表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
三話「境の逃げ宝」下編
44/1102



 とある屋敷で。

 リンフィアたちは窓外(そうがい)の雨天を見て無聊を慰めながら部屋に待機している。

 検問を通り、示し合わせた通りに待ち構えていた使者の案内を得て、ここへ辿り着いた。リンフィアは獣国の景観に心踊らせていたが、同行者二人の表情は固い。

 特に、リクルは別人のようだった。

 さながら無機質で冷たい人形。

 あれだけ表情豊かだった相貌には、感情の一つすら色を見せない。

 リンフィアは当惑した。

 シュバルツに限ってはどこか安心した面持ちである。

 彼はリクルに耳打ちする。

「剣鬼の処理は、どうなりましたかね?」

「大丈夫ですよ」

「しかし……」

「国境攻略に充てるはずだった精鋭」

 その言葉に。

 シュバルツの顔が凍りつく。

「ま、まさか……!」

「『拳聖(けんせい)』を派遣しました」

「たかが一人に……」

「剣鬼侮るべからず――これが各国共通の認識ですよ」

「そう、ですね」

「むしろ、砦の戦など些事です」

 リクルは淡々と告げた。

 同室のリンフィアは、唖然としている。

 こんなリクルを見たことは無い。それだけでなく、その口振りはタガネを陥れたとも聞こえる。

 リンフィアは、自身の誤解だと否定する。

 優しいリクルに限って、そんなこと。

 それでも。

 その本人の顔は、見たことがないほど冷たい。

 シュバルツは平然としている。

 リクルの一面として知っていたのか。

 疑心ばかりが膨らむ。

「しかし、これで」

「事は進みますね」

 リクルが微笑んだ。

 ぞっとするような冷笑である。

「さて」

「この交渉が予定通りに遂行されれば」

「ええ。……帝国も王国を消せる」

 部屋の扉が叩かれた。

 開けられた隙間から、亜人が顔を出す。

「面会の準備が整いました」

「わかりました」

 リクルが立ち上がる。

「行きましょうか」

 怯えるリンフィアの手を取った。

 半ば強引に立たせる。

「これで我々の勝利だ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ