第76話 暗殺者VS暴虐の狼
「ハッ! 鈍感な野郎だ。この俺様との力の違いもわからないんだからな」
「そうか。その発言がお前に突き刺さらなければいいがな」
「何だと?」
ガンギルの眉がひくついている。俺の返しに苛立っているようだな。この程度で心が乱されるようでは程度が知れる。
「頭がやるまでもねぇぜ! こんな奴の首、俺が!」
「邪魔だ」
「プペッ!?」
先走ったガンギルの手下が後ろから俺を狙ってきた。勿論そんなものにはすぐに気がついたので裏拳で処理した。
だが、予想以上に力が入ったのか裏拳の入った頬が拉げ反対側の頬に接し目玉が飛び出て頭の中身も飛び出していた。
そのままぐるぐる回転しながら近くの壁に激突。結局元の形もわからないほどにグシャグシャになっていた。
盗賊連中の命を奪ったところで何も思うところはないが、それにしても力が入りすぎたな。つい力が入ってしまっていた。
……何故だろうな。とりあえず頭を冷やすか。
「て、テメェよくもやりやがったな!」
「頭! 命令してくれれば俺等全員でやってやりますぜ!」
「そうだ。こんなガキに舐められっぱなしでいられるかよ!」
ガンギルの手下どもがギャアギャアとわめき出した。煩い連中だ。そして鈍い。どうやらマリスが俺を追ってきたようだが、あれだけ血の気の多い奴の気配にも気づけ無いなんてな。
「リョウガ~~~~! 何勝手に突っ走ってるのよぉぉお!」
「「「グべッ!?」」」
遅れてやってきたマリスの突進で盗賊の三人が吹っ飛んだ。そのまま壁にぶち当たったり地面に当たった後バウンドしてたりまぁギャグみたいなやられ方してるな。
俺にやられたのと違って命まで失うことはなかったが肉体的には確実に後遺症の残るやられ方だ。意識も失っているしもう邪魔になることもないだろう。
「リョウガ! 仲間の私を置いていくなんて酷いじゃない!」
「急ぐ必要があったんだろう。ならついてこれないお前がわるい」
「うッ! そ、そうだダリバは、て、足ぃぃいいぃぃい!?」
マリスが驚嘆していた。片足を失ったダリバを見つけたからだろう。
「うそ! まさか死んで……」
「気を失っているだけだ。命は大丈夫だろう」
まだ息もあるからな。ただ、今後足がどうなるかは何とも言えないがな。
「フンッ!」
その時、俺に肉薄していたガンギルが拳を撃ってきた。腕でそれを防ぐ。
「馬鹿な! 鋼の拳だぞ!」
俺が拳を受け止めるとガンギルが目を見開いて驚いていた。拳が鋼になることで随分と強気なようだが、俺からしたらその程度で何を思い違いしているのかといったところだ。
「リョウガ! 私も行くわ!」
「おっと。あんたは私が相手してあげるわよ」
マリスが加勢しようとしてくれたようだがそこにあの女が鞭て割り込んでいた。
「私はね貴方みたいな可愛い子、結構好きなの。鞭で傷つく姿を見てるとゾクゾクしちゃう」
「いい性格してるじゃない」
向こうではマリスと女がバチバチと火花をちらしていた。まぁあっちは任せて大丈夫か。
「あの女も終わりだよ。ネイラはあれで俺ほどじゃないにしてもつえ~からな」
ガンギルが醜悪な笑みを浮かべながら語った。ネイラというのがあの女の名前か――




