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第六章 戦乱の高嶺に咲く華 8

 近隣各国の代表あるいはその子息たちが晩餐会に集う中、イルケルが落ち着きなく報告を待っていた。

落ち着きが無いという点では招待客も同じだった。最強の大国であるキュプ王国の侵略を退けたばかりか壊滅状態にまで追い込んだハイネルド王。彼らはその王を見極めるために来ていると言っても過言ではない。

今夜の成り行き次第ではにこやかな顔をしながらキュプ王国に背を向けてファウンランド側に付く。

側近が耳元で囁き、イルケルが怪訝そうな顔をした。


「晩餐会に出席しない?」

「はい、なんでも出発した飛空艇がこちらへ来る途中で引き返し、同時に晩餐会への不参加の連絡が入ったそうです」

「ハイネルド王の飛空艇が引き返した・・・だと?」

「ハ、もしや暗殺計画が漏れたのやも知れません」

「フフフ、それならそれで良い。恐れをなして来れぬと言う事か。これで調印式にも出席しないとなればファウンランドの評価も地に落ちると言うものだ」

「明日の式典についての言及もありませんでした」

「所詮は殺す価値もない小者と言う事だな」

「イルケル王、もし明日ハイネルド王が来なければ元々の非が向こうにあると言う事も可能かと・・・」


 その時小さな揺れが起きた。来賓から微かなざわめきが広がったが火山の噴火から20日ほど経ち、心配するほどの揺れはここ数日起きていなかった。


「またか・・・重要拠点とは言えこう頻繁に地震が起こるのも考えものだな」

「かすかな揺れにございます。心配には及びますまい」


 囁きあうイルケルの横に大きく影が差した。気配に気付いて横を向くとネスカリカの神官がにこやかに手を差し伸べながらが立っていた。


「イルケル王におかれましてはご機嫌麗しゅう」

「おや、これはこれは神官殿。ピサロ教皇猊下はご一緒ではないのですか?」

「それがどうもお忙しいらしく出席できないとの事で私が代理で参りました」

「・・・いそが・・・しいですと?昨日はそのような事は言って無かったのだが・・・」

「いやいや、それが急に調べたい物があると言い出して西部の山岳地帯へ行ってしまわれまして」

「山岳地帯・・・ねぇ。どうもここ数日教皇猊下の様子がおかしいような気がしますな」

「イルケル王もそう思われますか。私どもも戸惑っておりまして、・・・まるで別人のような気さえ致しまする」


 別人と言う言葉で、またイルケルの背中に冷たいものが走った。

ピサロと面会した時に感じた彼の異質な心を思い出したのだ。気を取り直すようにイルケルが話題を変えた。


「そう言えば最近の遺物の発掘状況はいかがですか?何か面白い古代兵器などは出ませんか?」

「そう!それなんですよ。実は少し前に青い髪をした人間の女そっくりの遺物が発見されました」

「ほう?」

「手足が切断されて石柩のような所にガッチリと固定されておりました」

「それはまた、妙な物が見つかりましたな」

「もっと奇妙なのは金属を溶かして吸収し、手足を再生させた事ですな」

「手足を再生ですと?」

「さよう、しかも意味不明な言語を喋っておりましたが3日もすると我々の言葉を理解し、会話を始めたのには本当に驚きました」

「それは是非1度見てみたいものですな」

「ピサロ教皇猊下が痛く気に入っておりましたので、次に会う機会にはきっとご覧頂けると思います」

「それは楽しみですな」

「ああ、私とした事がつい長話をしてしまいました。これで失礼いたします。また明日お目にかかりましょう」


 一礼して立ち去る神官の後ろ姿を眺めながらもイルケルの胸騒ぎが収まらなかった。

まるで自分の知りえない何かが起こってる気がした。

この世にはまだまだ自分の知らない事がたくさんあると言う事だ。

だが、と思う。だが自分には永遠の時間がある。器さえ入れ替えれば良いのだ。


「イルケル王、何がそんなにおかしいのですか?」

「うん?なんだ、気が付いたら笑っておったわ」

「明日の事もございます。そろそろお休みになられてはいかがですか?」

「ふむ・・・そうだな」


 そう言いながら来客たちを見渡して側近に指示を出した。


「あの赤いドレスの貴婦人と、白いドレスの息女を寝所に連れて参れ」

「な・・!!そのような事をなさっては各国の反感を買いまするぞ」




「反感か。フフフ、いくら反感を持とうとも私に逆らえる者などここには1人たりとも居らぬわ」


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