第130話　助けと再会

　ゴングは焦っていた。ゴロツキどもの言うようにスキルの効果は既に消えている。

　ゴングのスキル【三分間の闘争心】は文字通り三分間だけ身体能力を大きく向上させる。しかし三分過ぎてしまうと連続使用は出来ない。一分間のインターバルが必要なのである。

（大丈夫だ。あと三十秒あればつかえる――）

　頭の中で必死に残り時間を数えていた。ただしゴングのスキルは一日三回が限度である。だからこそ三分間だけで決着をつけたかったが既にそんな余裕はない。

　

「こいつの心音がおちついてやがる。まだ何か策を残してるぜ」

　だがゴロツキの一人がそんなことを言い出しゴングの焦りが加速した。

「はは、焦ってるな。俺はスキルで聴覚が強化されてるんだよ残念だったな」

「あらら、残念だったわね」

「どうやらさっさと片付けちまった方が良さそうだな」

　そしてゴロツキたちがゴング目掛けて飛びかかってこようとしたその時、ゴングの足元に球体が転がってきて弾けモクモクと煙が立ち込める。

　

　これによってゴングたちが煙に巻かれてしまった。

「な、なんだこれ煙幕か！」

「チッ、小賢しい真似を！」

　ゴロツキどもが焦りだすが、煙幕は程なくして消えた。そこにはゴングの他に赤毛の女の姿があった。

「仲間がいやがったのか！」

「ま、私が知ってるのは一人だけだしたまたま見かけただけだったんだけどねぇ」

　女が答えた。一方でゴングは難しい顔で押し黙っていた。

「慌てるんじゃないよ。一人増えたからなんだってんだい。さっさと片付けるよ」

　加勢した女がいようとお構いなくゴロツキどもは近づいてくる。だがその時、仲間の一人が叫んだ。

「違う！　倒れてる奴らもう動けるぞ！」

「ちょっと遅かったわね！」

「誰だか知らねぇが感謝するぜ！」

　マリスがガバっと起き上がり地面を蹴った。同時にゴングも飛び出す瞬時に距離を詰め残りのゴロツキどもを倒していった。

「く、くそ！　スキル」

「おっとさせないよ！」

　赤毛の女が鞭を振ると燃焼し見事にリンプに命中した。炎が燃え移りリンプが悲鳴を上げて地面を転げまわる。

「消すの手伝ってあげるわよ！」

　

　そしてマリスが近づき思いっきり蹴るとリンプが吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。その衝撃で炎も消えたがリンプも意識を失っていた。

「ふぅ。助かったありがとうスカーレッド！」

　そしてマリスが笑顔で赤毛の女、スカーレッドに駆け寄った。

「無事でよかったよ」

「本当助かりました。あの煙のおかげですね」　

　

　クルスが安堵の表情を浮かべた。突然発生した煙幕、それはただの目眩ましではなく三人の痺れを治す効果もあった。

「たまたまスキルの効果を打ち消す道具を持ってたからね。万能じゃないけど今回は効いてよかったよ」

　スカーレッドが笑顔で答えた。そんなスカーレッドを見ながらゴングが口を開く。

「マリスの知り合いだったのか。しかしこんな場所に居合わせるなんてな」

「ま、街なかでマリスを見かけてね。妙な方に行くなと思って気になって探してたのさ」

　どうやらスカーレッドはマリスが心配になって来てくれたようだった。

「でもスカーレッドがどうしてこの街に？」

「そうだね。とりあえずこっから離れようか。スラムなんか長居してもいいことないからねぇ」

　スカーレッドの提案にマリスたちも同意し一旦その場を離れることとなった――