第77話 自信
「この状況でもお前は随分と自信があるんだな」
「フンッ。お前こそ何を勘違いしてる。俺はまだ本気じゃねぇ」
自分を指さしてガンギルが堂々と言い放った。妙な親切心を出してきたものだな。
「俺がマジになればそこに転がってるゴミみたいにテメェは俺の足元で泣きわめくことになるんだよ」
ダリバのことを言ってるようだな。俺は一つ気になったことを聞くことにした。
「お前はダリバを殺さず随分と甚振っていたようだが何か意味があったのか?」
ガンギルのやり方は拷問のようなものだ。例えば必要な情報がある時なんかには苦痛を与えて吐かせるのはよくある話だろう。
「あん? そんなもの俺がやりたいからに決まってるだろう。まぁ敢えていえば見せしめか。俺等を舐めた連中がどうなるかわからせるためにな」
「……そうか」
舐めたから見せしめか。そういう考え方もあるんだな。
「さて。そろそろ遊びは終わりだ。先ずはテメェの足をあのゴミみたいにグッ!?」
ペチャクチャと煩いガンギルの腹を先ず殴った。うめき声を上げ苦悶の表情で膝をつく。
「て、テメェ」
ワナワナと震えながらガンギルが俺を睨んできた。まだ元気だな。
「今ので殺ろうと思えば殺れたがお前の持論でいけば甚振るのも大事なんだろう?」
「あん? グボッ!?」
今度は横っ面に蹴りを入れた。ガンギルが吹っ飛び壁にぶち当たる。
「ふむ。甚振るというのもなかなか面倒だな」
「て、テメェ! ぶっ殺す!」
立ち上がったガンギルの鋼化した右腕が肥大化した。あれがあいつのいう本気って奴か?
「その頭をグシャグシャにしてやる!」
肥大化した拳が迫る。俺はそれを解放した腕で受け止めた。
「軽いな。お前の本気はこんなものか」
ガンギルの硬化した腕を見ながら言い放った。見た目は重そうなんだが俺にとってはあまりに軽すぎる拳だった。
「は? な、何だお前のその腕は?」
俺の腕を見ながらガンギルが聞いてきた。だが説明するのは面倒だ。
「お前は変化が好きなようだからな。これで多少は満足か?」
そう言いながらガンギルの右足を軽く撫でた。鋼化した右足が切断され宙を舞う。
「な、足が、俺の右足がぁあああぁあああぁあ!」
ガンギルが喚いてゴロゴロと転がった。そこから左足、右腕、右足を奪った。
「な、おれの、俺の体が、そんな、鋼化してるのに、何故だ!」
「金属ぐらいいくらでも切り刻める。俺からすれば紙とそう変わらない」
うろたえるガンギルにそう説明するとさっきまで強気だったガンギルの表情に恐れの感情が浮かび上がった。
「ば、バケモンが」
「そうかもな。しかし甚振るというのもやっぱり面倒だ。意味もなくこんな真似するのはやはり俺の性に合わなかったな」
そこまで言って俺はもう十分だと思いガンギルの頭を握り潰した――




