第75話 仲間の危機
午後の仕事もほぼ終わり、後は適当にお茶でもして帰りましょうという話になった。
依頼者の意向だ。断る理由もないなと思い俺とマリスは再びモンドとの取り引きで利用していたカフェに向かったのだが。
「み、見つけた! リョウガ大変なんだ!」
息せき切ったスカーレッドが俺たちに走り寄ってきて助けを求めてきた。スカーレッドは一人なようでダリバの姿がない。
「一体どうしたの? ダリバの姿もないようだけど」
マリスが慌てているスカーレッドに聞いた。ダリバの姿がないことも気になったようだ。
「そのダリバがやべぇんだ! 例のガンギルっていう盗賊の頭ってのが突然現れて、あいつ私にだけ逃げろって、とにかく急いで助けに行って!」
スカーレッドはあきらかにパニックに陥っていた。例のというと暴虐の狼が関係しているのだろう。
「だが今は依頼人を護衛中だ」
「それは私が代わるよ! 今あいつを助けられるのはあんたしかいないんだ!」
「リョウガさん。行ってあげてください。私はもう大丈夫ですから!」
「そうだよリョウガ急がないと!」
依頼人も含めた全員がダリバを助けに行くことを望んだ。依頼人にもこう言われたなら後はスカーレッドにまかせても問題ないか。
「わかった。助けに行こう」
「あ、待てよ場所まだ言ってないよ!」
「気配でなんとなくわかる」
スカーレッドが叫んでいたがそこまで危ないなら自分の五感に頼った方が早い。
意識を集中させ感覚を鋭敏化し、街なかで気配が乱れた場所を探し当てる。それは案外早くに見つかった。荒い呼吸、これはダリバか。怪我を負っているがまだ息はある。
もう一人興奮状態にあるのが頭のガンギルか。地面を蹴り音を置き去りに街を駆け抜け目的の場所まで疾駆した。
「ハハハッ、こいつ結構長持ちするじゃねぇか!」
「ぐ、くそ、ガァアアァアアァアア!」
路地についたところで俺の目に飛び込んできたのは、片足を失ったダリバと切断された箇所を踏み続ける巨漢の姿だった。
「そろそろ飽きてきたな。潰すか?」
「お前が潰れろ」
拳を振るとガンッ! と金属を殴りつけたような感覚。ガンギルが吹っ飛んでいったが、まだ倒せてはいないか。あれは全身が鋼化しているようだな。
これもスキルの効果か。本当に色んな奴がいるもんだ。
「りょ、リョウガ、来てくれたのか?」
か細い声をダリバが上げた。目も虚ろで意識が朦朧としているのが見て取れる。
「あぁ。スカーレッドが来て教えてくれた。彼女に感謝するんだな」
「ヘヘッ、そうかやっぱりあいつを逃して正解だった。後で何を奢らされるかわかったもんじゃねぇが、後は頼んだぜ、リョウガ……」
そこまで言ってダリバが倒れた。完全に意識を失ったか。片足をなくしているんだ。ここまで意識を保っていただけでも大したものだろう。
「テメェ、よくもやりやがったな――」
するとガンギルが起き上がり俺を睨みつけてきた。
「さてはお前がそのゴミの言っていた野郎だな? 随分と期待されてるようだが、後悔するんだな。この俺を怒らせたことを!」
随分と強気な発言だな。だが俺にはそうは思えない。
「悪いがお前からは恐れる要素が一切感じられない。後悔のしようがないな――」




