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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第186話 最後の悪あがき

「お前たちの目的は何だ! こんな真似して何を狙っているの!」


 唯一生き残ったラットの胸ぐらを掴み、ネイラが声を張り上げた。


「へっ、俺らは盗賊だぜ? やることなんて決まってんだろうが」

「……つまり、オークションが狙いだったのね」

「へへっ。ま、頭は別に狙いがあるんだけどな」


 血の気の引いた顔でラットが不敵に笑う。その意味深な言葉に、ネイラの瞳が鋭く光った。


「狙いって……何があるのよ」

「頭は強ぇ奴とやり合いたいんだよ。今この都市で一番の実力者――そいつが、頭の圧倒的なパワーに屈するのさ。へへっ、想像しただけで愉快だぜ」

「一番の実力者……まさか!」


 ネイラの顔色が変わる。脳裏に浮かんだのは、たった一人の存在――


 パトリエ。彼女の兄だ。


「すぐに行かないと――!」


「ば~か。俺がなんでベラベラ喋ったと思ってんだよ」


 その瞬間、ラットは口の端を吊り上げ、懐からナイフを抜いた。刃が閃き、次の瞬間には自らの喉を掻き切っていた。


「お前、何を――!」

「ゲホッ……これで……仲間が……お前らに、復讐を――」


 言葉が途中で途切れ、ラットの体がぐったりと崩れ落ちた。


 次の瞬間――


 キィキィと甲高い鳴き声がどこからともなく響き始めた。音はみるみるうちに広がり、下水溝や壁の隙間から小さな足音が洪水のように押し寄せてくる。


「まさか……」


 ネイラが顔を上げる。空気が一変し、マリスもすぐに立ち上がった。


「お、お姉ちゃん……」

「キィ……」


 アルが怯えた声を漏らし、肩に乗った小猿が震えながら鳴く。


 やがて暗闇の奥から、無数のネズミの群れが現れた。赤い瞳が闇を切り裂くようにギラギラと光り、床を埋め尽くす勢いで迫ってくる。


「自分の命を犠牲にして呼び寄せたってわけね……マリス、いける?」

「――大丈夫。ネズミなんかに、負けない」


 マリスの瞳がさらに濃い朱色へと変わり、怒りに呼応するように血潮が沸き立つ。ネイラが小さく喉を鳴らした。


「これなら大丈夫そうね」


 次の瞬間、マリスが突っ込んだ。拳が地を打ち、群れが弾け飛ぶ。ネイラもアルを背にかばいながら蛇腹剣を操り、閃光のような連撃で敵を切り裂く。


 四桁に及ぶネズミたちは、怒れる戦鬼族と冷徹な剣士の手で、見る間に駆逐されていった――。


◆◇◆


「こっちです!」


 マタンゴの襲撃をかわしながら、俺たちは会場の外へと走っていた。モンドが先導し、アルの父親も必死についてくる。


 アルは父親のことを気にしていたが、ここに残れば確実に死ぬ。モンドが「一緒に逃げるべきだ」と判断したのは正しい。


「マタンゴォォ!」

「ひ、ひぃっ!」

「チッ、うざったいね!」


 悲鳴を上げるアルの父親を庇い、イザベラが曲刀を振るってマタンゴを一刀両断にした。


「す、すみません……足手まといで……」

「その分、あとできっちり謝礼もらうからね」

「も、もちろんです! 息子も助けてくれたら、その分も一緒に!」


 その言葉に、イザベラの目がキラリと輝いた。


「任せな。あんたのことも、このイザベラが責任持って守ってやるよ。いいかい、イザベラだからね!」


 名前の自己アピールに余念がない。まったく、こういうところは現金な奴だ。


「さぁ、急ぎましょう」


 モンドの声で我に返る。メインの通路を避け、脇道へとそれる。扉を開け放ち、薄暗い通路へ足を踏み入れた。


「こっちが近道です。マタンゴもうまく撒けるはず」

「わかった。俺が先頭を行く。イザベラとクルスは後方を頼む」

「任せときな」

「神のお導きがあらんことを……」


 イザベラが親指を立て、クルスが短く祈りを捧げるのを確認して、俺は前を見据えた。


 外まで、あと少しだ――。

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