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第六章 巨人の神殿 8

 飛翔し、神殿に近付くに連れ全貌があらわになってきた。

山の頂上には太陽の光を反射し、ギラギラと銀色に光る巨大な球体が浮かんでいた。

向かおうとしたレントの視界の端に、神殿の入口付近で何やら小競り合いが起こっているのが見えた。


「まずはこっちが先だな」


 そうつぶやき降下してみると人型の機械と僧兵たちが戦闘を繰り広げていた。

数は多くないが巨人族の若者たちも僧兵と共に戦っている。手近に居た機械を抜き打ちの斬鉄牙で斬り飛ばすと僧兵の1人に声をかけた。


「いったい何があった?」

「よくは分からない。だが神官たちが奥に消えて1時間ほどしたらこいつらが出てきて人を襲い始めたんだ」

「奥って、神殿か?」

「そうだ。俺たちが食い止めてるあいだにとにかく1人でも多く避難させないと・・・」

「なるほどな、理由はともかくそれが最優先事項だな」


 斬鉄牙を構えたレントの背後で恐怖に叫ぶ声がした。


「こいつら壊しても壊しても再生してやがる!キリがないぞ!」

「焦るな。むやみに叫ぶと周りも恐慌状態になるぞ」

「だ、だってよ・・・」


 レントは答える代わりに機械を横一文字に斬り裂いた。

下半分が鉄滓のように腐食するのと対照的に上部が新たな部品を再構築して行く。更にそれを縦に両断、それをまた半分に斬る。


「あったぞ、見ろ。これだ!」


 レントが手にしている機械部品を皆に掲げてみせた。

カチカチと金属音を鳴らす黒い球体、白い筋状の模様が入り、4箇所に突起物がある。


「この機械の弱点はこいつだ。上部右側にあるコイツを叩き壊すんだ」


 球体を握り潰すとその場に居た全員に指示を出した。


「鎧で武装した僧兵は入口を固めろ、他の者は残存機械の殲滅、それ以外の者は避難活動だ。女子供を優先して飛空挺に乗せろ」


 見知らぬ者の突然の命令に戸惑う僧兵たちがざわついている中でレントが離れた所で機械と戦っている僧兵を怒鳴りつけた。


「モズクス!貴様オレの命令が聞けんのか!」

「この非常時に俺を気安く呼ぶぶぶぶぶ・・・ななな、、、なんであなた様が?」

「いいから早くこいつらに指示に従うように言え。俺の命令はバーリーや神官長の命令と思え!」

「は、はいぃぃぃぃ!!お、お前たち、何をしている。早くこの方の命令通り動け!」


 戸惑っていた僧兵たちだったが、一旦行動を起こすと、その動きは素早かった。

係留していた飛空挺を次々と安全地帯へと出発させ、残った僧兵も的確に機械を破壊させていった。


「師匠ーーーー!ご無事ですか?」


 レントがその声に振り向くとバーリーを先頭に旗下の僧兵30人ほどが機械を相手に奮戦し始めていた。


「こりゃまた嬉しい援軍だな」

「私も居るぞレント」

「おお、来てくれたかサンドラ!」


 起動装置を切ったオーヴァルブレードを風車のように振り回すサンドラに誰もが見惚れた。一瞬で細切りにした機械から黒い球体を取り出したサンドラが周囲で戦っている者たちに告げる。


「見ろ!これがこの機械の核だ、これを壊せ!ゴーレムと同じだと思えばいい。これさえ壊せば後はただの鉄屑だ!!」


 何の予備知識もなく的確に最適解を探し当てる。これこそが戦場で生き残る者の資質である。

頼もしそうに見つめるレントにサンドラが檄を飛ばした。


「レント、足元にも気を付けて。機械の形態は3種類だけど毒を持ってる可能性もあるわ」

「ありがとう、気を付けるよ」


 足元でのたうちまわっている機械を踏み潰してレントが嬉しそうに笑った。

周囲の機械をあらかた打ち壊したレントたちが神殿入口の僧兵に代わって奥へと突き進んだ。


「こんな山の中の神殿に遺物があるなんて思いもしなかったわ。殺人人形を思い出すわね」

「え?殺人人形?なにそれ?」

「え?ああ、何でもないわ。昔の事よ」


 話しながら機械を次々と破壊して行くサンドラにバーリーが目を見開いた。


「も、もしかしてあなたは、いえ、あなた様は殺人人形の脅威から我が国を救って下さった緋線の黒騎士様ではございませんか?」

「え?ええーと・・・いやいや、人違いだわ」

「そう言えばイリア村で緋線の入った黒い鎧を着ていたね」

「レ、レント!」

「おお!やはり!!再びお目にかかれて光栄に存じます!」

「そんなのはいいから戦いに集中しなさい」

「アバドンの化身と言われる戦士にも打ち勝ったあなた様が居るとは、こんなに心強い事はありません」

「・・・え?・・・アバドン?・・・僕?」

「あ、あはははは・・・な、何の事かしら?」

「いえいえご謙遜なさ・・・ぐふぉ!」


 レントには見えない角度でバーリーの脇腹に一撃を加えると、介抱するかのように体を支えた。

押し殺した声でバーリーの耳元で囁いたサンドラは鬼の形相であった。










「お前、これ以上言うと殺すぞ!」

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