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高台に一人、二人と集まる。
誰も彼も銀の首飾りをしていた。
海を眺める位置にある長椅子に腰掛けた白の僧衣たちは、その光景をただ黙って見ていた。
近づく雷鳴にも、ときおり顔を向けて。
それ以外の挙動を発しない。
明らかに風体も異質で不審。
加えて、食事会といわれた会場には食卓も無く、料理の一つすら並んでいない。
それでも、彼らへ猜疑心を抱えるほどに注意力が残っている者はいなかった。
皆が邪悪な魔力に操られている。
首に下げた銀の首飾りが微かに光った。
それに呼応してか。
遠くで雷の音がする。
「来る」
「もうすぐ集まる」
白い僧衣たちが散開する。
会場を円で囲うような配置に立った。
足元の地面に短剣を突き立てて片膝を折り、その場で合掌して祈りの姿勢に入る。高台を訪れた人々は、その輪の中へと進み出た。
そして。
不意に僧衣の一人が立ち上がる。
「どうした」
隣の僧衣がたずねる。
「まだ一人、来ていない」
まだ一人。
ここへ来ていない。




