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第六章 栄誉無き軍神 8

 青い扉を開けたジョンが目でレントを促した。

1歩踏み出しかけたレントが立ち止まってアクタクリスを見つめた。


「宣言するよ。もしも君がこの先何か人の害になるような事をして、その為にミクラスワルツや君を破壊するような動きがあっても僕は関わらない」

「まぁ、それはどうして?」

「わからない。わからないがそう心に決めた」

「じゃあすくなくとも私があなたに殺される心配はしなくていいわね」

「そういう事だ。だが逆に君を守る事も出来ない」

「それだけでも充分よ。じゃあ私からも言っておくわ」

「何をだ?」

「今から私は自分だけの王国を作るために世界の国々を相手に戦います。そしてこのミクラスワルツが破壊される事など絶対にありえません」

「自信たっぷりだな。だがもし破壊されたらどうする?」

「もしもこのミクラスワルツが破壊されたとしても私が生きてる限りミクラスワルツは再生されます」


 アスタクリスがそう言って服をはだけると、胸の中央にコアと同じ物が埋め込まれていた。


「これは光の谷の祭壇で台座に乗っていた物です。分子レベルにまで分解されたミクラスワルツを構築させるために私が鍵となる必要があったから埋め込んだわ」

「君もこのミクラスワルツの1部、と言う事か?」

「少し違うわ。ミクラスワルツのコアは151のピースで構築されてて多少損傷しても互いに補完し合うの」

「だったら君が居なくても再生出来るって事じゃないか」

「多少って言ったでしょ。少なくとも連携できる無傷のピースが最低でも40以上無いと再生は出来ないわ」

「それなら君が居ても無理じゃないのか?」

「私に埋め込まれているコアは152番目のピース、全てのピースを代用し再構築できる唯一のピースなの。ヘリキシウム鋼とアルム鋼さえあれば何度でも再生出来るわ」


 レントは天を仰いで深くため息をついた。


「・・・なぜだ?なぜそこまで僕に話すんだ?」

「あなたがエリクシアだから。絶対に裏切らないし裏切られても後悔しない相手だからよ」

「どうも僕は余計なことを聞き過ぎたみたいだな。・・・なぁ、どうしても戦うのか?」

「戦うわ。もしあなたが私と同じ立場だったら何もなかった事にして朽ちるまで生きられる?」

「いや・・・戦うだろうな。だが僕の目には君が滅びたがってるようにしか見えないんだ」

「たとえたった一度でも戦って滅べるのなら本望よ。もっとも私を滅ぼす事が出来る者が居ればだけど」


 その可能性を持つ者が居る、とレントは口に出す事はしなかった。

ルクレたちとアクタクリスの戦いに中立であるべきだと決めた以上、よけいな情報を双方に与えるべきではない。


「次に会う時にはあなたを世界の王にして差し上げます」

「そんな物はいらない」

「では何か望む物があれば何でも差し上げますわ」

「僕が望むものは、あなたが僕に殺してくれと言わない事だ。あなたがどんなに願っても僕はその願いを叶えるつもりは無い」

「ふふふ、やっぱりあなたはエリクシアですねぇ」


 嬉しそうに笑うアクタクリスがジョンと青い扉を横目に見ながらレントを促した。


「そろそろお行きなさいエリクシア。次に会う日を楽しみにしてるわよ」

「お互い生きていれば、また会う日もあるでしょう」


 互いに見つめ合い、その視線がフッと外れたタイミングでジョンが声をかけた。


「さぁ、そろそろ行きましょうかレントさん」


 ジョンが開けた扉に入りながらレントがちらりとアクタクリスを見つめた。

すでにアクタクリスの目にはレントは映っていなかった。戦いへの渇望が炎となって宿っている。

レントは自分に言い聞かせるように小さくつぶやいた。






「・・・そう、お互い生きていれば」

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