第六章 栄誉無き軍神 3
いくらサンドラが確信を持って言ったとしても、バーリーにはとても信じられない事であった。
ネスカリカの僧兵部隊の中でも殺戮のみに特化した異形の戦闘集団である。
「いや姐さん、あいつら1人や2人ならともかく師匠がいくら強いといっても50人からの集団相手じゃヤバイですよ」
「弟子のお前が師匠の強さを疑うのか?まぁ黙って見ていろ」
サンドラ自身、以前オーヴァルブレードでの戦闘を見た時にレントが見せた余裕に興味があった。
戦っても負けない策をレントが考えついたであろう事も感じていた。
斬り死にする可能性はあるが、止めても止まる男ではない。もしもの時は1人でも多く道連れにして自分も死ぬまで斬り合えば良い。
「いいねぇ、殺す気満々の突進をされるのは久しぶりだ。こっちも遠慮なくやれるってもんだ」
レントは足元の手頃な石を拾うと先頭を走る兵に向かって思いっきり投げつけた。
重さと速さに浮遊掌の爆発的なスピードを乗せて放った石は、とっさにガードしたオーヴァルブレードを素通りして兵士の顔に直撃した。まるで顔が破裂したように潰れ、血漿を撒き散らして倒れる。誰が見てもすでに息絶えているのが分かった。即死である。
「姐さん、今のはいったい?」
「見た通りだ。起動させているオーヴァルブレードは飛び道具に弱い」
怯む事なく突進してくる兵団を迎え撃つべくレントが斬鉄牙を抜き放った。
踏み込むと同時にオーヴァルブレードの鍔元へと斬鉄牙を叩き込む。無機物を素通りさせるのは刃のみで機械装置の部分は素通りなどしない。そこにアルム鋼の刃を叩き込まれたらひとたまりもなく粉砕されてしまう。
瞬く間に5本ほどのオーヴァルブレードを破壊すると後退して距離を取った。
「ここまでは小手調べ、なのだろうな。見ていろ、恐らくここからレントの対オーヴァルブレードの戦いが始まる」
「だってまだ40人以上居ますよ?柄や鍔元を狙って破壊するだけで充分じゃないんですか?」
「私もそう思う。正直こんなやり方でオーヴァルブレードを破壊させるという発想自体に驚いている」
「あー!姐さん!師匠が剣を鞘に収めてしまいました!」
両手を広げて太い息を吐き正面を見据えると、レントが自ら兵団の中へと飛び込んでいった。
振り下ろされた剣を半身の体勢で避けながら掌底と裏拳で弾き飛ばす。横薙ぎに振られた剣を体を逸らしながら蹴り上げ、飛び乗り躱していく。
「そうか!オーヴァルブレードは例外なく身幅が広い。刃の部分さえ躱せば斬られる事は無い。そして幅の広い刀身へと打撃と誘導を繰り出す。だが・・・理屈と実践で出来るのとは別物だ」
「し、師匠・・・、すげぇ!」
「流派に剣の身取りと言う技はある。あるが40人からを相手にして出す技ではない」
剣を逸らされてバランスを失った兵、持っていた剣を弾き飛ばされた兵が次々とレントの徒手打撃で倒されていった。
「・・・ここからだな」
「え?な、何がですか?」
「ここからオーヴァルブレードの本来の戦い方を死を以て教える。レントはそう言う人なんだ」
「本来の戦い方?」
「幅広の剣を有効に使うなら風車のように高速回転させるか、または二刀で躱しも逸らしも出来ないように波状攻撃を仕掛けるか。どちらにしてもあの者たちの命は無い」
「そ、そんな・・・!」
「見ろ。レントが前後に刃の付いた槍状のオーヴァルブレードを持った。竜巻のように駆け抜けた後には死体しか残らないだろう」
サンドラの言葉を最後まで聞かずにバーリーがレントたちの所へと駆け出した。
「まてまてまてーーー!師匠ーーー!そいつらを殺さないで下さーーーい!!」




