第六章 巨人の神殿 2
なんとも間の抜けた状態で、尚もレントに斬りかかろうとするキュプの兵にサンドラが問いかけた。
「あなたたち、もしかしてキュプ王国とファウンランドが3日前に和睦したのを知らないの?」
「知らぬ!そもそも和睦したからなんだと言うんだ?」
勢いで怒鳴った兵士だったが、場が静まり返ったのに気付いて不安そうな顔になった。
バツが悪そうにレントが言った。
「いや、あのさぁ。僕が言うのもどうかと思うんだけど、開戦の口火を切るつもりなのか?」
「な、なんでそんな・・・」
「キュプの兵として僕を殺すってのは軍事行動って事になるんだが」
「うぐ・・・が、・・・ぬぬぬ」
「まぁまぁ、聞いてみただけだ。その覚悟があるならやろうか」
「え・・・いや・・・」
兵士たちが返答に詰まっている所にバーリーが割って入った。
「レントさんの意見はもっとも至極。とは言えそれではあなた方も納得できないでしょう」
「それは、まぁ・・・」
「どうでしょう?見たところあなた方は10人ほど居られるが、代表としてどなたかが騎士として決闘を申し込むと言うのは?」
「ああ、それいいな。それなら僕が死んでも問題にならない」
「見たところレントさんは二刀流のようですが、公平を期する為に一刀で戦ってもらえますか?」
「ああ構わないよ」
「更に同じ剣を使用して頂たいのですがキュプの方から1本お貸し願えますか?」
ポンポンと話が進む中で急に剣を貸せと言われた兵士たちが不安そうな顔になった。
「ああ僕の剣を貸すからそれを使ってくれ」
そう言って無造作に斬鉄牙を抜き放って兵士たちのそばにあるテーブルに放った。
地響きと共にテーブルが砕け落ち、その場に居合わせた人々が驚きと恐怖に固まった。
バーリーが感動に打ち震えた表情で蒼黒く輝く剣をまじまじと見つめた。
「あ、あ、アルム鋼の剣だ・・・!」
「あ、・・・アルム鋼だと?」
「信じられん。アルム鋼で鍛えた剣が存在するなど・・・ましてそれを軽々と・・・」
ざわめきの中で、ハッとなったキュプの兵士たちが我先にと逃げ出した。
「あー、逃げちゃったか。まぁ無理もないなぁ」
憐れむようにつぶやいたレントにバーリーが言った。
「なぁレントさん。この剣、持ってみてもいいかね?」
「ん?ああ構わないよ」
「どれどれ、ん?んんんん・・・!!!ぬぅううう!!もうダメだぁ!」
バーリーが渾身の力を込めてもやっとほんの少し持ち上がっただけだった。
床に座り込んで息の上がったバーリーが少し満足げに笑った。
「斬鉄牙よ、我が手に戻れ」
レントがそう言うと放たれた矢のような速さで斬鉄牙がレントの手に戻った。
小枝でも扱うように軽々と振って鞘に戻すレントを見て、バーリーが驚嘆した。
「バーリー、まぁ座って飲み直そうか。おーい、ビール追加を頼む」
呆然としたまま座らされたバーリーの前にビールが差し出された。
「あ、ちょっと待って。これテーブル代。取っといてくれ」
「いえ、そんな・・・」
「この人が悪いんですから受け取って下さい」
「そ、そうですか?でははい。遠慮なく・・・」
「・・・・あれ?バーリー?どうした、飲まないのか?」
「バーリーさん?」
ハッとなったバーリーが出されたビールを一気に飲み干すとレントに向かって叫んだ。
「レントさん!俺を弟子にして下さい!!」
バーリーの顔にレントが盛大にビールを吹いた。




