第六章 邂逅の獣 15
今回更新分で少しの間お休みを頂くことになりそうです。
王宮前に引き出されたレントたちの目の前に轟天号がその漆黒の船体を横たえていた。タラップの下からは真紅の絨毯が真っ直ぐに王宮へと伸び、その両脇には軍服や鎧に身を固めたエイボンの家臣が居並んでいる。
タラップを降りるエイボンの顔を見たレントが目を疑った。そっくりなのである。かつて腕を斬り飛ばし、その命を断ち、且つその魂を討とうとした魔法使いに。
《あいつ・・・アモンじゃないか!》
《アモン?いやあいつはそんな名前ではない、エイボンだ》
2人の会話が聞こえたかのように悪魔アマイモモが囁いた。
「エリクシア、レント君はエイボンを見て驚いているんじゃないのか?」
「ええ、エイボンの事をアモンだと言っています」
「そうだろう。実際アモンはエイボンの生まれ変わりだからな。君とレント君のようなものだ」
アモンがエイボンの生まれ変わりだと言うのならば、エリクシアもまた自分と同じようにエイボンと戦う運命なのではないか?だとすればその時自分には何が出来るのだろうかとレントは思った。
壇上にはティーワラー博士とルクレが立ち、エイボンの到着を待っていた。
洗脳されているであろう民衆と家臣たちの拍手と歓声の中、ゆっくりとエイボンが壇上に上がった。
ティーワラーはにこやかにエイボンと握手を交わすと宝冠を外すように促した。
「吾輩は宝冠を外すつもりは無い」
「何を仰っしゃいますかエイボン様。前王からの王冠を戴かなくてはなりませんのに、そのような宝冠を身に付けるべきではありません」
しぶしぶながら宝冠を外すとルクレがそれを受け取り、騎士の1人に壇の外へと下げさせた。
「さてお集まりの皆様、それでは本日これより王権移譲の儀式を執り行います。現国王フレンダー様、こちらにおいで下さい」
立ち上がったフレンダー王が憔悴しきった顔でゆっくりと歩き出した。
目は落ち窪み、クマが色濃く顔に現れていた。
「クレープよ、フレンダー王に宣誓文を渡しなさい」
ルクレは革で装丁された金箔押しの公約書と、金具飾りの付いた革手袋をフレンダー王に手渡した。
「さぁフレンダー王、まずは手袋を嵌めて下され。そうそう、そして金具を締めて下され」
「これで良いのか?」
「はい、それではこれを正確に一字一句正しく声に出してお読み下さい。なぜならばこれは【公式な場での王ご自身の宣誓】であるからです」
「わかった」
フレンダー王はそう答えると公約書を開き、大きな声で読み上げた。
何ページにも渡る王家の歴史と伝統を語り、王権移譲の意を読み上げる。
「力至らず我が国民の糧を乏しくせし我が治世を悔い、そして国王の座を明け渡す事に伴い・・・」
と、ページをめくる手が一瞬止まった。そしてその手が小刻みに震えだした。
ティーワラー博士がにやりと笑うと震える手をしっかりと握り締めた。
「フレンダー王、早く続きをお読み上げ下さい」
「・・・国法3条の11項に反逆者は処断する旨の加筆を行った事を宣言する。・・・反逆の首謀者エイボンとその仲間を全て捕えよ!」




