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第六章 巨人の神殿 4

 尾根越えの街道をゆっくりと歩きながら、レントは生まれ育った谷の話や地元に伝わる逸話や伝説をサンドラに語っていた。


「それにしてもこの2日は優雅な旅だったなぁ」

「ホント、あの2人のくれた通行証の効果には驚いたわ。なんだか申し訳ないぐらいよ」

「僕としては焚き火と煮込みの旅を一緒にしたかったんだけど、こういうのも悪くないね」

「そうね。それはまた別の機会で楽しみましょう、これからはずっと一緒なんだから」


 急拵えの関所で通行証を見せながら歩いていると位の高そうな僧兵の1人に呼び止められた。


「お尋ね申す、お尋ね申す。このパイザ(通行証)はどちらで手に入れられたかお答え願いたい」

「ああ、これはガブリエルと言う神官とバーリーと言う僧兵から貰った物だ」

「なんと!なるほどあのお2人のパイザならば、この豪奢な造りにも合点が行き申す。しかしまたなぜあなた方が譲り受けたのか、その理由とあなた方の素性をお聞かせ願いたい」


 僧兵の言葉遣いは丁寧だが有無を言わせぬ威圧感と、狡猾さがあった。

不愉快ではあったが別段違法な行為をした訳でもない。

が、ありのままを答えようとしたレントを制してサンドラが進み出た。かすかな殺気を放っている。


「我らは密命を受けて行動し、その為の権限を与えられているが、それをお前は知りたいと言うのだな?」

「え、あ・・・いえ・・・」

「本来ならば呼び止めるだけでも咎を受ける覚悟が必要な筈だがどうなのだ?仮にお前が原因でなくとも、事が漏洩したら疑わしいと言う理由でお前はもちろん家族縁者に至るまで骸となるぞ」

「そそそ、そんな・・・!!」

「そこまで考えなかった・・・か?我らの任務に支障をきたす前に私がその首を斬り飛ばしてやろうか?」


 溜めや予備動作など無く、いきなりサンドラがオーヴァルブレードを抜き放った。

真っ白に輝く刀身に、安全措置の為の赤い発光線が無い。

初めて見るのなら分からないだろうが、ネスカリカの僧兵がその意味を知らない筈がなかった。布越しだろうと鎧越しだろうと当たれば刃が素通しで体を斬り刻むだろう。

オーヴァルブレードを見て真っ青になった僧兵が即座に膝をついて地面に頭を押し付けた。


「申し訳ございません、この通りです。勘弁して下さい」


 サンドラの言葉自体は全くの出まかせだったがレントはそれを正そうとは思わなかった。

口を利く、と言うのはそのぐらい覚悟をするべきなのだ。

そんな事よりもレントは懸念していた。この僧兵がどうせ斬れはしないだろうと高を括ったり何かを企らむ気配を感じたらサンドラは斬る。それはもう間違いなく、躊躇いなく斬り捨てる。

数々の戦地で戦い、それぞれの密命で動いてきた精霊の騎士なのだからそれが当然だ。


「お前の名前は?」

「わ、私はモズクスと申します」


 瞬間、慌ててレントがモズクスを怒鳴りつけた。


「バ、バカ!身分を明らかにしろ、早くしないとお前斬り殺されるぞ!」

「こ、ここここ、この関の責任を任されました第4僧兵隊長、モズクス・バイズです。何とぞ、何とぞ命ばかりはお助け下さい」


 サンドラが余計な真似をするなと言うようにレントを見やり、モズクスに言った。


「以後気を付けろ。次は無いぞ」

「は、はい。肝に銘じます。申し訳ございませんでした!」


 尚もジッとモズクスを見下ろしていたサンドラが気を取り直すようにオーヴァルブレードを鞘に収めた。

今までのやりとりとは打って変わってサンドラがレントに笑顔で言った。


「さ、それじゃぁ行きましょうか」

「う、うん。いや、はい」


 2人が何事もなかったかのように関所を後にすると、近くに居た僧兵たちが、まだ手と頭を地面についたままのモズクスに駆け寄った。


「モズクス隊長、大丈夫ですか?」

「大丈夫ではない。まだ・・・大丈夫ではない」

「・・・まだとはいったい?」








「あの方たちが見えなくなったら教えてくれ。見えなくなるまで・・・恐ろしくて顔を上げたくない」

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