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第六章 栄誉無き軍神 4

 轟音を立てて槍形状のオーヴァルブレードを回していたレントだったが、夢幻号から大声を上げて走って来るバーリーを見てその回転を止めた。


「おお、バーリー僧兵長が来られたぞ!」

「僧兵長が来たからにはこんな小僧になど負けんぞ!」


 色めき立った僧兵たちが再び剣を構えてレント目掛けて襲いかかった。


「やめろーー!お前ら殺されるぞ!!」


 ギョッとして動きを止めた僧兵たちを、レントの深い闇のような瞳が残忍な光を帯びて見据えていた。

今動いたら問答無用に斬り捨てられる。その直感と本能が僧兵たちの動きを止め、震え上がらせた。

そんな中、バーリーの声も耳に入らないほど昂ぶり殺意に満ちた5人の僧兵が勢いのままにレントに襲いかかった。

だが5人が5人ともオーヴァルブレードを振りかぶったまま、打ち下ろす間も無くレントの横薙ぎの斬撃に無残にも斬り刻まれた。

倒れ込むようにバーリーが両手をついてレントに平伏し、周囲を驚かせた。


「師匠!お願いです。身の程知らずのこの者たちをどうかご容赦下さい!」


 冷ややかな目でバーリーを見下ろすレントとは対照的に僧兵や神官たちが不平を言い始めた。


「バーリー僧兵長、これは一体どういうことだ?聖職者でもない者を師匠と敬うとは何事だ!」

「僧兵長、立って戦って下さい。我らの仲間が10人以上もこの者に斬り殺されてるんです」

「・・・まれ」

「うん?何だね?僧兵長?」

「黙れって言ってんだ、この馬鹿どもが!!」

「な・・・?そ、僧兵長?」

「身の程をわきまえろ、そして我が師に平伏せよ!」


 その言葉にまずガブリエルが従いレントに平伏した。

それを見た僧兵と神官たちが慌ててその場でレントに向かって両手をついた。

憮然としたまま数人の大神官がレントを睨みつける。


「ガブリエルと同じ法衣を着ているところを見るとお前らも聖堂大神官なんだな?」

「だったら何だと言うのだ小僧?」

「お前たちの中でピサロの横暴に加担した者、及び発掘されたアスタクリスを辱めた事を知りながら知らぬ顔をしていた者は追放とする。そしてもしもの話だが、もしそのピサロの行為に加担した者が居た場合は斬首だ」

「斬首だと?いったい何の権限があってお前がそんな勝手な事を言うのだ?」


 少し驚いた顔をしたレントが怒りをあらわにして口を開いた。


「権限じゃねえよ。オレがオレの意思でオレ自身の命を代償にして言ってるんだ。気に入らなければお前の持っている権限でオレの命を取り立ててみろ」

「フン、大層な物言いだな。高々機械人形を弄んだぐらいでいきり立つとは幼いにも程があ・・・」


 皆まで聞かずにレントが斬鉄牙を抜き打ちに飛ばした。

2本の剣は聖堂大神官の顔と首を斬り飛ばし、そのまま100メートル程も離れた大神殿の外壁に大きな音を立てて突き刺さった。

手を付いたまま見ていた者たちがカタカタと震え出し、失禁する者まで居た。


「チッ、怒りで狙いが狂った。顔を斬ったら首が晒せなくなっちまう」


 不機嫌さを隠そうともせずにレントが両手を広げた。


「斬鉄牙よ、我が手に戻れ!」


 ボコリと壁のレンガが崩れ、風切り音をさせて斬鉄牙がレント元へと飛んで来た。

剣を鞘に収めながらレントがゆっくりと周囲を見渡す。

その様子を見ていたハイネルドとマルコスが頷き合うとサンドラやルクレたちを伴ってレントの元へと向かった。周囲では神官や僧兵たちの体の震えで鎧や身装具がカタカタと鳴り響いている。


「いや、震えるのも仕方が無ぇよなぁ。さぞかし怖かろうよ」

「これはさすがに気の毒になってきますね」

「だなぁ」


 両手をついて平伏している兵や神官を避けながらレントのそばまで行ったハイネルドが後ろを向いた。


「おいマルコス、何で来ないんだ?」

「レント様の殺気が凄すぎて、これ以上近づけません」

「あー、わかる。それわかるわ」

「王様は怖くないんですか?」

「全然平気。怖いって言ったってせいぜい死ぬだけの話だろう」


 サンドラもレントのそばに立って事も無げに言い放った。







「そう、それだけの話よ。それに私、レントに対しては根源的な恐怖は克服したわ」

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