第134話　駆けつけた者

「早く来てくれぇぇええ！　殺されちまう！」

　

　全く先に狙ってきたのはこいつらだろうに。見苦しく周囲に助けを求めるとはな。

「おい――」

「ヒッ！　た、たしゅけ――」

　

　俺は涙目になっている男に声を掛け顔面に拳を叩き込んだ。

「グボラァ!?」

　

　そのまま地面に叩きつけるとメキッという音とともに後頭部が半分ほど地面にめり込んだ。

「りょ、リョウガさん――」

「安心してください。言われた通り殺しはしませんよ」

　

　背後から細い声を発したエンデルに応じた後、男の襟首を掴んで持ち上げた。

「ひぃ、ひぃいい」

「意外と丈夫で良かった。それで、お前ら何が目的だ？　誰に頼まれた？」

「た、たすけ――」

「答えになってないな」

　右腕を掴んで思いっきり捻ってやった。雑巾を絞ったように腕が捻じれ男が絶叫を上げる。

「リョウガさん、それ以上やったら……」

「大丈夫だ。ギリギリのラインでやってるからな」

　男の頭がガクンと垂れ動かなくなったが息はある。腹に思いっきり膝を叩き込むとうめき声を上げながら男が倒れゴロゴロと転がった。

「気付け薬にはやはり腹に膝だな」

「ひぃ、い、いかれてやが、ゲホッゲホッ！」

　男は口から吐血しながら怯えた目で俺を見てくる。エンデルは殺すなと言っていたがそもそもで言えばその気はなかった。情報を聞き出すほうが先決だからな。

「お前、これ以上余計な事を喋っても痛い思いするだけだぞ？」

　

　男の頭を踏みつけながら脅すと男は何度も頷いた。

「それで目的は？　誰に頼まれた？」

「目的は金だ！　さっきあんたら見てて羽振りが良さそうだと思ったんだ！　その女を攫えばあの男から金をたんまり踏んだくれると思ってやった！　それだけだ！」

　……口調、顔つき、心臓の音、どれをとっても嘘を言ってるようには思えないな。てっきり誰かに頼まれたかと思えばどうやらそうではなかったらしい。

　あの男というのはモンドの事を言っているのだろう。確かに金を持ってそうな雰囲気はあるからな。

　やれやれ背後から気配も感じるしここまでか。

「悲鳴が聞こえてやってきたがこれは一体どんな状況かね？」

　そう考えていた直後に声がした。振り返ると身なりの良い男とその護衛らしき男女の姿があった。

　身なりの良い方は五十代半ばぐらいの男だ。金髪で両頬に爪痕のような傷跡がある。一緒に付いててきているのは三人。男二人に女が一人。年はそれぞれ二十代から三十代といったところだ。

　

「た、たすけて、こ、こいつらに襲われて……」

　ボロボロになった男が振り絞るように発した声で乱入者に助けを求めた。身なりの良い男はつぶさに周囲を見回した後、護衛らしき男女に指示を出した。

「この男を拘束しろ」

「ハッ！」

　命令を受けた二人が倒れた男に駆け寄り護衛たちは手際よく男を縛り上げていった。他の倒れた連中も同じように拘束され縛られた男が目を白黒させる。

「な、なんでだ、どうして俺たちを！」

「倒れてる連中の数を見ればどっちが先に襲い掛かったか明白だ。それにそこにいる少女のことは私もよく知っている」

「え？」

　身なりの良い男がはっきりと答えた。エンデルは戸惑ってるようだがこっちは彼女と面識があるようだな――