第26話 順調すぎる探索
「ここにも罠があるなっと」
ダンジョンには確かに罠が多いようだが俺からするとわかりやすい罠が多かった。
罠を踏むのも面倒だから基本的には俺が率先して解除している。
「また罠か。しかしリョウガは本当に察しがいいな」
「モナよりも凄いもんね」
「ウキィ~」
「私も罠を見つけるのにはそこそこ自信があったんだけどねぇ。自信無くしそうだよ」
どうやら俺は感心されてるようだな。セラの言う通り確かにモナも時折罠に気がついている。ミトラもそこそこといったところか。ただそれでも罠の八割型は俺が見つけて解除しているがな。
「本来ならダンジョン探索は命がけなんだがな。リョウガといるとそんな感覚も薄れてくるぜ」
頭を擦りながらゴーガンが言った。ここがそんなに大変なのか? 俺の感覚ではちょっと罠が多い洞窟程度でしか無い。
いや、他にも変わった魔物なんかは出てくるがどれも敵ではなかったからな。
「ねぇ、何か結構奥まで来た気がしない?」
「ウキィ……」
「モナも何か不安そうにしているよ」
「野生の勘って奴だな。リョウガお前でも流石にそろそろ気をつけないとヤバいぞ」
「そうか?」
三人が心配そうしている中、俺は壁に擬態していた化け物を素手で叩き潰した。頭が粉砕されて倒れたソレを見てゴーガンが目を丸くさせている。
「おいおいマジかよ……」
「リョウガがいなかったらこんなのに襲われたってことかい……」
ミトラの顔が引き攣っていた。これに襲われるか。いくら擬態していても殺気を隠しきれていないから見つけるのはそんなに大変じゃないと思うんだがな。
そして俺たちは引き続きダンジョンの奥へと足を進めたが、ふと感じた事を聞いてみる。
「結局ダンジョンってのは罠があって魔物がいるだけなのか?」
そう、これだ。今のところそれ以外に特に何もなく何のために探索しているのかよくわからない。
「いや――ダンジョンには大抵お宝が眠っているもんだ。冒険者がダンジョン攻略を目指すのもそれ目当てというのが大きいからな」
なるほどな。ゴーガンからしてみたらそのお宝を手に入れるのも目的っってことか。
そんな会話をしているうちに俺たちは妙に広い部屋にたどり着いた。ここは出入り口が一つしかなく他の場所に繋がっている様子がない――そう考えた瞬間重苦しい音と共に出入り口が壁で塞がれた。
「しまった罠か!」
ゴーガンが叫ぶ。罠か――他の罠と違い特に前触れはなかったな。このダンジョンに来て初めて罠に掛かった形になる。
まぁあの程度の壁なら破壊するのは容易いと思うが――ただ壁で防がれた途端、空間内に殺気が充満し始めた。
「見なよ! 地面に魔法陣が!」
ミトラの指差す方を見ると地面に魔法陣が浮かび上がり青白い光が溢れてきた。
「こいつは――どうやら踏み込んじまったようだな。ダンジョンの主の間に」
緊張した声でゴーガンが言った。ダンジョンの主――そんなのがいるのか。しかもゴーガンの様子を見るにその主とやらはかなり危険な相手らしい。
そして魔法陣の中から黒い肌の奴、見た目は俺の知ってる悪魔そのものだな。蝙蝠の飛膜のような翼を背中から生やし頭には角。
上背はかなり高い。三メートル以上はあるな。ガタイも良くてデカいほうだろう――




