表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/184

第六章 底抜けの馬鹿者たち 2

 艦内にはまだ数名のキュプの兵士と神官10名ほどが残っていた。


「よぉーし、この船を扱えるのは誰だ?」


 レントの問いに若いが位の高そうな神官がおずおずと前に出た。


「お前か。それで?1人で操れるのか?」


「は、はい。操船は私1人で出来ますが・・・あなた方はいったい?」

「よーしお前ら、残り全員船から放り出せ」


 神官の問いに応える事なくレントが団員たちに命令を下し、彼らもまた開いている扉から叫び声を上げる神官や兵士たちを無造作に放り出した。


「よし、えーとお前の名前は何と言う?」

「ガ、ガブリエルと申します」

「そうか、さっそくだがガブリエル、扉を閉めてくれ」

「は、はい。ただいま」


 ガブリエルが船内の真ん中にある説教台のような機械を操作すると、空気の漏れるような音と共に扉がゆっくりと閉じた。


「取り敢えず海岸線に沿って西に向かってくれ。一応言っておくが変な気は起こさないようにな」

「は、はい」


 神官が緊張した面持ちでパネルを操作し、船がゆっくりと離岸した。


「さて、一応聞いておくがお前はネフレンカの神官長か?」

「と、とんでもない。猊下はキュプの王との懇談会の為に迎賓館に居られます」

「ふぅん、マルコス、どう思う?」

「ネスカリカが中立国として国家間の争いに不干渉、不介入だったのは3年ほど前までです。今の神官長ピサロは世事に長け謀略を好むと聞いています」

「謀略を好む神官長がウルグァストに会いに来る、しかもわざわざ力を誇示する為にロングスピア号に乗って来たと言う事か」

「なかなかに政治的な匂いを感じますね」


 話しつつ2人が見つめると神官は恐怖に震えだした。


「わ、わ、私には政治的な事などわかりませんが猊下の判断に従うまでです。神官の1人として・・・」

「あーいいからいいから、どっちにしろ無駄足だったんだしな」

「そ、それはいったい・・・?」

「キュプの王は死んだ。俺が殺した」

「まさかそんな、ご冗談を・・・」

「冗談で怪我人を抱えて船を強奪する奴が居てたまるか」

「いや、団長なら普通にやりそうですけどね」

「うるせぇわ!」


 2人の会話を聞いて神官が震えた。この2人の話は冗談ではない。本当の事だと直感した。


「話は大体わかった。後はお前の処遇だが・・・」


 そう言ってアークを手招きした。

呼ばれたアークが剣の柄に手をかけてレントの元へと歩み寄る。

神官の顔が見る見る青ざめていった。当然と言えば当然だ。知りたい情報を得たら生かしておく必要などない。むしろ殺さずにこうむる不利益は計り知れないのだ。


「取り敢えずこの船の操作をこいつに教えてやってくれ。覚え次第お前を生かして開放してやろう」

「・・・はぁ?」

「ネスカリカと揉めたくないから神官を殺す気は無い。そう判断してくれ」

「え・・・いや、でも・・・私はキュプの王を殺したって話を聞いてしまってるんですよ?」

「んん?あ、あー・・・そう言えばそうか。まぁ忘れろ。死にたくなかったらな」


 レントはそう言うと神官に背を向けて怪我をした団員の方へと向かった。

きょとんとしている神官にいたずらっぽくマルコスとアークが笑いかけた。


「ガブリエルさん。あの人は多分あなたが気に入ったから殺すのをやめたんですよ」

「ですねー、あなたのように一切の駆け引きも命乞いもしない人も珍しいですからね」


 それを聞いた神官が膝から崩れ落ちた。

本来なら有無を言わさずに斬り捨てられていた筈の命を拾ったのである。

震える指と声でアークに操作方法を教えながら神官は心の中でつぶやいた。






「神よ、・・・感謝いたします」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ