第六章 戦乱の高嶺に咲く華 10
沿道に居る群衆に手を振りながら、ハイネルド小さな声でリンダに話しかけた。
「姿は見えないが、ずいぶんと殺気立ったやつらが居るな。肌がピリピリするぐらいだ」
「まず30は居るわね」
「もう少し、50といった所かな」
「弓でも危ういけど、同じ飛び道具でもおそらく古代兵器を用意してそうね」
「だな。だからこそヒカルたちに護衛も兼ねて馬車に同乗してもらったんだが・・・」
「あら?そう言えばリーダーのルクレが居ないじゃない」
「ああ、ルクレはマルコスと一緒に旗艦で待機してるよ」
「全員揃ってなくて大丈夫なの?」
「そこは心配いらないさ。ヒカル、グマ、ハルカ、ロク、不意の攻撃があるかも知れないが任せたぞ」
「ああ、オラたちに任せておけば安心だべ」
「んだ、王さまさ指1本あぶねぇ目に遭わせたりしねぇだよ」
「んだんだ、安心するべさ」
和気あいあいとした雰囲気で街道を進む中、1条の青い光が馬車に向かって放たれた。
身構えたハイネルドの目の前で、丸く小さなレンズの集合体のような物がその光を遮った。
「位置確認したべさ。へば反撃するだ」
言うなりグマが右腕を上に向けて伸ばす。生身のように見えるその腕に無数の亀裂が入り中心部から黒光りする銃口が飛び出した。
止める間も無く白く輝く閃光が放たれる。建物の1部が破壊され、瓦礫と共に古代兵器を携行した兵士がドサリと地面に落ちてきた。
「おいおい、いきなり撃ち殺すのは・・・」
「高熱線反応感知、攻撃するだ」
ハイネルドの言葉を遮ってロクがそう言うと床に両手をついた。背中から赤く光るガラスのような細長い筒が飛び出した。更にヒカルとハルカも攻撃態勢となった。
「敵総数46、高熱線反応への追尾を開始だべさ」
「レーダー展開、46個体すべてロックしたべ」
「情報干渉で26の武器を強制無力化したべさ」
「誘導追尾弾、発射だべ」
時間にすればほんの1~2分の出来事だった。
ハイネルドを密殺すべく集められた兵がことごとく撃ち落とされた。
あまりの出来事に民衆もパニックを起こすどころか、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「あーあ、・・・やりすぎだよまったく」
「半径2キロ圏内に高熱線反応は無ぇべさ」
「落ちた瓦礫で怪我した人も特に居ねぇだ」
「いやまぁそれは何よりなんだが・・・」
「まぁまぁハイネ、お披露目も兼ねてキュプの度肝を抜いたんだから良しとしましょうよ」
リンダに促されてまだ納得しかねるハイネルドが、ふと上を指さして言った。
「なぁ、誰かあの教会の鐘を鳴らす事って出来るか?」
「はぇ?出来るだどもどうしただ?鳴らして欲しいだか?」
「ああ、せっかくのパレードなんだから賑やかに鐘を鳴らしてくれ」
「よぉし、オラに任せるだ」
言うが早いかヒカルが手の甲から分厚く四角い金属板をスライドさせ、その手を鐘に向けた。
ふぅ、っと一息つくと鐘目がけて立て続けに5枚発射させた。
直後、大きな鐘の音が街中に響き渡った。
沿道に居た群衆がハイネルドとリンダ、そして青髪の娘たちに拍手と喝采を送った。
鐘に当たった後、横に逸れた金属板がすぐ横に居た猛禽の体を引き裂いた事に気付く者は居なかった。




