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第六章 邂逅の獣 1

 レントの意に反して扉の先は薄暗い地下道のような回廊だった。

ジョンに促されるまま水の滴る音を聞きながらしばらく進むと上り階段へと差し掛かった。


「レントさん、この階段を上がるとあなたが行くべき所へ出ます。ここから先はあなた1人でどうぞ」

「どこに向かうのか何をすればいいのか分からないんだが・・・」

「私にも過去であると言う事ぐらいしか分かりません。ただ、あなたがどう行動しても制限を加えないべきだという判断をしました。これは滅多にない事です」

「過去!ますます何をすれば良いのか分からないし元の時代に戻れるのかも分からないな」

「為すべき事を為せば自然と元の時代へと戻れる筈です。その時は恐らく私がまた来る事になると思います」

「為すべき事・・・か。それにしても筈ですとか恐らくとか曖昧な気がするなぁ」

「仕方ないですね。いつかは戻るけれど、その時期や方法はそれぞれなので」

「なるほど、そういう物なのか」

「ついでに言うと本来私たちは過去を変えません。既に起こった出来事に干渉する事は未来を変える事ですから」

「まぁそうですよね」

「私たちの判断は大いなる意思によって決定付けられています。するべきでない判断をした時はすぐにそれと解りますし、無理にその判断を押し通そうとすれば精神への苦痛を伴います」

「今回の件に関しては精神への苦痛を伴う事が無いと?」

「ええ、その通りです。つまりこれは本来あるべき未来に対しての修正、もしくは変えるべき未来の模索なのでしょう」


 アマイモモが言っていた不在者の代理人、という言葉がレントの頭をかすめた。

なるようにしかならないし、何ら責任を持つ物でもないが愉快な事ではないだろう。


「エリクシアが何者なのか、アクタクリスとどう関わりがあったのか、そしてそれが僕にとってどんな意味を持つのか、と言う事なんだろうな・・・」

「そうですね。恐らくそういう事なのでしょう」


 階段を見上げたレントと握手を交わすとジョンが親しみを込めて言った。


「それではまたお会いしましょう。大丈夫、必ず迎えに行きます」

「そこは確定なのかな?」

「私の本能が確信しています。そこだけはご安心下さい」


 ジョンの言葉に頷くとレントは手すりに掴まりながら狭く薄暗い階段を1歩々々上がった。

30分ほど上がった先にぼんやりと明かりが見えた。扉の隙間から陽の光が差し込んでいるようだ。

錆び付いたドアを開けて1歩前に出たレントは眩しさに目の前が真っ白になった。

手をかざして日差しを遮る。目が慣れたレントの前には一面の青空と海が広がっていた。

海の真ん中にポツンと置かれた防波堤の上に立ち尽くす。見渡す限り周囲には陸地も船も見えない。

数歩進んだレントの耳にパリンと言う音が響き、それと共に体全体に軽い衝撃が走った。

特に痛みは無いが、自分の体を見たレントがギョッとした。

斬鉄牙を身に帯びてないどころか素っ裸になっている。

周囲に落としたのかと振り返った時にはドアも消え失せていた。




「こりゃまいったな・・・」


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