第180話 抵抗
「舐めんじゃねぇ!」
挑発されゴングがシャークに殴りかかった。ゴングはスキルを発動することで三分間は身体能力が大きく向上する。
だがシャークのスキルはゴングと相性がいいと言えない。鮫肌は攻防一体のスキルであり攻撃したがわが逆に傷ついてしまう。
「俺の鮫肌の餌食になりな」
「どうかな? おらぁ!」
ゴングが狙ったのは顔面だった。シャークの鮫肌は皮膚を棘状の鱗に変化させる。だが顔面だけは守られていない。そこをゴングが狙ったのだ。
「捉えたぜ!」
「ハガガ、ウォマエハ」
「は?」
顔面を撃ち抜いたと思えがゴングの拳はシャークの口の中に収まっていた。シャークはそのまま拳に噛みつきブンブンと振り回す。
「グワァアアァアアァア!」
「ゴング!」
悲鳴を上げたゴングをパルコが認める。助けたい思いはありそうだがパルコはラットの相手をしていた。最初こそ魔法で多くのネズミを撃退し有利に思えたが、ラットの操るネズミは更に数を増やしていった。
しかもただのネズミだけではない。中にはネズミ型の魔物も含まれており、パルコと体格の変わらないビッグラッドや自らを燃焼させて体当りしてくるファイヤーラットなんかも含まれていた。
それでもなんとか凌げているのはパルコの魔法の腕が確かだったからだ。
「お前、人の心配している場合かよ?」
「うるさい! こうなったら後先考えていられないわ。とっておきを見せてあげる!」
叫びパルコが杖を掲げ詠唱を口にする。
「とっておきねぇ。ところでお前、気づいているか? お前たちが相手している数に」
「数――?」
ラットの問いかけに反応しパルコがそう呟いた直後、首が裂け血しぶきが上がった。
「あ、が――」
首を押さえパルコの目の色が変わる。その近くにはナイフを持った一人の男が立っていた。
「そいつはレオ。カメレオンのように風景に溶け込むスキル持ちなんだよ」
ラットの声を耳に残しながらパルコが地面に倒れた。同時にシャークがゴングから口を放し勢い余って飛んできたゴングがパルコの前に倒れた。
「パ、パルコ?」
傷ついた右腕を押さえながらゴングが立ち上がりパルコに声を掛けた。だがパルコは何も言わなかった。目からは光が消え失せていた。
「くそ、くそ、くそがぁあああぁああぁああ!」
ゴングが空に向けて叫び声を上げた。そんなゴングを見て盗賊の三人がゲラゲラと笑っていた。
「ハハッ、愉快愉快。全くなさけねぇなぁ。お前は大事な女一人も守れない間抜けだ」
そう言ってシャークが近づきゴングの頭を掴んで近くの壁に叩きつけた。うめき声を上げ壁に寄りかかったままのゴングがズルズルと腰を落とした。
「そいつもう虫の息だぜ。さっさとやっちまおうか」
「まぁ待て。折角だからその女の死体を弄んでやろうぜ。この男の目の前でな」
シャークが悪辣な笑みを浮かべパルコに近づいていった。その途端ゴングが立ち上がり加速する。
「ウォォッォオオオオオオ!」
ゴングが渾身の力を込めてシャークを殴るとシャークがバランスを崩し、その隙にゴングがパルコの前に立った。
「コイツをこれ以上汚させねぇ! 俺の命に変えてもだ!」
両手を広げゴングが鬼の形相で言い放った。そんなゴングを睨みつけシャークが殴りかかった――




