第83話 村に到着
「ここがわしの村だ」
村長の案内でオオクサ村にたどり着いた。村というだけあって町とは違い壁に囲まれているようなこともなく木製の柵で仕切られているだけだった。
「これでよく無事でいられたな」
それが俺の素直な感想だった。魔物や魔獣が跋扈する世界でこれはかなり心もとないだろう。
「そう思う気持ちはわかる。もっともこのあたりは元々は凶暴な魔物や魔獣も少なく平和だったのだ。だがそれも今は違う……」
村長が悔しそうに呟いた。なるほど。そもそも危険がなければこの程度の囲いでも問題なかったわけか。
だがこの話だと依頼にあったマウンテンスネークが出てから急に凶暴な魔物や魔獣が増えたということになるが――
「戻ってきたのか親父!」
村に入ると一人の男が駆け寄ってきて村長を出迎えた。親父と言っているからきっと息子なのだろう。村の中では畑仕事している村民の姿もあり、牛や豚が鳴き声を上げていた。
村の規模としてはそこまで大きくはないか。村全体で三十人いるかいないかといったところに思えた。
「それで、その冒険者というのはこの?」
「あぁそうだ」
「そ、そうなのか……」
村長が答えるとやってきた男が明らかに落胆した。
「やはり予算的に厳しいから新人冒険者しかつれてこれなかったんだな……」
「ち、違う! この二人は若いが腕は確かだから勧められたのだ。あの暴虐の狼退治にも貢献したと聞くし、途中で襲ってきた化物も意に介さなかった程だからな」
村長が説明を付け加えると男が目を見張り俺たちを見た。本当なのかと疑ってる感じがある。しかし俺としては予算という点と村長の態度が気になるところだがな。
「息子が失礼したな。こいつはハルヤだ」
「その、若いからとつい勘違いしてしまって申し訳ない」
村長に促されハルヤが謝罪してきた。別に気にはしてないがな。
「今も話したがこの二人は若いが実力はたしかだ。この若さでD級に上がったのだから」
「ほ、本当か? それは凄い。それならとにかく村を救って欲しい!」
ハルヤが改めて俺たちに願い出た。依頼だからそのつもりではあるがな。
「その話本当なのかよ! また騙されてるんじゃないのかよ!」
その時、幼さの残る声が村に響き渡った。見ると十歳ぐらいの男児の姿がそこにあった。
「ナツ! 失礼だぞ!」
「フンッ。二人は甘いんだよ! 冒険者なんか当てになるもんか!」
そしてナツと呼ばれた子どもは走り去った。
「何なのあの子?」
「いや、孫が済まなかった」
マリスが不機嫌そうに呟くと村長が頭を下げた。しかし孫か。
「ということは」
「あぁ。俺の息子だ」
俺が見るとハルトが答えた。なるほど言われてみると似てるかもな。しかしあのナツという子どもが言っていたな。また騙されると――




