第六章 戦乱の高嶺に咲く華 5
マルコスの報告を聞き終えて考え込むハイネルドにレントが問いかけた。
「ところでハイネ、率直な考えを聞かせて欲しいんだが、この遺物は世界のパワーバランスを秤ごとへし折ってしまう代物だって事はわかるよな。で、今後どうするつもりだ?」
「どうするって・・・何をだ?」
「公開するのか秘匿するのか、世界を征服侵略するのか抑止力として示すのかと言う事だ」
「お前はどう思う?」
「滅んだ原因は分からないが、ともかく古代文明の遺物を戦争に使うのはやめるべきだと思う。どんなしっぺ返しが来るか分からないからな」
「同感だ。抑止力としての1部の公開が望ましいだろうな。だがこんな目立つ物をどこに置くかって問題が・・・あ!だから城塞都市の割譲を求めるのか!」
「そういう事だ。あそこならこの船団を秘匿する事が可能だからな」
「だがキュプ王国側がそんな無茶な要求を飲むとは思えんぞ」
「それを飲ませるのが軍事力の差だ。その軍事力に物を言わせて布告無しの侵略をして来た奴らには要求では無く命令として告げれば良い。検討するとか寝ぼけた事を言ってるようなら目を覚ますようにするだけさ」
「相変わらず過激だな」
「過激なのはキュプ王国の方さ。だからこそ断固として要求を通すべきなんだ」
「表面上は要求を飲むかも知れないが・・・」
「それで充分だ。返事だけして動かなければどうなるか、身を以て知る事になる」
「なるほどな。今は国王もお前に屠られて国内はガタガタだ。戦略上テケシュ半島を手に出来るのであれば今後はキュプ王国の脅威にさらされる事も無くなるだろう」
「そう言えば新たな国王は決まったのか?」
「ああ、王には子供が居なかったんで、戦犯として幽閉されていたイルケルと言う王族の若者が王位に就いたらしい」
「イルケル、・・・あの逃亡後に帰国した若者か。オレはてっきりシューカが国の舵取りをする事になると思ってたよ」
「シューカは死んだよ。イルケルの命令で処刑されたらしい」
「なん・・・だと。いったいどうして?」
「オレにもわからん。単に勢力争いだったのかも知れんし何か複雑な事情があったのかも知れん。何かわかったら猟犬からの報告もあるかも知れんが所詮は他国の事情だからな」
「信じられない。あの有能で勇猛な男を処刑するとは・・・」
会話が途切れたその時、マルコスがハイネルドの前に進み出て言った。
「我が王、紹介が遅くなりましたがこの者たちにお目通りをお願いいたします」
「ん、ああ、すまなかった。さぁお嬢さん方、こちらにどうぞ」
「あ、えっと、オラは飛翔型爆雷戦艦隊の統括長で轟天号のナビゲーションアンドロイド、SI・ルクレつうだ。ふつつかもんだけんど、よろしくお願いしますだ」
「統括長?すると君がこの艦隊の総指揮官と言う事か?」
「総指揮官はマルコス提督だべさ。その上に王さまが居るだ」
「提督?マルコスが?」
「え、あ、いや、これはですね、一時的な措置と言いますか、えーと・・・」
「いやいや、いいじゃないか。マルコス、副司令と兼任でこの艦隊の提督を命じる。いいな」
「は、はい」
「さて、ルクレ、後ろのお嬢さん方も紹介してくれるかな?」
「あいさぁ、だば左から叢雲号ナビロイドのLO・グマ」
「グマだべ、王さまよろしくお願いしますだ」
「雷電号ナビロイドのYR・ハルカ」
「よろしくだべ、王さま」
「夢幻号ナビロイドのSH・ロク」
「やさしくして欲しいべ」
「双宮号ナビロイドのNM・ヒカル」
「じっと見られたら恥ずかしいべさ、王さま」
「ナビゲーションアンドロイドはオラも入れて全部で5人だべさ、王さま、これからよろしくお願いしますだ」
「こちらこそ、よろしく頼む」
「ところで王さま、1隻は王さまの専属艦になるつもりだけんども、この船以外の4隻の中でどれに乗りてぇだ?」
「うん?えーっと、そうだな・・・」
舷窓から外の4隻を眺めたハイネルドが1隻の船に目を止めた。
「あの一角獣の描かれた船に乗れるなら嬉しいんだが、どうだろう?」
「夢幻号でいいだか?だば王さまとレント様はロクと一緒に乗り換えてもらってオラたちと提督は別行動に入るだよ」
「別行動?」
「んだ。合意の調印が済み次第、テケシュ半島ば制圧するだ」




