんな侮辱を受けたのは初めてだよ。なぜ君は平気でいられるんだい?なんとも思わないのかい?」
うつむいていたフェイがプイッと横を向いた。体が小刻みに震えて顔も青ざめていた。
「私、そんな言われ方をされるのは不愉快だわ。」
しばらく無言でフェイの横に立っていたレントが上を向いて大きく息をついた。そして何事もなかったかのように静かに部屋から出ていった。
足音が遠ざかり、やがて聞こえなくなった時、フェイはテーブルに突っ伏して泣き出した。
まわりの侍女たちがオロオロする中、ルネアがフェイに言った。
「お嬢様、なんで正直に怖かったって言わなかったんですか。」
「だって、だってレントがあんなに怒っているのに言えないわよ。」
「まぁ確かに・・・さっきのレント様の部屋からの気配は凄かったですからねぇ。・・・・あ、それとお嬢様。」
フェイの肩に手を置いてルネアが申し訳なさそうに続けた。
「今更ですけど多分もうレント様は出て行かれたと思います。恐らくここにはもう2度と戻って来ないと思います。」
言葉の意味が俄かには理解できなかったフェイが顔を上げてルネアを見た。
「・・・どういう事?」
「レント様はお嬢様を捨てたと言う事です。」
呆然とルネアを見つめるフェイの目からまた涙が溢れだした。
そして屋敷中にフェイの泣き声が響き渡った。
パブ《バーガンディ》での演奏を終え、観客に手を振るとシカとナノは横手にあるテーブル席に腰を下ろした。
待ちかねたようにフロアマネージャーのボビーがやって来た。
「いいわー、凄く良かったわよ。次のステージもお願いね。」
「は、はぁ、ありがとうございます。」
「これはワタシからのオ・ゴ・リ、フルーツは喉に言いのよー」
そう言ってボビーはバスケットに山盛りのフルーツをテーブルに置いた。
「実はワタシあなたたちツインリーフの大ファンなの。」
「は・・・ぁ・・・そうですか。ありがとうございます。」
「ひとりぼっちって曲が大好きでね、出来れば次のステージで歌ってくれるとワタシ凄く嬉しいんだけど、それとカバー曲の・・・・」
ボビーの勢いに困ったように頷くナノの服をシカが引っ張った。
「ねぇナノ、あれレントさんじゃない?」
シカが指差した先に不機嫌そうなレントが居た。ホール中央で踊っている男女を全く意に介さずに、真っ直ぐバーカウンターに向かって歩いている。
「あ、今ぶつかって嫌な顔をした男の人を殴り飛ばした。」
思わずナノとシカは顔を見合わせた。
そんな2人に気付かずにボビーはまだ延々と喋っていた。
「それとね、滅多に歌わないしアルバム収録もされてないけど、あなたたちの曲で片思いのサルが・・・・」
「あ、あのボビーさん。お話の途中で悪いんですけど」とナノが言い。
「今日のギャラを今いただきたいんですけど。」とシカが言った。
「まぁ野暮ねぇ。お金の話なんかして。でもいいわ、はいこれ。」
そう言うとボビーは厚めの封筒を取り出してシカに手渡した。
「でも次のステージすっぽかしちゃイヤよ。」
「はい。それはもう気合を入れて歌います。」
答えるシカの耳元でナノがささやいた。
「シカちゃん。レントさんに殴られた人、倒れたまま動かない。」
見るとその男以外にも2人倒れているのが見えた。
「ナノ、一旦店を出るよ!」
「あいさー!」
言うが早いか2人はギターを抱えて店から飛び出した。




