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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第178話 マタンゴ

 オークションは順調に進んでると思われた。だが異変は突如現れた。予感はあった。


 元々この世界は死の気配に満ちていたが、ここにきてそれが急速に高まっていくのを感じた。そして今まさにそれが最高潮に達していた。


「マタンゴォオオォォオオ!」

「ちょ、なんなのよこいつら!」


 顔からキノコを生やした人間が次々と襲いかかってきた。明らかに様子がおかしくなった人間をたちをマリスが拳で黙らせていく。


「初めて見る現象だな。病気か何かか?」


 俺もやってきた菌人間を殴り飛ばしながら誰にとも無く言った。この世界に来て暫く経つが、まだまだ知らないことが多いものだ。


「これは寄生菌(マタンゴ)か――まさかこんな場所で発生するとは……」


 モンドの呟く声が聞こえた。こいつは寄生する魔物ってことか。


「このマタンゴに寄生されたら助かる手はあるのか?」

「いや、この類は治療法がない。一度でも寄生されたらもう手遅れだ」

「それなら遠慮はいらないな」


 モンドの話を聞いた俺は、向かってきた寄生人間の首を全て跳ね飛ばした。正直ただ拳や蹴りでぶっ飛ばしても、頑丈になっているからかそれとも神経が麻痺しているのか、あるいはその両方か、とにかくすぐに起き上がって向かってきてしつこかったからな。


 もう手遅れというなら殺してしまった方が早い。


「ちょ、リョウガそんなあっさり!」

「話を聞いていたか? 寄生されたら手遅れだ。だったら遠慮する必要はない」

「そういうことだね!」


 イザベラが向かってくる寄生人間を双剣で斬り伏せていった。マリスと違ってイザベラの方が遠慮がない。そして他にもいた周囲の冒険者もマタンゴに気がついて遠慮が無くなっていった。


「もはやお前だけだぞ。マリス覚悟を決めろ」

「わ、わかったわよ!」


 出遅れていたマリスも、やっと覚悟が決まったのか攻撃に遠慮がなくなった。しかし気になる点はある。


「このマタンゴの寄生条件は何なんだ?」

「傷からが殆どだが、バラ撒かれた菌を吸っても感染する場合がある」

「ちょ、それ何とかならないの!」

「聖なる願いは健康を促進させ、侵食する脅威から身を守るだろう――イルネスガード!」


 叫ぶイザベラに反応するようにクルスが魔法を行使した。俺の体が淡く光ったのがわかった。


「これである程度寄生は防げる筈です。ただし完璧ではないので気を付けてください!」

 

 クルスが声を張り上げた。なるほど回復系の魔法が扱えるクルスなら予防の魔法も行使できるってことか。

 

 どちらにしても俺には関係ない話だろう。こっちの世界でも俺の肉体は異物を受け付けないからだ。

 

 マタンゴに寄生された人間は随分とパワーが上がり頑丈になっているようだが、それでも俺の相手にはならなかった。最初は手加減が面倒だと思ったがそれも必要ないとなれば邪魔者をただ排除すればいいだけの話だ。


 もっとも俺の目的は護衛だ。最優先すべきはモンドやエンデルの避難経路の確保となる。俺は会場をザッと見回しルートを頭の中で構築するが、その時、外から大きな鐘の音が聞こえてきた。それから少しして息せき切って鎧姿の男が会場に飛び込んできた。


「大変だ! 街に魔獣の群れが押し寄せてきてるぞ! 外は化け物で一杯だ!」


 会場に入ってきた冒険者が大声で叫んだ。外で護衛していた冒険者か。随分と焦っているな。どうやらトラブルはこの中だけではなく外でも発生しているようだな。


「た、助けてくれ!」

「マタンゴォ~」

「あの人!」

  

 聞こえてくる悲鳴にマリスが反応した。今更他人の悲鳴に一々反応していられないと思ったが、襲われていたのはアルという子の父親だった。


 それに気がついてマリスも動いたのだろう。襲っていたのは母親の方か。そういえば妙に体を掻いていたな。あれが寄生されてる前兆だったか。


 そう考えてみるともうひとりいたな。やたら体を掻きむしっていたのが――


「マタンゴォオォッォォオオ!」

「あぁ、そうだお前だったか。残念だが手遅れだ」

 

 顔に菌が生えたシータケが俺に襲いかかってきたが拳でその顔面を潰した。中々愉快な奴だったがここでお前は退場だな。


「あ、ありがとうございます助かりました」


 一方でマリスに助けられた男がモンドにお礼を言っていた。だがマリスの表情が暗い。


「ゴメンねあの人は助けられなかった……」

「いえ、仕方ないです……もうどうしようもなかった。ただ息子が――」

 

 言って父親が表情を曇らせた。アルという子が気がかりなのだろう。


「そういえばゴングとパルコは昼休憩に出たきりだね」

「――そうだね。おそらくその子を探しに行ったんだろうけど外も大変な事になってるようだからね。無事だといいんだけどねぇ」


 マリスの言葉にイザベラが反応した。確かにあの様子を考えるにアルを探しに行ったのは間違いないだろう。


「私の子をですか! な、なんとかなるでしょうか!」


 父親が縋るように聞いてきたがモンドは表情を曇らせた。


「断言は出来ない。そもそもあの二人が無事に戻ってくるかもわからないからな」

「そ、そうですよね」

「私、ちょっと様子を見てくるよ!」


 モンドと父親のやり取りを聞いていたマリスが叫んだ。一体何を言っているんだこいつは。


「お前、わかっているのか。俺たちの目的は依頼人の護衛だぞ」

「で、でも護衛が少ないのは結局トラブルに繋がるかもだし、二人を連れ戻した方がいいよね」

 

 もっともらしいことを言っているが、心配だから探しにいきたいというだけなのだろう。こいつはお人好しがすぎる


「――そうかもしれないな。ただあまり時間は掛けていられない。それに私たちは避難に専念することになるがそれでも構わないかね?」

「は、はい! 急いで探しに行ってくるよ!」


 モンドの許可を得てマリスがダッシュで会場の外に向かっていった。寄生された人間をぶっ飛ばしながらな。


 まぁ依頼人のモンドから許可が出たなら文句を言う筋合いじゃないがな――

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