第58話 盗賊に襲われた
「盗賊が来た。それなりの数がいるぞ」
ダリバに向けて状況を伝えた。ダリバが飛び起きスカーレッドも起こしていた。
「本当に盗賊が来たのかよ!」
スカーレッドが叫んだ。護衛初日から盗賊に狙われるとは思わなかったのか。だとしたら中々呑気だな。
さて――相手の盗賊は次の手に出たようだ。前方から火球が飛んできた。
「やべぇ! 魔法の使い手がいるぞ!」
「見ればわかる」
避けるだけならなんてことはないが、この位置だと後ろの連中に当たる。ダリバとかなら自分で対応してくれって思うが護衛対象の商人に被害を出すわけにはいかないな。
「潰しとくか」
飛んできた火球を叩き落した。爆発こそしたがこの程度大したことはない。俺の皮膚は溶岩を泳いでも平気なぐらいには丈夫だ。
「悪いねリョウガ。その先は任せておきな!」
スカーレッドの声が聞こえた。同時に火に包まれたナイフが投擲されて魔法を使っていた連中の悲鳴が聞こえた。ナイフが当たったようだが、しかし今の火はただ燃やしただけってこともなさそうだな。
「ナイフが燃えるとはな」
「あぁ。私のスキルは【燃焼】だからね。手持ちの道具を自由に燃やせるのさ」
スカーレッドが答えた。軽く言ってるが戦闘では中々役立つスキルかもな。
「私も行く!」
何人か迫ってきている盗賊を見てマリスが加速した。三人の盗賊がマリスに襲いかかるが拳で一人の顎が粉砕され蹴りで一人の背骨が折れ最後は膝蹴りで内蔵が破裂してるなあれは。
「あいつとんでもないパワーだな」
「強化魔法だけは得意らしいぞ」
ダリバがあっけにとられていた。マリスは戦闘面ではマリスなりに頑張っている。
しかし――二人ほどの気配が急に消えたな。これもスキルか。
「やはりまだ危機感が足りないな」
「え?」
三人を倒したマリスが息を整えたところで迫る盗賊がいた。気配が薄くなったからかマリスも気づいてなかったようだが、俺にはバレバレだった。
二人の首はすでに刎ねた。マリスが目を白黒させている。
「こんないつのまに……」
「気配を消すスキルでも持ってたんだろう。ま、これを見破るのは簡単ではないのかもな」
マリスに向けて説明した。まぁ気配を消す事自体は俺たち暗殺者は普通に出来ることなんだがな。
「全く。揃いも揃ってなさけないな」
正面から声が聞こぇた。見ると髪を逆立てた痩躯の男が立っていた。感じられる空気が他の盗賊と違うな。
「流石に今度は俺が行かせて貰うぜ」
ダリバが前に出た。今のところダリバの出る幕がなかったから張り切っているのかもしれないな。
「あんた大丈夫かい?」
「任せろよ。あんなヒョロイの俺のパワーで粉砕してやる」
ダリバが鼻息を荒くさせているが、舐めて掛かると痛い目を見るかもしれないな。さてどうなるか――




