第81話 D級に上がった二人の仕事
あの護衛の依頼が終わってから暫くは街周辺の薬草採取や魔物退治などの依頼をこなしてきた。なんだかんだで俺とマリスは今も一緒にパーティーを組んでいる。
変化といえばマリスからしっかり金を返してもらったのと、あれから俺たちはD級に昇格した事だ。おかげで受けられる依頼の幅は広がっている。
そして今日もまたマリスと一緒に俺たちは冒険者ギルドにやってきていたのだが。
「あ! リョウガさんマリスさん。丁度良かったです。実はちょっとした依頼が来ていて良ければ話を聞いて頂けませんか?」
ギルドに顔を出した俺たちに受付嬢が聞いてきた。仕事を探しにきたので依頼を受ける分には問題ないがどうやら依頼人が今来ているところらしい。
依頼者本人から話を聞くことになるのは初めてだ。ギルドも意外とそういうことを冒険者に任せるんだな。
「リョウガ折角だから聞いてみようよ」
マリスは話を聞いてみたいようだな。断る理由もないしとりあえず会ってみるか。
「あんた達が依頼を受けてくれるのか? 随分と若いようだが……大丈夫か?」
依頼人は白髪まじりの初老の男性だった。俺たちを訝しげに見ているな。この手の仕事は若いと経験不足と思われがちなのだろう。
「確かに二人はまだ若いですが実力は確かですよ。あの暴虐の狼も二人の活躍があったからこそ壊滅してこの若さでD級の腕前ですから」
「なに! あの盗賊団をか!」
しかし受付嬢のフォローもあってか依頼人の目つきが変わった。暴虐の狼は結構有名な盗賊団だったみたいだからな。この依頼人もどうやら知っていたようだ。
「まさかそこまでとは。疑って悪かった」
初老の男性が謝ってきた。やはり実績があると信頼度も違うようだな。
「構わないさ。それで仕事というのは?」
俺はとりあえず本題に入ってもらうことにした。別に仕事の選り好みをするつもりはないが、内容ぐらいは知っておく必要がある。
「うむ。わしはここから南西にあるオオクサ村で村長をしておるのだが、最近になって蛇の化物が出るようになってな――」
依頼人の村長がポツリポツリと事情を語りだした。しかし蛇の化物か。なんとなく大蛇的な物を想像してしまった。
「最初は村の家畜が被害にあっていた。暫くは罠などで対応しようとしていたが最近では村の人間にも犠牲者が出てしまってな……わしらだけではもう対応出来ずこうしてギルドを頼ってきたのだよ」
「それでその蛇を討伐すればいいんだね?」
マリスが依頼内容を確認しつつ改めて問いかけた。そして初老の男性は大きく頷きながら話の続きをはじめた。
「ああそうだ。とにかくこれ以上被害は出したくないのでな。可能なら今からわしの村まで一緒に来て欲しいのだが……」
なるほど。依頼人はどうやらよほど切羽詰まってるようだな。ただ、どうも気になる点がある。
「その蛇の化物というのはどんな相手なんだ?」
「……なんというかデカい蛇といったところだな」
デカい蛇か。そのままだとまさに大蛇だが――
「話を聞くにマウンテンスネークの可能性が高いですね。食欲旺盛でなんでも口にすることで有名です。正直本来二人で相手するには心もとないですが、お二人の実力なら問題ない相手かと思います」
受付嬢が依頼人にも自信をもって勧めていた。俺も最初はスキルがないことで心配されていたものだが、随分と評価が上がったものだな。
そしてギルド的にもこのまま依頼人と一緒に村までいくのは問題ないようだ。報酬に関しては魔獣討伐扱いらしく金貨十枚とのことだった。
「リョウガ受けようよ。蛇野郎をぶっ倒すだけなら楽勝だろうし」
マリスは随分とやる気だな。これまでもそうだが戦闘が絡む依頼が好みらしい。
「マウンテンスネークか……わかった。なら早速行こうか」
こうして俺たちは依頼を受けることにした。そして依頼人と一緒に村に向かうことになったのだが――




