第27話 ダンジョンで見つけたエリート
「クカカ。人間がわざわざ餌になりに来たか」
こいつ、どうやら人語を介すようだな。
「こいつ喋った! さてはエリート級か!」
ゴーガンが叫んだ。随分と焦っているな。目の前にいる相手がそれぐらい強いということか。まぁゴーガンはダンジョンにきて叫んだり驚いたりと常に忙しそうだが。
「エリート級ってのは厄介な相手なのか?」
「当たり前だ! ただでさえ厄介な魔物に知能まで備わってるんだからな。エリート級はそれ自体が災害みたいなもんだ」
「フンッ。エリートなど所詮人間が決めたこと。だがその響き嫌いではないがな」
「それにしてもよく喋るわね……」
ミトラが眉を顰める。
「もしかしてこれヤバいんじゃないのか?」
「ウキィ……」
セラとモナも不安そうにしている。出入り口も塞がれ逃げることが出来ない状態だからかもしれないな。
「お前はそんなに強いのか?」
「あん? 俺様が強いかだと?」
化け物の蟀谷がピクピクと波打った――かと思えば口を開き俺に向けて炎を浴びせてきた。
「え? う、嘘! リョウガァ!」
「バカやめろ!」
「でもリョウガがリョウガがぁ!」
「駄目だ流石にあの炎の中じゃ……」
「う、嘘でしょ。あのリョウガがこんなにあっさり」
「ガハハ! 当然だ。このグレーターデーモンのグレス様に向かって生意気な事をいうからこうなる。人間風情が!」
「何がそんなにおかしいんだ?」
「そんなもの脆弱な人間がこのグレス様に――何?」
グレスが目を丸くさせていた。それにしてもこいつ俺にダメージが通っているかどうかもわからなかったのか?
エリートというからどれほどのものかと思えば――
「なんとも拍子抜けだな。こんなものなのかエリートというのは?」
炎を振り払いグレスとやらに聞いてみた。これが本気だとは思えないが、だとしても温すぎる。
「リョウガ! 良かった無事だった、ん、だね?」
「おいおい。何だよその体……」
「腕だけじゃなく全身が変化してるじゃないか」
「ウキィ――」
グレスだけじゃなくセナたちも驚いているな。まぁここまで解放した姿を見せるのは初めてだったか。
「馬鹿な! 俺様の炎は鉄さえも溶かすのだぞ! それを耐える人間なんて、いやそれよりもその体、貴様本当に人間か?」
「一応はそのつもりだけどな」
確かに解放した影響で見た目は鬼の如くといったところだろうがな。しかしあの程度の炎ならここまでしなくても良かったか。
「ありえん。この俺様が貴様らなんぞにやられるものか!」
グレスはどうやら腹を立てているようだな。叫んだ直後背後に大きな火球が幾つも生み出された。
「お、おいなんかやばくねぇか?」
「今更気づいても遅いぞ人間ども! お前らは俺を怒らせた!」
「いやお前が遅いだろう」
解放した拳を突き出すとグレスの右肩から先が吹っ飛んだ。今のは牽制のつもりだったんだがまさかこんなに脆いとはな。
「な、グオォオォォオォオオォ! 俺の右腕がぁああぁああ!」
グレスが叫び痛みで顔を歪めた。すると残った片腕で右肩を握りながら俺を睨みつけてくる。
片腕を失ってもわりと元気そうだな。まぁ大分苛立ってそうだが――




