第158話 お風呂は男女別
ゴングに誘われ俺も大浴場に向かうことになった。すると部屋を出てすぐマリスを含めた女性陣とも合流することになった。
「リョウガたちもどこかにいくの?」
「俺たちはこれから風呂に行くんだよ」
マリスの質問に答えたのはゴングだ。それを聞いてマリスが笑顔になる。
「私たちもそうなんだ。一緒に行こうよ」
「何だお前らもか」
「何よ不満なの?」
ゴングがやれやれといった顔で答えるとパルコがジト目を向け聞いた。
「いいではありませんか。お互い仕事が一緒の仲間なのですから」
「そうそう。別に浴場まで一緒に行くってだけだしな。リョウガも問題ないんだろう?」
クルスが同調しイザベラが俺に聞いてきた。
「俺は別にどっちでも構わない」
「じゃあ決まりだね♪」
こうしてとりあえず大浴場までは女性陣と一緒に向かうことになった。
「そういえばリョウガってばコロシアムで大活躍だったんだってね」
「別に試合に出ただけだがな」
「いやいやおかげでこっちも稼げたってもんさ。ま、最初だけだけど」
イザベラが苦笑しつつ言った。おかげでマリスの情報源が誰かすぐにわかったな。
それからもコロシアムでの事を色々聞かれたが適当に返してると勝手にイザベラが話しパルコも続いていた。おかげで俺は殆ど話す必要はなかった。楽でいい。
そうこうしているうちに大浴場についたわけだが。
「ゴング凄い汗ですよ大丈夫ですか?」
「ひ、ひとっ風呂浴びるには丁度いいじゃねぇか」
クルスが心配していたがゴングは強がりを言っていた。確かに汗だくで服も湿っているな。その理由はエレベーターに乗ったからでもある。やはりあの空間には慣れないようだな。
「おお、男女で分かれてるんだな」
「流石にそれはそうだと思いますよ」
浴場への入口が男女でわかれていたことに驚くイザベラ。クルスは冷静に突っ込んでいた。流石に異世界とは言えこのあたりは俺のいた世界と変わらないようだな。
「ゴング、覗くんじゃないわよ」
「覗くか! 俺を何だと思ってんだ!」
目を細めて釘を刺すパルコに対してゴングが声を張り上げて言い返していた。
「意外とリョウガみたいなタイプが危なかったりしてな」
「りょ、リョウガはそんなことしないと思う、しないよね?」
「安心しろ。全く興味がない」
「……それはそれで女として傷つくんだけど」
俺の返答にマリスが不満げな顔で呟いた。どっちなんだお前は。
「たく、こんなことでグダグダ言ってても仕方ねぇだろう。行くぞお前ら」
言ってゴングが男湯の方に向かった。俺とクルスも後から続きマリスたちも女湯の方に入っていった。
中には脱衣所のようなものもあった。着替えを入れる箱もあり風呂で使えるタオルも準備されていた。
着ているものを脱いでいるとクルスの声が上がる。
「流石に凄い体つきですねゴング」
「おうよ!」
クルスに見られゴングが筋肉を見せつけるようなポージングを決めていた。確かにしっかり鍛え上げられた体だ。そして肉体に刻まれた古傷も多い。
「傷痕も多いですね」
「ま、戦士にとっちゃ傷は勲章のようなもんだ、が、リョウガには傷がないな」
ゴングが意外そうに言ってきた。俺の戦いぶりを見ているから不思議に思ったのかもな。俺がこれまで全く傷を負ってこなかった、わけでは当然ない。
だが俺の体は一般人からすれば特殊だ。怪我の治りが早い為、殆どの傷は時間とともに自然に回復し消えていく。
「ですが――」
クルスの視線が俺の下腹部に向けられた。そこには一点穿ったような傷痕が残っていた。殆どの傷は勝手に治るが何事にも例外というものはあるものだ。
俺の体に残されたこの傷こそがまさにそれだ。
「別に傷を見せ合うために来たわけじゃないだろう」
とは言え傷についてこれ以上触れられるのも面倒だ。だから二人に向けてそれだけいい残し俺は一足先に風呂場に向かった――




