第128話 別行動
「マリス大丈夫ですか?」
ホテルでクジ引きしチーム分けが決まった。その結果冒険者ギルドに向かうのはゴング、マリス、クルスとなり護衛を続けるのがリョウガ、イザベラ、パルコとなったのである。
クルスが気にしているのはいつも一緒(と思われている)リョウガと別行動になったからだろう。
「だ、大丈夫よ。別に常に一緒じゃないといけないってわけじゃないし」
両手を振ってクルスに答えるマリス。それをゴングが横目で見ていた。
「ま、幾らパーティーといってもたまには別で行動してみるのも手だろう。いつもと違うメンツで行動することで気がつくこともあるだろうからな」
ゴングが語って見せる。それに耳を傾けるマリスであり。
「そうだよね。でもゴングは大丈夫なの?」
「大丈夫? 何がだ?」
マリスの問いかけにゴングが疑問顔を見せた。
「パルコと仲良さそうだから淋しくないのかなって」
「ば、バッキャロー! 何を妙な勘ぐりしてやがる! あいつとはただの腐れ縁ってだけだ!」
ゴングが拳を振り上げて文句を言った。マリスは苦笑しつつゴングを宥めていた。
「たく。とにかくギルドに急ぐぞ。耳はあるんだろう?」
「うん。リョウガから預かったこの袋に入ってるよ」
パルコが魔法の袋を見せて答えた。ギルドには盗賊の件も報告に行く。その為に証明となる物が必要だ。
「なら問題ないな。さっさと行くか……で、ギルドはどこだ?」
いざギルドへといったところでゴングが頭を悩ませた。商業都市と呼ばれるだけあってトルネイルは広い。冒険者ギルドの場所を探すのも一苦労なのだろう。
「弱りましたね。私もここは初めてですから」
「う~んこっちぽくない?」
クルスも詳しくないようで弱り顔だったがマリスが指をさして動き出した。
「何だお前。場所知ってたのか」
「良かったですね」
前を歩き出すゴングとクルスもマリスについていく。マリスがあまりに堂々としているので何の疑いもなかったようだが暫くして二人の表情も曇ってきた。
「おいおい、何か怪しいところに来たが本当にこっちであってるのか?」
ゴングが訝しげに問いかけた。三人は歩いている内に随分と人気の無い場所にやってきた。どことなく薄汚れた雰囲気があり空気も淀んでいる。とても冒険者ギルドがあるとは思えないのである。
「おかしいなぁ。なんとなくこっちな気がしたんだけど」
キョロキョロとあたりを見回しながらマリスが首を傾げた。その言葉にクルスが目をパチクリさせる。
「なんとなくってまさか本当に勘で動いていたのですか?」
クルスが呆れるように言った。ゴングは勘弁してくれとでも言いたげに頭を振った。
「ま、まぁ進んでいればなんとかなるよきっと」
マリスがそう口にして先に進もうとするも、その時周囲から次々と何者かが姿を見せた。
「見ろよこいつら。ここらじゃ見ない顔だぜ?」
「こんなところまでノコノコやってくるなんて馬鹿な奴らだよ」
現れたのは年も背格好もバラバラな男女。だがその瞳だけは共通してギラついていた。そんな連中の言動にゴングが眉を顰めクルスの顔が強張った。
「あ、ちょうど良かった。実は冒険者ギルドを探しているんだよね。どこか教えてもらってもいいかな?」
しかしそんな二人とは対象的にマリスが呑気に語りかけた。ゴングとクルスがおいおいと言った顔を見せる。
「冒険者ギルドだぁ? ははは。馬鹿かテメェ?」
「教えて欲しいならそれなりの態度を見せてもらわねぇとねぇ」
現れた男女は下卑た笑いを見せながら取り囲むようにマリスたちに近付いて来る。
「えっと、何か気を悪くさせること言ったかな?」
「阿呆か! どうみても俺らを狙ってきてるとしか思えないだろう!」
「とても友好的とはいえないですよね……」
そんなことを話していると囲んできた奴らが三人めがけて一斉に襲いかかってきた――




