第六章 戦乱の高嶺に咲く華 4
小高い丘に疾走する車の助手席で石のように固まっているハイネルドにドルテが声をかけた。
「さぁ、もうすぐ。あのてっぺんの木の所にレントがおるぞえ」
土煙を上げて木に衝突する間際にドルテは急ハンドルを切り、横滑りをさせながら車を停止させた。
待ち受けていたレントがドアを開けると尻餅をつくようにハイネルドが転がり落ちた。
「さぁて、じゃあ私は村に帰るとするかね。楽しいドライブだったよ、ハイネルド王」
そう言うとドルテはタイヤを軋ませてまた猛スピードで走り去っていった。
「大丈夫か?ハイネ」
「大丈夫かだと?せっかく食べたハムエッグが飛び出すかと思ったよ」
「ああ、すまんな。まぁ仕方なかったんだよ」
「何がどう仕方ないのか説明してもらおうか」
「んー、・・・猟犬」
「猟犬?」
「ああ、彼らに追尾されたくなかったのさ」
「なぜだ?彼らは忠実に働いてくれるじゃないか」
「ああ、主従関係ではなく金銭関係、利害関係でな。だからこそ見せたくない物もあるのさ」
「何を言いたいのか分からないが俺もお前に聞きたい事が山ほどある」
「そうだろうな。まぁ取り敢えず船の中で話そうか」
「船?こんな丘の上に船なんて・・・」
話している途中でハイネルドの前に階段が現れた。
階段の向こう側にはマルコスと緑髪の女性数人が立っている。
「目を凝らして見れば気が付くだろう?周囲に擬態してるが船の輪郭がかげろうのように揺れている」
言われたハイネルドが階段の周囲から目を凝らして遠景を眺めると、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「このカタチ、・・・知っているぞ。これはロングスピア号じゃないか!」
「正解。さすがハイネルド王、見識が広い」
「おま・・・お前・・・古代の遺物の中でも至宝と呼ばれている船を盗んだのか?中立国であるネスカリカに敵対する行為だぞ」
「まぁ心配すんなよ。話せば長くなるが取り敢えず船は返して来た。ともかく人目に付く前に中に入ろう」
レントはそう言うとハイネルドの背中を押して中へと入り込んだ。
すぐさま階段がせり上がり船体の入口が閉じられた。
「我が王よ、お待ちしておりました」
片膝をついて臣下の礼を行うマルクスとそれに倣う緑髪の5人の女性にハイネルドが目を丸くした。
「マルコス、いったいこれはどういう事なのか説明してもらおうか」
「ひとまず海上に移動しながら報告いたします。ルクレ、全艦海に移動せよ」
「了解だべさ、さぁ、おめぇだぢ、行ぐべさ」
「「「「おー、行ぐべさー」」」」
ルクレの指示に緑髪の4人が応じる。それと同時に船が急加速し出した。
舷窓から見える景色が恐ろしい速さで流れて行く中、ハイネルドはロングスピア号並に巨大な3隻の船が空中を並走しているのが見えた。
「な、・・・これは何だ?思考がついて行けない出来事が次々と起こるんだが」
「この船も女性たちもすべて古代の遺物だ。それだけの話だ」
「遺物?じゃあこの緑髪の女性は人間じゃないのか?」
「とてもそうは見えないが機械だ。ナビゲーションアンドロイドとか言うらしい」
「なんとも信じられんな。だが緑色の髪を持つ人間など聞いた事もない」
困惑するハイネルドにルクレが声をかけた。
「王さま、お茶の用意が出来てるだで向こうでゆっくり話すべさ」
「しかしまぁ動きといい表情といい、とても機械とは思えんな。それにしても君たちは何でまた北方の村娘みたいな話し方をするんだ?」
「オラが習得した言語の情報共有ばしたっけ、みんな訛ってしまっただよ」




