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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
四話「橋織る谷」・下巻
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 タガネたちが山岳地を調査していた。

 それと同時期の王都である。


 上空に光のカーテンが棚引いていた。

 常に七色に変遷する幻想的な極光(オーロラ)に照らされて、城下の人々は感嘆と高揚で包まれている。ヴリトラの災厄から立ち直った頃に現れたそれは、何かの救いの啓示にすら思えた。

 しかし。

 随喜に踊る国民には、避難勧告が出ていた。

 商人たちと共に出ていく者もいる。南北の検問は凄まじい人だかりができていた。

 そして、王宮もまた慌ただしい。

 避難作業が急がれている。

 その要因は一つ。

 ヴリトラを凌ぐ災厄が訪れていた。

 王国の存亡が懸かっている。

 第一王子ルナートスも剣を手に、王宮のバルコニーから王都の遥か南の空を眺めていた。その眼差しは、ただ緊迫した鋭さを帯びる。

 隣でミストが杖を抱いて萎縮していた。

 空を彩る極光。

 ここ三千年の歴史に、幾度が現れる天災。

 地上を貪るヴリトラ。

 空を塞ぐデナテノルズ。

 そして。

「来るのか、ヤツが」

 遥か空の彼方より星を招く。

 北海から産み落とされる魔神の申し子。

 ルナートスの視線が凍った。

 顔の筋肉が強張る。その異変を機敏に察したミストも、肌に感じた強大な魔力に総身を震わせた。

 遠くの山。

 その中に蠢く影があった。

 空の極光が光量を増し、空気が冷たくなる。

「あれが、最悪の魔獣か」

「王子、逃げましょう」

「……マリアも団長もいない、我々だけでも王国を守るんだ」

 空に轟く遠雷の音。

 いや、それは獣の咆哮だった。

 王都にいる全員がその音を知覚した瞬間。

 南の山々が白光の中に消えた。

 ついで訪れる地殻と大気の鳴動。

 爆風が遅れて押し寄せた。

「無理……だろうな」

 ルナートスが諦念で震えた弱音を洩らす。

 ミストも、絶望で床に座り込んだ。



 彼らの予感した通り。

 その数時間後、王都は消滅した。





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