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第六章 邂逅の獣 10

 フレンダー王にとって状況はかなり絶望的であった。

王の思惑に反し、エイボンは抜かりない手回しによって国内のほぼ全ての施設を制圧していた。

閉鎖された鮮魚加工工場をアジトとして巻き返しを図る作戦を立てるフレンダー王とブライ王子、エリクシアをよそに、1人エリクシオンだけが数十人もの女性に囲まれてハーレムを形成していた。


「まったくこの色男だけはどうにかならんものかな」

「我の兄弟を悪く言わんでくれ。それにそのおかげで情報収集が出来ているのだからな」

「しかしエイボンは本当に抜かりがないな。主要な省庁や施設は完全に掌握している」

「確かに。地図を見る限りほぼ全てが制圧されているな」

「何よりも致命的なのは民衆扇動の為に催眠装置がエイボンの手によって王宮より盗み出された事だ」


 エリクシアの頭の中でレントがハッと思い当たる事があった。

ネスカリカの地下牢で餓死したと言う禿げの小男、ピサロの被っていた宝冠と恐らく同じ物なのだろう。

だとすれば民衆を扇動するなど到底無理だし、それに現状で民衆を動かしても虐殺されるだけだろう。


「これでは私は他国に亡命するしか生き残る道が無さそうだ」

「なぁに、ほぼと言っただろう。完全にすべてが制圧された訳ではない」

「言葉遊びか?」

「いや、この地図をよく見てみろ。この兵器開発研究所、ここはまだ落ちては居らん」

「ふむ、確かに・・・だがそれがどうしたのだ?」

「王よ、ここは本来ならば宮殿や法院と同じく真っ先に掌握しなくてはいけない施設だ。それが陥落していないと言う事はここにエイボンに対する脅威があるということだ」

「確かに、言われてみれば確かにその通りだ!・・・誰かここの状況を知っている者は居らぬか?」


 フレンダー王の問いかけにエリクシオンの傍に居る女性が声を上げた。


「私、そこの所員です」

「なんと!では知っている事を教えてくれ」

「はい、そこは所長のティーワラー博士が機械兵器による攻撃の無効プログラムを展開しています。そして周囲には無力化電磁波が張り巡らされ、通信やレーダーのジャミングも施されています」

「そうか。人も機械も攻撃出来ないと言う訳か」

「そうです。それに高層防衛壁が立っていますから忍び込む事もほぼ不可能です」


 エリクシアがそのやりとりを聞きながらじっと考えていた。

とても数日前まで口も利けなかったとは思えない程に目まぐるしく頭が回転している。


「あなた自身が研究所に入る方法はあるのですか?」

「あ、はい。個別に渡された通信機を持っています。これで連絡を取り合えます」


 そう言って女性はモニターの付いた円盤型の通信機をテーブルの上に置いた。


「フレンダー王、方向性が定まりましたね。希望があるとすればここしかない」

「そうだな。血路を切り開いてでもこの兵器開発研究所へ行くべきだろう」

「そうと決まれば早い方が良い。まごまごしているとエイボンとティーワラー博士との間で取り引きや和解が成立してしまうかも知れない」


 そう言って通信機を女性の前に押しやった。


「まずはあなたから連絡を取って、王がここに居る事を伝えて欲しい。お願い出来ますか?」


 一瞬ためらった女性がエリクシオンの方を振り向いた。

不安そうな、懇願するような目をしたエリクシオンにニッコリと微笑みかけると意を決したように通信機を手に取った。


「私やります。あの方の為に少しでも力になりたいので!」


 半ば呆れ顔の王にエリクシアがやれやれといった顔をした。






「だから言ったでしょう。我が兄弟は頼りになるのです」

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