第49話 奴隷少女の行方
俺は依頼を二つとも達成しゴイスをギルドまで連行した。事情を話したらギルドマスターが対応してくれた。
「まさかこいつを捕まえてきてくれるとはな。お前も覚悟を決めることだな」
「ぬぐぉ、このわしがこんなことで!」
悔しそうにしていたがゴイスは屈強な職員に連れて行かれた。そのまま一旦地下牢に入れられてその後は領主の判断を仰ぐらしい。
「で、先ずはあんただがゴイスの護衛だったんだって?」
「そうさ。でもこれで強制的に依頼はキャンセルだね」
ギルドマスターに問われて素直にスカーレッドが答えていた。ちなみに捕まったゴイスの護衛をしていたからといってスカーレッドが罪に問われることはないようだ。
勿論一緒になって犯罪に加担していたなら話は別だったようだが、スカーレッドはただの護衛だったようだからな。
「丁度いいし私も冒険者登録するよ。傭兵よりは食えそうだからね」
スカーレッドは中々したたかな女だったようでこのまま冒険者になるようだ。ギルドとしても傭兵を稼業にしていたスカーレッドなら断る理由もないらしい。
「それならすぐにでも登録手続きに入るといいさ」
「わかったよ。それじゃああんたらもまたね」
そしてスカーレッドは席を移動し冒険者登録に入っていた。
「さてと、後はそっちの女だな。見たところ魔族か?」
「……私の父は人間よ」
マリスがぼそっと呟いた。魔族であることは否定してないようだが、人間の血も含まれているということなんだろう。
そもそも俺はこっちの世界の魔族が何かよく知らないがな。物語としての魔族なら知っているが。
「なるほど半魔か。それで奴隷商に狙われたんだな」
「半魔だと狙われるのか?」
「あぁ。魔族の混血は高値で取り引きされやすいんだよ」
ギルドマスターが答えた。奴隷としての価値が高いってことか。
「……私はどうなる?」
「安心しろ。あいつは違法奴隷商だからな。お前も正規に扱われた奴隷ではないのだからその首輪はここで外してやる。それで奴隷から解放だ」
「本当!?」
マリスが立ち上がり声を張り上げた。嬉しそうだな。
「ただ問題はある。違法とは言え奴隷から解放する際に誰かしら身元引受人が必要だ。誰かそういう相手はいるか?」
ギルドマスターが問いかけるとマリスが表情を曇らせた。
「今は、いない……」
「ふむ。両親は?」
「母はいない。父は……今は病気になっていてとてもそれどころじゃない」
マリスが答えた。病気という部分の声が細かったな。
「そうか。しかし弱ったな。誰かしらいると話がスムーズだが……ちなみにお前、年は幾つだ?」
「十五だけど……」
「そうか。ならもうひとつお前は戦えるか?」
「やれる。あの連中だってこの首輪がなければ私が殺ってた!」
マリスが鼻息をあらくさせた。まぁ血の気は多そうだな。
「そうか。ならお前、冒険者になれ。そしてそのリョウガとパーティーを組めばいい。その条件ならリョウガに身元引受人になってもらえるからな」
俺はとりあえず成り行きを見守っていた形だが、ギルドマスターが唐突にそんなことを言い出したわけだが――




