第六章 巨人の神殿 3
空が白みがかった頃、早めの朝食を済ませてレントとサンドラは宿を出た。
「ねぇレント、やっぱり弟子にしてあげたら?あのバーリーさんって人、ちょっとかわいそうだわ」
「僕が弟子を取ったって僕と同じ事が誰にでも出来る訳じゃない。四帝流剣術を習うならむしろ僕じゃない方が良いんだ」
「それはまぁそうなんだけど、返事は明日するって言って姿を消すのは良くないわ」
「それもまた彼には修行のひとつだよ」
「まーたそんな屁理屈を言う」
と、話しながら歩くレントたちを呼び止める声がした。
「あれ?団長さんじゃないですか。こんな所でどうしたんです?」
「うわっヤバッ」
てっきりバーリーだと思って肩をすくめたレントが声の主を見て驚いた。
「・・・ガブリエル?久しぶりだなぁ。元気だったか?」
「あらレント、この神官さんとお知り合いなの?」
「ああ、例のロングスピア号を接収した時に乗り合わせてて操縦を教えてくれた神官だ」
「まぁ。さぞ大変だったでしょう?」
「いやいや、たいした事ではありませんよ。それより団長さん、どちらへ?」
「これから光の谷に向かうところだ」
「え?・・・光の谷ですか?」
「ああ、途中、巨人の神殿にも立ち寄ろうかと思って・・・どうかしたのか?」
ガブリエルが困った顔をしている事に気付いたレントが問いかけると、意外な答えが返ってきた。
「実は神官長、いえ、教皇猊下が巨人の神殿を視察に来る為に今は一般人は立ち入り禁止となっております」
「立ち入り禁止とは面倒だな。何か方法は無いのか?」
「ジェイン教徒ならば無条件で行けるのですが・・・」
「じゃあそれでいいよ。どうすればいい?」
「それが教徒の中でも正式に門下となってローブを着ている者でないと・・・」
「余分にローブは無いのか?」
「それが残念ながら・・・」
そう言いながらガブリエルはプラチナの土台に黄金でジェインのレリーフが施された手の平ほどの大きさの円盤を取り出した。
「私の持っている神官の通行証を差し上げるにしても、これ1つで2人は通れないのですよ」
「困ったな。まぁなんとかなるだろう」
「無理に押し通るのはやめておいた方が良いと思います」
話している後ろで宿屋のドアが乱暴に開けられてバーリーが飛び出してきた。
「師匠ーーーー!置いて行くなんてひどいじゃないですか!!」
「あ、ヤバ。話に夢中になってて完全に忘れてた」
「俺は師匠にどこまでも付いて・・・あれ?ガブリエルじゃねぇか。何やってんだ?」
「バーリー、君こそ何を?もしかして団長さんと知り合いなのか?」
「知り合いどころじゃねぇよ、師匠と弟子だ」
「師匠?弟子?君は相変わらず何を言ってるのか分からないな。まぁちょうどいい」
ガブリエルはかいつまんでバーリーに状況を説明した。
「なるほど、だったら俺の通行証も持って行って下さい。種類は違いますが2つともジェイン教徒に見せればどこでも通れますし道中の休息所で仮眠や食事も取れます」
確かに見比べると作りは同じだがガブリエルの円盤には青い宝玉が、バーリーの円盤には赤い宝玉が散り嵌められていた。
「あの、師匠。今回の視察が終わって落ち着いたら稽古をつけてもらいに行きますから。俺、今よりももっと強くなりたいんでお願いします」
困った顔をしたレントの背中をサンドラがドンと押した。
「・・・わかった。弟子にするかどうかはともかく稽古はつけてやる。今はそれで納得してくれ」
「し、師匠!ありがとうございます!!」
「いや、だからまだ師匠じゃねーっつってんだろ!」




