第六章 底抜けの馬鹿者たち 1
レントたちが血路を開いて城門から飛び出した時、またしても大きな地震が起こった。
人々は逃げ惑い、混乱に乗じて人混みに紛れる事は出来たが今度は別の問題があった。
味方に死者は出なかったものの手負いは3人、この混乱の中での帰路は困難を極めるだろう。
「団長、街は混乱して街道に抜けるのは難しいかも知れませんな」
「難しくても行かなきゃならないだろう。何かいい手があればいいんだが・・・」
「だったら団長、いっその事アレで行ったらどうです?」
マルコスが指さした先に港があった。
「なるほど船か!確かにそれが一番手っ取り早いな」
「今なら容易に分捕れると思います」
「よし、決めた。マルコスとアークは俺の補佐を、残りは負傷者を背負って付いて来い!」
言うなりレントは2人を引き連れて人混みをかき分け港へと一気に走った。
「マルコス、俺は船には詳しくない。どれが良いかお前が選べ」
「そうですねぇ。あまり大きくても操船が大変ですし、小さすぎても高波に飲まれる危険がありますから・・・」
「確かにそうだなぁ。手頃なのがあればいいんだが・・・」
「そうですねぇ、出来れば逆風でも航行できる戦闘型の高速帆船、欲を言えば古代遺物の推進装置を取り付けた船があれば・・・・ば、ば、ば・・・だ、団長ーーー!!!」
停泊している船を物色していたマルコスが叫び声をあげた。
「いつもは冷静なお前がそんな声を出すなんて珍しいな。と言うかうるさい、目立つだろうが!」
「だって、だって団長、あれ、あれ見て下さい、あの船」
「んー?・・・あれって船・・・なのか?」
「ロングスピア号を知らないんですか!?」
「いや知らん。確かに長槍のような形をしているなぁ」
全長は約70メーター、白銀に輝く船体に金色の縁取りと荘厳な紋章、そして解読不明な文字が描かれていた。
「ネフレンカで発掘された中でも最大級の遺物で、世界で最も貴重な古代船です」
「それにしてもそんな物が何でこんな所に停泊してるんだ?」
「ネフレンカの神官たちがこの船を売り払ったと言う話は聞いた事がありません。恐らく何らかの理由でキュプの王と会う為にこの船で来たのでしょう」
「なるほどな・・・で、どうする?」
「・・・え?」
「え?じゃなくて、どうする?この船を分捕る事にするか?」
「いやいやいや、いくらなんでもそれは・・・でも場合が場合ですし緊急措置という意味ではまぁ・・・」
「マルコス、お前ねぇ、素直になれよ。本当は喉から手が出るぐらい欲しいんだろう?」
「いやいや、そんな・・・ほ、欲しいです」
「よおし、そうと決まれば突撃だぁ!マルコス、アーク、遅れずに付いて来い!!」
そう言うなりレントが斬鉄牙を抜き放って船に向かって走り出した。
船の横に設置された移動式の階段に居たキュプの兵士たちが雄叫びをあげて突進してくるレントを見て蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。立ち向かう兵たちを双剣で斬り伏せるとレントが一気に階段を駆け上り船内へと飛び込んだ。続いてマルコス、アークが船内に駆け込み、入れ替わるようにキュプの兵士たちが船外に放り出された。
「この船いただいたー!!」
レントが叫ぶとマルコスがそれに合わせるように指笛を吹いて団員に合図を送った。
団員が乗り込み終わると紙でも切るように斬鉄牙で階段をバラバラに切り刻む。駆け上がる兵たちが足場を失って次々と海へと落ちた。
遠目にその様子を見ていたルネアが深い溜息をついた。
「あの子たち頭が変なの?国際問題じゃない」
「はぁ、私は初めて見た時から頭が変な男だと思ってました」
銀狼の1人が返事をすると諦めたようにまた深くため息をついた。
「確かにそうね。底抜けのバカだわ」




