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第六章 邂逅の獣 18

 エリクシアが無我夢中で差し出された臓物を喰らい、咀嚼した。

肝臓の最後の肉片を飲み込み、手で口を拭い立ち上がった途端に倒れて痙攣し始めた。


《どうしたエリクシア!悪魔の肝なんて喰っちゃいけなかったのか?》


 レントの言葉に返事を返す事すら出来ずに身体を震わせながら地面をのたうち回った。全身を覆う白く美しい毛が抜け落ち、岩の塊のような体が縮んでいった。荒い息をしながら這い進む手から鈎のような爪が剥がれ落ちて人の手へと変貌していった。


「ほう、私の肝を喰らって変貌を遂げただけの事はあるな。仲々の美男子ではないか」

「ぐっぐふっ、あ・・・ありがとうございます」


 よろよろと立ち上がったエリクシアに先程までの面影は微塵も残ってはいなかった。

透き通るような白く強靭な身体、端整な顔に野生の光を湛えた目、流れるような銀色の髪。エリクシアとは似ても似つかぬ全く別の生き物と言っていい。


「剣は持てるか?」

「はい、この手ならば掴んだ剣を再び離す事は無いでしょう」

「剣と魔法の扱いは大丈夫か?」

「はい、トリトン様より授かった知恵で魔法も剣も自在に操れます。アマイモモ様のおかげで身体も軽く、力がみなぎっております」

「君は2度エイボンに見逃された。それを不名誉な事と捉えるのもそうだが、心しておくべきは3度目は無いと言う事だ」

「はい、心得ております」

「・・・そうか、ならば良い。行って君の為すべき事を為したまえ」

「は、・・・ところでアマイモモ様。我の為に命を落とす事になってしまい申し訳・・・」

「そういうのはいいから早く行きたまえ」

「はっ、・・・では」


 エリクシアはそう言うと踵を返してエイボンの飛び去った方角へと飛んだ。

心配そうな顔で見送るアマイモモの横に影が差した。


「アマイモモ様、あなたがこんなに甘い方だとは思いませんでしたよ」

「そうかね?スミス君にももう少し甘く接するべきだったかな?」

「いえいえお気になさらず。所でアマイモモ様」

「・・・なんだ?」

「肝を抜かれて随分と弱ってますね。ひと目見てわかるぐらい顔色も悪い」

「ふん、大いなる計画の大事な布石だと思えばいい。ただ私は回復するまでに500年ほど休眠しそうだな」

「へええ、500年ですか・・・今なら序列替え出来そうですねぇ」

「・・・3ケタ序列が思い上がった口を利いたものだな。ん?スミス?」


 言いながらアマイモモが人差し指をスミスの胸元に当てた。

そのまま指を根元まで差し込み、下におろした。無言のまま手をねじ込むと心臓を掴み取ってスミスの目の前に出した。心臓の鼓動が脈打っているのが見える。


「い、いやだなぁ。本気にしないで下さいよ・・・」

「悪魔10指に名を連ねるこの私に対する態度と言うものがわからないらしいな」

「あ・・・あ・・・すみません!アマイモモ様、お許し下さい!」

「謝る事は無い。心臓を握り潰されたってスミス君ならせいぜい5000年ほど眠りに就くだけの話だ。もっと自分に誇りを持って生きるべきではないかな?」

「わ、私は・・・私にはまだここでしなくてはいけない事があるのです・・・」

「それは奇遇だ。実は私もここでしなくてはいけない事があったのだよ」

「お、・・・お許しを・・・アマイモモ様・・・」


 冷たい目でスミスを見つめたままアマイモモがその心臓を身体の中に戻した。

安堵の表情を浮かべるスミスの耳元でそっと囁いた。








「・・・命拾いをしたなスミス」

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