第六章 底抜けの馬鹿者たち 8
ルクレに促されるまま右舷側の小さなドアから艦の外に出ると2隻の間を繋ぐ橋が架けられていた。
「提督、早く来るべさ」
「あ、ああ。それにしても夢を見てるようだな」
「まったくだ。だがマルコスどうする?この船が2隻、いや、その他にも多数の船があるならクーデターを起こして国を乗っ取る事も可能だぞ?」
「穏やかじゃないですね。でもそうか・・・クーデターか・・・」
マルコスがそうつぶやくと間髪入れずにルクレが言った。
「ああ、それはダメだべさ。クーデターを起こしたら提督と言えども殺さねぇとなんねぇだ」
「こ、殺す?」
「んだ。オラはそう言う風にプログラムされてるだ。一番最初に登録する時に無所属って言ってれば別だけんども、もう遅いべさ」
「だ、そうですよ団長。変な夢を見なくて済んでホッとしました」
先を歩くルクレがドアの横にあるパネルに手をかざすと電子音と共にドアが開いた。
「ほう、中も寸分違いが見受けられないなぁ」
「取り敢えず返すにあたって航行機能以外は使えないようにしておきたいですね」
「だな、空飛んで水に潜って色を変えられて周囲の地図を表示して・・・と。ルクレ、それ以外には何か出来る事あるか?」
「自爆出来るだよ」
「え・・・練習艦なのに自爆機能あんのかよ。じゃあ今言った機能を使えなくして火薬も捨てろ。他には?」
「海水から飲料水を作ったり海洋生物から食料を作ったり、それから輸送兵の脱出用フロートと艦長用の緊急離脱ポッドがあるくらいだべか」
「水と食料作る機能も使えなくしてくれ、それと離脱ポッドって何だ?」
「そこの艦長席の後ろにある丸い蓋がそうだべ。そん中に入ってレバーば引いたら20キロぐらい飛んで逃げれるだ」
「じゃあまぁそれも使えなくするか」
「これは中に入った人が内側から蓋をロックしないといけねぇだで・・・あれ?内側からロックされてるだな。干からびた人間が入ってるとも思えねぇが使えねぇえから丁度いいべさ」
「脱出用フロートはさっき神官を船から出した時にも使ったから残しておくか」
「団長、船体に描かれている文字が若干違うんですがどうしますか?」
「ルクレ、船名の文字は変えられるか?」
「それはさすがに無理だべさ」
「無理か・・・まぁほとんど同じだから大丈夫だろう」
「轟天と梵天・・・似てますかねぇ?」
「大して変わらねぇし古代の遺物だから変わってても不思議じゃねぇって思うだろ」
「そんなモンですかねぇ?」
「そんなモンだよ。処置が終わったら状況を説明してクロロとアークに船を返しに行ってもらおう」
「・・・ところで、轟天号その他の船とミサイルに関してはどうします?王はともかく国民がパニックになり、重臣たちが侵略戦争を始めましょうとか言い出しかねないですよ?」
「そうだな・・・とりあえず秘密裏にハイネルドにだけ打ち明けるか。団員たちにも箝口令を出せ」
「実は団長、もう1つ気になることがあるんですが・・・ルクレ」
「ふぇ?なんだべ?」
「お前が造られた理由が聞きたい。これほどの武器を造らなければいけないような敵が居たと言う事だろうが、その敵はどうなった?」
「30年ぐらいにらみ合いが続いただが、最後はお互いに武器を放棄して和平しただよ。もっともオラが攻撃する筈だった目標物はその後もしばらく機能してただがな」
「その目標物はどうなった?」
「信号が途絶えただ。きっと解体されただべなぁ」
「ふむ、なるほどな。ところでその目標物ってのはどんな物だったんだ?」
「直径が5キロほどの球体の移動要塞だっただよ」
「ご、5キロだと?」
「んだ。ヘルプラネットつう名前のでっけぇ要塞だっただ」
「この大きさで直径5キロもある鉄の要塞を破壊なんて出来ないんじゃないのか?」
「浸食性の連鎖爆発を引き起こすだよ。要塞の電子機械そのものを爆弾に変えるだ。紙に油を染み込ませるようなもんだべ」
「ふぅ、途轍もない話だな、まぁなんにせよルクレはそれで役目を終えたわけか」
「んだ。何千年もの間信号がキャッチ出来ねぇだで、きっともうとっくに土と同化してるだ」
「ところで団長、クロロとアークですが・・・無事に返して来れますかね?」
「火山噴火による大地震の為、緊急避難措置として一時的に接収したと言えば大丈夫だろ」
「それ・・・通用しますかね?」
「連中だってファウンランドと事を構えるほどバカじゃないだろう。だがそうだな、一応保険をかけておくか」
「保険・・・ですか。嫌な予感しかしませんが」
「オレに良い考えがある。ルクレ、さっき言った自爆装置の起動方法を教えろ」
「だ、団長ーーー!国際問題!!」




