第152話 増えた報酬
「いやはや全く面白い試合だった」
「リョウガのおかげでいつも以上に楽しい試合だった。市長もお喜びのようだしな。本当によくやってくれた」
ゴルドーとモンド、両方から褒められる事となった。俺としては大したことをしたつもりはないが、まぁ喜んでくれたならいいだろう。
「君――」
「はい。リョウガ様どうぞこちらを」
ゴルドーが近くの女に一言発すると女が袋を持って俺に渡してきた。革袋だが高級そうな革製なのはよくわかる。
「頂こう」
報酬の話は先にしていたからな。中身は予想できたが、確認すると金貨がビッシリと詰まっていた。
「これは私からだ」
そしてモンドもまた俺に似たような袋を渡してきた。
「金貨百枚ずつ入ってるようだが?」
「それは気持ちだ。それぐらいの価値はある試合だった」
「私も市長もそれぐらい君を買っているということだ」
なるほどな。しかし約束の倍とはな。気持ちと言うには随分多いが今後の事も踏まえてのことということか。
「念の為言っておくが今後試合に出るような真似はしないぞ」
「ハハッ。勿論わかっているさ。だが冒険者としてなら仕事を頼むこともあるだろう。君の腕が確かなのはわかったからな」
ゴルドーが笑いながら答えた。確かに冒険者としてなら仕事があれば受けることもあるのかもしれないが、それもギルド次第だがな。
「邪推する必要はない。お互いこれは本当にこの試合に対しての気持ちなのだから」
モンドが補足するように言ってきた。そういうことならこれ以上こちらから言うこともない。勿論言葉通り受け取るほどお人好しでもないがくれるといっている物をわざわざ突っぱねることもないだろう。
「わかったありがたく受け取っておく」
「うむ。では私は一旦ここを離れるか。モンドいいかな?」
「勿論ですよ。君たち私は市長と話があるので一旦離れる。その間エンデルの事を宜しく頼むよ」
「わかった」
「任せてください」
「妙な奴らが来たらぶった切っておいてやるよ」
「えっとお手柔らかに……」
俺とパルコが答えた後イザベラも張り切って見せたが、物騒な答えに思えたのかエンデルが苦笑いしていた。
そして二人は離れたわけだが――
「しかしリョウガすげぇな。ここにいる間でどれだけ稼いだんだよ」
イザベラが感心したように言ってきた。イザベラから頂いた分も含めればそれなりの金額にはなったな。
「イザベラだって人の事言えないじゃない。リョウガに賭けて随分と儲かったようだし」
「ヘヘッ、だったらパルコも賭けとけばよかったんだよ」
パルコが指摘すると笑顔を綻ばせながらイザベラが答えた。よっぽど儲かったようだな。
「私は賭け事とか好きじゃないのよ」
「もったいねぇなぁ。こういう時の勝馬にのれないようじゃ結果損することだってあるんだぜ? 思わぬハズレくじを引かされたりな」
「今回たまたま勝てたからそんなことが言えるのよ」
イザベラの考えにパルコは同意出来ないようだ。賭け事である以上負けて損することもあるからな。パルコの考えが一番堅実だろう。
「だったら見てなって。今日はついてるからな。この先の試合でも勝って見せる!」
そしてイザベラが張り切って次の試合に挑みだした。
「イザベラ本来の仕事忘れてないわよね?」
パルコが呆れたように呟いた。まぁ賭け事に夢中に見えるがこちらもしっかりチェックを入れてるようだからな。仕事にも意識は回してるようだ。
とは言え今のところ周囲に妙な気配はないな。どうやら宣言通りあの暗殺者も手を引いたようだな――




