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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第163話 夕食時の再会

「ま、マリスさんその――」


 片手に骨付きチキンを持って立っていたマリスにエンデルが耳打ちした。流石にドレスコートでこれはマナーに難ありだからな。


 実際周囲の視線が冷たくも感じる。だからエンデルが気を利かせて教えてやってるんだろう。


「え! いちいち皿に盛らないと駄目だったの!?」


 マリスが目を見開いて驚いていた。そこから教わらないと駄目だったのか。


「流石の俺も恥ずかしいぜ」

「ちょっと気まずいかもしれませんね」


 食い意地のはったマリスの姿にゴングとクリスは顔を赤くして距離を取っていた。周囲の視線も気になるのだろう。


「全く基本的なマナーぐらいはパートナーのリョウガも教えてやれって」


 料理が山盛りになった皿を手にイザベラが声を掛けてきた。俺からしたらどっちもどっちだぞ。


「そうだな。皿に移すにしても盛り過ぎはマナー違反だと教えてやらないとな」

「へ?」


 イザベラが目を点にしていた。そんなイザベラの姿を見てパルコも額を押さえて呆れているぞ。


「全く揃いも揃ってマナーもなってないなんて恥ずかしいねお兄ちゃん」

「そういうことを言うものじゃないぞネイラ」


 そんな俺たちに近づいてきたのはパトリエとネイラだった。コロシアムで出会った二人だな。ネイラとは対戦もした。


「リョウガの知り合いなの?」

 

 俺に話しかけてきた二人に気がついたのかマリスも隣にやってきた。マリスはコロシアムには来てないから二人の事は知らんだろうが――見ると皿を使うという知識を得たようだな。それはいいが両手に持った皿に料理を盛り付けている。


「皿は普通一枚だけ持ち歩くんだぞ」

「えぇ! なんか面倒くさいねここ」


 マリスが不満そうに口を尖らせた。こういう場所にはとことんあってないなこいつは。


「そもそもお前、両手塞がった状態でどうやって食べる気だ?」

「え? あれ? あれ?」

 

 マリスが左右の手を上げたり下げたりしながら慌てだした。愉快な奴だ。後は放っておこう。


「貴方なにしてるのよ」

「あ、ありがとう!」

 

 俺は放置しておこうと考えたのだがネイラが見てられないと思ったのかマリスの皿を一枚もってあげていた。そんな彼女にマリスが笑顔でお礼を言った。


「中々面白い子だな」

「皮肉にしか聞こえないが」


 パトリエがマリスを見ながら印象を口にした。笑顔になっているな。そんなにマリスの言動がおかしかったか。


「ところで角が生えているが彼女は魔族かな?」

「半魔族だといっていたな」

「なるほど人と魔族の混血か――おっとこれは別に悪い意味で言ってるわけじゃないからな」


 パトリエがマリスを見ながら聞いてきたから俺が答えると彼は慌てたように言葉を付け足したな。


「別に俺はそんな言い方ぐらい気にはしないさ」

「そうか、ならよかったよ」


 パトリエが安心した様子を見せた。話していれば馬鹿にしているわけでもなければ差別しているわけじゃないのはわかる。


「これまでも特にそれを気にする奴もいなかったな。受け入れられるのが早い」

「魔族との争いがあったのも随分と前のことだからな。気にしない人の方が多いだろう。勿論快く思っていない人間も一部いるし、利用しようとする悪どい奴らもいるが」


 パトリエが寂しそうな顔で述べた。冒険者としては俺よりもずっと経験豊富だろうからな。その過程でそういう例外も数多く見てきたのだろう。


「リョウガ~ネイラってば凄くいい子だよ。友だちになれそう」

「いや友だちというよりは手のかかる妹ってイメージなんだけど……」


 パトリエと話していたところで嬉しそうに駆け寄ってきたマリスが言った。だがネイラにとってマリスは手のかかる子ぐらいの印象なようだな。それもわかるが。


「それよりも貴方。試合では負けたけど、冒険者としては絶対に負けないから覚えておいてよね!」


 ネイラが俺を睨みながら宣戦布告な真似をしてきた。まぁ俺にとってはどうでもいいことだ。


「そういえばリョウガが戦った相手ってネイラだったんだね」


 俺の顔をジッと見ながらマリスが口にした。相手が誰かまでは知らなかったと思うがネイラ本人からも聞いたのかもな。


「あの試合はネイラにとってもいい経験になったと思う。君の強さは本物だよ」

「それはどうも」


 パトリエが俺を認めるような発言をしたから一応お礼は言っておいた。このやり取りに不満そうな顔を見せているのはネイラだった。


「お兄ちゃんがちょっと褒めたからって調子に乗らないでよね」

「別に乗ってないが、まぁ精々気をつけるよ」


 ネイラが俺に突っかかってこようとしたから適当にあしらうことにした。そんな俺の隣ではマリスが料理を食べて笑顔を見せている。だが皿に盛っていても手掴みなのはかわらないんだなこいつは。


「ちょっとマリス、ちゃんとフォークとナイフを使いなさいって」

「あ、そうだったね」

「本当にもう……」


 ネイラが呆れたように呟いた。ただ俺に対する態度と違ってマリスに対してはただ面倒見がいいって感じだな。


「全くさっきから見ていればこれだから亜人は困る」


 ふと何者かの声がレストランに響き渡る。これはマリスに向けられた物だな。振り返ると金髪で妙に鼻の尖った男がこっちに向かってきた。両隣にはいかにも腕っぷしだけで生きてきたって風貌の男が並んで歩いている。


 これはパトリエの言っていた一部の側の人間か。聞くまでもなく面倒そうな奴だとわかるな――

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