第六章 邂逅の獣 17
エイボンが剣を振り上げ、エリクシアは死を覚悟した。だが、エイボンは剣を振り降ろす事無く鞘に収めると再びフレンダー王を追って飛び去った。
呆然と座り込んだままのエリクシアががっくりとうなだれた。
《いいようにやられたな。殺す価値も無いと看做されたか》
《我とあやつとでは魔力も戦闘力も違いすぎる》
《と言うかもうボロボロじゃねぇか》
《うむ、・・・残念だがここまでか》
《・・・いや、そうでもないぞ。お前次第だがな》
《何か策でもあるのか?》
《エリクシア、お前はどこの部位を食べても能力を吸収できるのか?》
《どこでも、と言うとその通りだが1番確実に短時間で能力を吸収するなら肝、肝臓だな》
《なるほど、肝臓ね・・・》
《レント、一体何を考えているんだ?》
《良い事さ、あいつに勝つ為に必要な能力を手に入れるぞ》
「エリクシア、気は済んだかね?」
レントと会話している最中にアマイモモが話しかけてきた。
戦いには介入できないが身の安全を確保しつつアスタクリスの元へ送り届けようと提案するアマイモモの言葉を遮ってエリクシアが言った。
「アマイモモ殿、あなたは直接的な介入、干渉をしてはいけない立場なんですよね?」
「ああ・・・その通りだが?」
「・・・ではご自身が不幸に見舞われ、間接的に介入してしまうのは仕方ないとお思いですか?」
「何やら穏やかじゃないな。現世に実体化していると言っても私をどうにか出来る者などそうは居ないが・・・いったいどう言う意味かな?」
「例えば・・・魔力と体力を回復させる為に今ここで我に襲われて喰われるとか」
アマイモモの顔に緊張が走った。
「エリクシア、君は人を喰う事を禁忌としていると聞いているが違うのかね?」
「だがあなたは人ではない。悪魔だ」
「・・・そうか、レントの考えそうな事だ。だがよく聞け、魔力や闇の力と言うのは魂に染み込むのだ。例え今の戦いに勝つ為だとしてもそんな事をしたら生まれ変わった魂にも私のまりょ・・・いや、待て」
アマイモモが喋るのをやめて考え込んだ。やがてその顔に悪魔じみた微笑みを浮かべて叫んだ。
「そうか!そう言う事だったのか!ククク、なるほど。始まりは私だったのか!!」
アマイモモが笑いながら自らの手を体に差し込むと腹部から内蔵を引きずり出した。
「今のお前に私を倒して喰らう力など無いのを承知で喰われてやろう。だが心して食えよ。悪魔に行った仕打ちはいずれ自分自身に返ってくる事を忘れるな」
重大な過失でもしてしまったかのようにエリクシアがためらった。
半ば強引に進められた形であれ、本当に悪魔の肝臓など食べても良い物なのか?
アマイモモから発せられる恐ろしいほどの重圧と、判断の正誤に対する自信のなさに戸惑うエリクシアをレントが怒鳴りつけた。
《モタモタしてねぇで早く喰え!エイボンを叩きのめしに行くぞ!》




