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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第161話 ある二人の動向

「兄貴も結局ここまで来るんっすね」

「仕方ねぇだろう。前に相手した面白い奴が来てるらしいんだからな」


 腹の出た肥満体の男が兄貴と呼んだ男と会話していた。太めの男は彼の弟分にあたるようだ。二人は本来今回の仕事(・・)には参加するつもりがなかったのだが、とある人物への興味からトルネイルまで赴いたわけである。


「でもどこ探していいかわからないっすよねぇ。この街広いし」

「……あぁ。そうだな」

「というか兄貴迷ってません?」

「ま、迷ってねぇよ!」

 

 弟分の指摘に兄貴分が顔を歪めて叫んだ。弟分がやれやれと言った顔を見せる。


「お、おい見ろ。良さげな店があるじゃねぇか。俺はあそこに行きたかったんだ」

「はぁ~そうっすか」


 進行方向上に見えた建物を指差し叫ぶ兄貴分。それに目を細めどこか疑ってるような返答を弟分が見せた。しかし構わず兄貴分は大股歩きで店に向かいドアを開けた。


「何か変わった店ですね兄貴」

「そうだな」


 店内を物色する二人。棚には金属で出来た腕や足が並んでいた。


「こいつは義肢か――全部魔導製のようだな」

「これに興味があったんですか兄貴?」

「そ、そうだ。こういうのを見るのも勉強になるってもんだからな」


 焦ったように弟分の疑問に答える男。だがかなり苦しい言い訳にも思える。


「なぁ頼むよ。必ず買いに来るからこれは取っておいてくれよ」

「そうは言われてもな。うちは取り置きはしてないんだよ。それにこれは人気の高いモデルだからな。悪いが無理だ」

「そこをなんとか! 今はちょっと足りないけど今回の仕事が終われば報酬が入ってくるからさ!」


 二人が陳列された義肢を眺めていると奥から会話する二人の声が聞こえてきた。内容的に店主と客のようであり店主に懇願しているのは声からして女性である。


「こいつをさ必要としてる奴がいるんだよ。だからどうしても欲しいんだ。そいつは元は冒険者だったんだけどさ。私なんかを守ろうとして片足を失っちまったんだ。だからこれで少しでも楽にしてやりたいんだよ」

「……気持ちはわからんでもないがこっちも商売だからな。金貨百枚だから残り金貨二十枚だ。足りないなら諦めな」

「くっ……」

 

 悔しそうに女が呻いた。やり取りを聞くに金貨二十枚分支払いが足りないらしい。


 すると兄貴分の男が徐ろにカウンターに近づいてき懐から革袋を取り出した。


「――親父。残りはこれで足りるか?」

「兄貴ッ!?」


 そして話を聞いていた兄貴分がカウンターに金貨をばら撒いた。「え?」と赤毛の女が振り返る。


「あんた、一体?」

「何。通りすがりのお節介焼きだ。で、どうなんだ店主」

「あ、あぁ。そうだな――こいつは……金貨十八枚だ。後二枚足りんぞ」

「へ?」


 店主のツッコミに兄貴分の男とスカーレッドは目を丸くさせた。支払いの残りの分を建て替えようとしたようだがそれでもまた足りてなかったことで兄貴分の顔が朱色に染まる。


「お、おい! お前あと金貨二枚ぐらい持ってるよな!」

「締まらないっすねぇ兄貴……」


 弟分はどこか情けないものを見るような目で見ていたが、ガサゴソと懐を弄り金貨二枚をカウンターに追加した。


「どうだこれで文句ないだろう!」

「あ、あぁ。確かに合計で金貨百枚だが本当にいいのか?」

「フッ、男に二言はないってもんよ。じゃあな」


 決まったとでもいいたげなキメ顔で兄貴分が店を出る。しかし結局足りない分は弟分に出して貰ったこともあり妙に格好がつかない。


 そんな彼の様子に弟分もやれやれといった顔ではあったが、出ていった兄貴分の後を追いかけた。


「兄貴、一体どういう風の吹き回しっすか?」

「別に。ただの気まぐれだよ」


 追いついてきた弟分の問いかけに兄貴分は顔を逸らし答えた。


「ちょっと待ってくれよ!」


 そんな二人を呼び止める声。二人が振り返ると赤毛の女が店から出てきて義足を持って追いかけてきた。


「何者かわからないけどおかげで助かったよ。ありがとう。出してもらった分はしっかり返すからさ!」

「別にいいって。あれは俺が勝手に出したもんだ」

「そうだとしてもだよ。恩を売られたままってのは性に合わないのさ」


 赤毛を揺らしながら女が笑う。兄貴分がバツが悪そうに頭をかいていた。


「ま、それならまた会うことがあったら飯でも奢ってくれや。それで十分だ」

「いや、それじゃあ割に――」

「それはあんたにとって大事なもんなんだろう?」


 女の言葉を遮るように兄貴分が声をかぶせた。え? と女が目を白黒させるが。


「――あぁ。大事な奴にどうしてもあげたいもんだったんだ」

「そうか。男か?」

「あぁ。私なんかを庇って大怪我を負った馬鹿な男さ」

「そうか。だったらそいつを贈って大事にしてやんな。さぁ行くぞウドン(・・・)

 

 そう言い残して兄貴分の男が立ち去った。その後姿に赤毛の女はありがとう、と呟く。


「兄貴、あの女、実はタイプだったんっすよね?」

「な、そんなんじゃねぇよ!」

「全く兄貴は惚れっぽいすからね」

「う、うるせぇんだよ。それより探すぞあいつを!」

 

 弟分にからかわれ兄貴分が怒鳴る。そして二人は再び街の探索を開始したのだった――

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